【WEB版】最低辺配信探索者は今日も努力を続けていると、手を差し伸べてくれた美女剣神によって覚醒する~三年間もスライムを倒し続けた最弱男が最強になって世界的にバズる~
御峰。
第1話 最低辺配信探索者の現状
青くてまん丸の水玉がぼよ~んと音を立てて、俺にぶつかってくる。
叩き付けられ後ろに飛ばされて尻もちをつくと、俺の前を白い文字が横切っていく。
『雑魚雑魚wwスライムごときに吹き飛ばされて草ww』
俺の配信を見ていたリスナーからのコメント。数日ぶりにやっときたコメントがこれだ。
すぐに立ち上がり、手に持っている四十センチの短刀でスライムを斬りつけて、また吹き飛ばされてを繰り返して、やっと一匹を倒した。
日本にダンジョンが現れたのは十年前、俺が八歳の頃だ。中から魔物というものが現れて、倒すことで『魔石』をドロップし、それが新しいエネルギー源となり世界のエネルギー問題は解決した。
それから十八歳を迎えた人には『スキル』というものが与えられ、信じられない身体能力を持ったり、魔法を使えるようになったりと、ファンタジーな世界になった。
十八歳。高校を卒業して成人した俺は今日もダンジョンで
ダンジョンに入るのは十八歳からしか入れないので、やっとスタート地点に立ったばかりという感じだ。
タンジョンで狩りをする者を総じて『探索者』と呼んでいる。
俺は――――最低辺探索者というやつだ。
十八歳の時に、誰しもが一つは開花するスキルで、大外れスキル『追加固定ダメージ1』を獲得したが、これは与えたダメージに強制的に+1するだけ。それだけ。
スライムを倒すのに、二十回は短刀で斬りつけないと倒せない。
誰も俺とはパーティーを組んでくれず、今日も一人、一番簡単なEランクダンジョンの一層で最弱魔物スライムを倒し続ける。
十匹目のスライムを倒した。
「はあはあ…………」
チラッと見た配信用カメラには《視聴者数:3人》と書かれている。これは配信探索者用のカメラで、こうして配信をすることで遠くから見てくれるものだ。
『スライム十匹で限界とかww弱すぎて面白すぎるでしょうww』
『よくその弱さで配信ができるなwwww』
コメントでも言われている通り、俺みたいな弱い奴が配信をすることは珍しい。だが、それにも理由がある。ただ、話すことはできないが。
「きょ、今日の配信を見ていただき、ありがとうございました……」
カメラに向かって挨拶をすると、三時間に及ぶダンジョン配信が終了した。
「はあ…………」
思わずため息が出る。
今日も全然いいとこ見せられなかったな……。
地面に座り、スマホを覗くと《新人配信探索者レナ。Cランクダンジョン十層突破》と記事があがっていた。
…………レナさん。もうCランクダンジョンでの十層も突破してるんだ……本当にすごいな。
彼女は高校時代に同じクラスだった女性で、みんなの憧れの女性だった。もちろん俺もだが、あくまで憧れなだけで、仲良しとかではなかった。
《比類なき才能『剣神』を持つレナ。この先も輝かしい未来が待っているでしょう。》
記事に書かれている通り、彼女は同世代では
「はぁ…………」
あっ……またため息がでてしまった……。
重い腰を上げてEランクダンジョンを後にした。
◆
ダンジョンから徒歩で一時間ほど離れている大きな建物に入っていく。
慣れた道を歩き進み、六階の『617号』と書かれた部屋に入る。
「リサ。ただいま~」
「お兄ちゃん! おかえりなさい!」
満面の笑みで迎えてくれるのは、俺の実の妹の
十年前、ダンジョン出現と共に衰弱する病気を患った妹は、今でも病院のベッドの上で生活を送っている。
「お兄ちゃん。ケガはない? 今日もたくさん転んでたけど……」
「あはは……かっこいいところを見せられなくてごめんな? でも大丈夫だよ。段々慣れてきたし、少しずつ戦うのも上手くなってる気がするから」
「うん…………無理は……しないでね?」
困ったように笑みを浮かべる。
俺が配信をおこなう理由。それはたった一つで、妹に配信を届けるためだ。
ダンジョンで強くなるのが目的だが、妹は唯一の肉親である俺がダンジョンに入るのに反対していて、配信中だけなら見守ることで何とか我慢できるという。
「もちろんだ。無理しないように、しっかりレベルを上げながら装備を整えて頑張るよ」
「うん……!」
妹と談笑して俺は病院から出て家に帰った。
病院の近くで一番家賃が安いアパートの一室。今までなら援助で何とかなったけど、成人したため、家賃を支払わないといけない。
今日のスライム十匹を倒して手に入れた魔石は小魔石十個。一個百円だから千円か……。
…………今日もモヤシだな。
冷蔵庫に買い置きしておいたもやしを取り出して醬油で炒める。
今日ももやし炒めで腹を満たした。
◆
翌日。
今日も朝からダンジョンにやってきて、こっそり狩りを開始する。
配信は毎日定期配信をしていて、午前十時から午後一時までおこなっている。終わったら病院に行くので、時間が割けるのは午前中のみだ。
二時間程スライムを十匹倒して、休憩をしてから配信が始まった。
《視聴者数:2人》
誰よりも速く見にくるのは、妹だ。それにしても、最近になってもう一人増えたけど、コメントとかは全然くれない。
「どうも。今日もダンジョン配信します。よろしくお願いします」
カメラに向かって挨拶をして、三時間ぶっ通しでスライムを倒し続けた。
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