第4話 恵美の告白

「住谷君の部屋が見たい」

「いいけど何もないよ」

 亮は、部屋だけはいつ誰に来られても問題がないように片づけてある。間違えてもエロ本が転がっているなんてことはない。


「うちと造り一緒だ、でも左右が違う」

「うん、向かい合わせだもの、だから加藤の着替え見れたんだけど」

「いつから、いつから覗いてるの」

「一週間くらいかな、って覗いてないし、加藤が見せつけてんだろ」


 恵美の顔がゆがんだ、え、泣く、なんで。

「見せつけてなんかないもん、となりなのに、住谷君がちっとも気が付いてくれなかったから」

「なに、俺に気づかせるためにだったの。そんなの声かけてくれれば」

「言った、でも反応なかった」


「え、いつ」

「先生が、お母さんの話した日、みんなで話しに行ったとき」

「あの時、無理だよ、急にみんな来るんだもの」

「だよね、私なんて可愛くもないから、ごめんやっぱり帰る」



 恵美は踵を返し部屋から出ようとした。

「待って、まってって」

 亮は恵美の手をつかんだ。なにかここで帰らせたら、後悔するような気がした。

「加藤のこととなりの子だって判ったよ、でもそれっきりだったから」


「だって、住谷君って女の子に興味なさそうだったから」

「転校そうそう女、女って、そんなの変でしょ」

「彼女いるよね」


 亮は答えに詰まった、史乃先輩はどうなるんだろう。

「私だめ?」

「だめだよね、彼女いるんじゃ」

 どうしてみんな自分はだめだと思うんだろう。


「だめなんて、俺が言えることじゃない、それより俺のどこがいいの」

「どこって、うーん。わかんない」

「それって、変じゃない」

「変じゃないもん、とにかくこの人って思った」


「ありがと、でもさ、まだ、俺のことわからないでしょ。すっごい危ない奴かもしれないし」

「大丈夫だと思う、それだったらきっと私もう襲われてる」

「なんで、あんな姿見せたから」


「うん」

 恵美は真っ赤になった。

「でもさ、あんなの見せて俺が写真でも撮ってたらどうするの」

「ブラとパンツぐらいなら水着だって言い張るから」

それは無理だと思うぞ。


「え、違うよ、お風呂上がりの」

「何それ」

「何って、加藤姉妹でもいる?」

「いないよ」


「じゃあ、風呂あがって髪がしがし拭く?」

「うん」

「あそこタオルでごしごし拭く?」

「うん」


 恵美の声がだんだん小さくなる。

「そのあと、鉛筆使ってその」

「私そこまで見せた」

「うん」


「死にたい、恥ずかしい」

 恵美は畳の上にペタンと座り込んだ。

「私、おかしいの」


 どういうこと、あれは見せつけたわけじゃないのか、航が混乱している。

「誰かに見せたくなるの。最初はお風呂上りだけだってんだけど、誰かが見てくれないかなって、そう思うとぞくぞくするの。でも実際にやってるとか思わなかった」

「外とかで?」


「それはないけど、まだ」

「わかった、これから言って。俺が見てやる。だけど俺以外には見せちゃだめ、我慢できる?」

「うん、ね、私のこと嫌いになった? はしたない奴だって」


「大丈夫、そんなことないから」

「住谷君、SEXしたことある? 答えなくていい、どんな気持ちかなって。あ、でもきょうはまだ。心の準備が」


「今日じゃないのかぁ。今の話で、俺もう」

「そうなの、それってどんな風になるの、見たい。私の見たんだからおあいこだよね」


「加藤も見せてくれるんならいいよ」

 多分この子とは離れなくなりそう、そんな気がした。


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