第10話 布団でゴロゴロ

「一緒に入っていい」

 って、もうはいってるじゃない。

「だめだよせまいから」

「いいでしょ、くっつけばいいんだから」

 と言っても、団地の浴槽に二人はやっぱり無理だった。


「洗ってあげる」

「くすぐったい」

 結局洗ったんだかどうだかわからないくらい、で亮は風呂場から出た。

「待っててね、奇麗にしてすぐ行くから」

「どこを」

「すけべ」


 恵美とこのまましてもいいのか、亮は少々悩んでいる。

 彼女が何を求めているのかがわからない。

 ただやりたい、そんなわけでもなさそうだし。どちらかといえば伊都美のように亮を本気で好きなのかもしれない。ならなおさら今は、やらない方がいいかもしれなかった。


「恵美、ほんとに俺としたいか?」

 タオルを巻いた恵美が風呂から出てくるのを待って亮は尋ねた。

「なんでそんなこと聞くの、私としたくないの。私のこと嫌い」

「違う」

「じゃなんで、やったからって重荷になんかならないよ」


「違う」

「なら、ちゃんと話して」

「やるだけになるよ」

「いいもん、やりまくって」

「飽きたらポイだよ」

「そんなことしないでしょ、亮は」

「しない、とは言い切れない。それに恵美が俺に飽きるってこともある」

「ないよ、絶対」


「だから、やらずに普通にずっと付き合いたい」

「わかった、でも、一回だけして。亮のものにならないと、不安なの」

「何がそんなに」

「佐紀ちゃん、すごく元気な人だったんだよ。それが」

 恵美は泣き顔になった。

「だから、とにかく一回、亮に抱かれたいの」


 亮は恵美を抱きしめるとキスをした。そこまで想われているならもう何も言うことはなかった。


「ほんとにまだないの?」

「うん、去年二回ぐらいあったんだけど」

 恵美は今は生理がないらしい。

「病院は行ったんだけど、別に異常はないみたい、そのうちちゃんと来るって」

「ふうん、来るまでいっぱい生でできるね」


「え、一回だけじゃなかったの?」

「カッコつけるのやめた、恵美の身体なんか好きだ」

「やっぱり身体だけなんだ」

「うーん」

「そこは否定して」

 右手を振り上げた恵美を亮はぎゅっと抱きしめた。

「恵美、大好きだよ」

 恵美が急に泣き出した。

「私も、住谷君が大好き」


 布団の中に二人は裸で寝ている。恵美の両親は、予定が変わり明後日まで帰ってこなくなった。

「一人じゃ怖いから泊ってね」

「朝までごろごろもいいね」

 亮は、恵美のあちこちを指で弄んでいる。くすぐったがるのが面白いのだ。


「高校やっぱり、母さんのとこ行くの?」

「うん、佐紀姉さんの母校なの、だから」

「そうなんだ、難しいんだよね」

「うん、でも頑張るから、住谷君は」

「H園かなあ、今の成績なら余裕で受かるから」


 亮の校区の公立高校はK津、Y尾、S水谷、Y陽丘、F施、Y本、H園、T津、I島、Y尾東いろいろあるけれど、どこでもよかった。H園なら通うのが近かった。

 普通の進学校、できのいい大学は沙織に任して、亮は考えていることがあった。

「考えてることってなあに」

「んー、そのうちに話す、って恵美はずっとついてくるんでしょ、俺が何しても」

「うん、そのつもり」

「そのうちちゃんと話す」


 亮は、早い目に家を出るつもりでいた、なるべく母親に負担にならないように、大学は学費のいらない道を選ぶつもりだった。H園でもその道はかなえられるようだった、なら家に近い方が交通費も何も安くつく。そんなことを亮は考えていた。


「浮気しないでね」

「恵美こそ」

「うち女子高だから」

「狙ってる男子校多いらしいよ」

「大丈夫、私は亮しか見ないから」

 

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