VRロボットゲーム ギアーズ・コンクエスト -レアアイテムを手に入れたので特化します-

臼井禿輝

アバンタイトル

 巨大な倉庫の一角に置かれたソファーに一人の男が座り携帯端末で会話をしていた。


「──ああ、マジか。分かったありがとう」


 男はそういい電話を切り、おもむろに声を上げた。


「ギル、話は聞いていたな? ダント森林のインスタンスにエントリーだ」


 男の声に、落ち着いた男性の声が質問を返す。


「先程ソルダ様が仰っていたエリアでよろしいですね?」

「おう」

「了解しましたバードン。──エントリー完了。画面に出します」


 ギルがバードンの指示に従い行動を起こすと、壁に貼り付けられた大きな画面に文字が映し出された。


「あ~混んでんな、入れるか?」


 映し出された画面にはエントリーした地名や簡易地図等が載せられているが、バードンが注目したのは凄い勢いでカウントを回し、今や数千に届こうかとしている数字と、その下に大きく表示された「1/6」の文字だった。やがてその数字が「2/6」に変わり、「3/6、4/6」と上がっていく。


「うっし! 始まった」

「急いでください」


 バードンは立ち上がると、腰に巻かれていたツナギをほどき、いそいそと着込みながら、移動を始めた。

 背後で「ピッピー」と電子音が鳴る。バードンが振り返ると、先程の画面に映っていた数字は無く、代わりに5分のカウントダウンが始まっていた。


「揃ったようです、急いでください」

「急いでるだろ」


 急かされたバードンは袖を通すと、壁に引っかけられていたグローブを取り、ツナギとグローブの袖口の金具を合わせロックする。そして、前面のファスナーを首元まで上げ、グローブの隣に吊るされていたヘルメット取り被る。これもツナギの首元の金具と合わせてロックをかけると歩みを進める。

 進んだ先ににはハンガーがあり、15mを越える鋼鉄の巨人が鎮座していた。バードンの愛機、機体名「コットス」だ。

 全体的に直線で構成されていて、人であれば頭があるところには迎撃用の機関銃が設置されている。そしてカメラやセンサーをまとめた円柱状のパーツはボディの前面上部に付けられていた。そして右腕は肘から先がライフルに、左手は手首から先が無く丸く窪んでいた。

 巨人の前に置かれた階段を上がると、巨人の胸元の少し下あたりにたどり着く。そこの奥には装甲が開かれたコックピットがあった。バードンは慣れた手つきで座り込むと、腰に吊るされていた350ml缶サイズの円柱を取り外し、コックピット脇のスロットに差し込んだ。


「DFシステム、機体名コットスと接続、──正常に接続を完了しました」


 バードンは、コックピット内のスピーカーから流れるギルの音声を聞きつつ、シートベルトを締め前面ハッチを閉じると、機内灯とディスプレイの光で薄暗く照らされたコックピット内で、慣れた手つきで次々とスイッチを入れていく。

 そして最後に最後にヘルメットのフェイスガードを下ろす。


「ギル始めてくれ」

「了解バードン。インスタンスエリア戦、開始します」


 ギルがバードンにそう答えるとバードンの視界はブラックアウトした。

 そして再び視界がはっきりしてくると、機体は低いエンジン音と軽い振動に包まれていた。


「よろ~」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「よろしく」

「よろしくお願いします」


 堰を切ったように4人からの挨拶にバードンも返す。そして疑問に思っい聞いた。


「5人?」

「私が2枠使ってます。大型荷電粒子砲積んでるんで期待しておいてください」

「このタイミングで大型特機か、これは楽に──」


 バードンの問いに男の声が答えるとそのまま作戦会議が始まった。 

 バードンはメインディスプレイの横に付けた縦長のサブディスプレイに目をやると、先程から続く会話がチャット形式で文字に起こされて表示されていく。それぞれの発言の前にエンブレムとパイロット名が表示されている。これは騒音や会話できる状況じゃなかったりと聞き逃した時の為にバードンが設置したものだった。


「──、ノイズがきつくなってきましたね、じゃ15分後にさっき決めたE-6-2ってことで」

「了解~」

「わかりました」

「はーい」

「了解」


 通信にノイズが増え始めた所で会議はお開きとなった。そしてサブディスプレイの画面下には、「敵勢力下につき現在長距離通信は行えません。短距離、もしくはレーザー通信をご使用ください」の文字が回っていた。

 ゴウンゴウンと音を立て、メインディスプレイに映る外の景色が変わり始める。足元から明るくなる。頭部を動かし下を見ると眼下には森の木々と金属の人工物が半々で広がっていた。

 

『輸送機機長だ、所定の位置に到着した。これより切り離すが準備はいいか?』 


 バードンを運んでいた輸送機の機長から連絡が入りそれに答える。


『準備オッケーだ。やってくれ』

『了解。グッドラック』


 バードンが答えるや否や、機体を固定していたロックが外され、投下された。

 パラシュートを開き速度を落とすと、最後はスラスターをふかし着地した。バードンが透明な保護シールドに守られた赤いボタンを押すと、連続した破裂音と共に重いものが落ちる音が響く。


「降下用装備のパージを確認。周囲に敵影なし、作戦行動を開始してください」


 バードンはマップが表示されているサブディスプレイを操作し縮尺率を上げると、E-6-2にマーカーを置き縮尺率を戻した。するとマップの端に三角形の矢印が現れマーカーの置かれた方角を指す。

 その方角を目指しバードンは進み始めた。


 移動をしてしばらくすると、レーダーに反応があった。バードンは向きを変え射程内に捉えると牽制射撃を行いつつ動きやすい場所へ移動する。大抵の敵はプレイヤーを認識すれば寄ってくる。食いついたようだ。


「MB、映像を確認。照合中……。カマキリとサソリと思われます」

「RWSの操作を任せる」

「了解しました」


 頭上の機関砲がウィンウィン音を立て、起動する。

 足に装備しているキャタピラを駆使して左右に回避を混ぜながら下がりつつ射撃を続けると、木々をなぎ倒し、土煙を上げながら機体の半分ほどの大きさの塊が姿を現した。

 鈍い銀色にダンゴムシのようなボディ。そこから上半身とも言えないパーツが生え、更に鎌の形をした2本の腕が生えている。カマキリの様な腕を持っているから「通称:カマキリ」。MBには覚えにくい正式名称もあるが、こっちで呼ばれることが多い。


「カマキリだけか?! サソリを引っ張「サソリ停止中。射撃体勢に入ったと予想します」」


 バードンに被せる様にギルの警告を受け、カマキリが間に入る様に位置を取り続ける。バードンの迎撃を受け続けたカマキリもここまで来るとボロボロで、暫くすると鎌を振るう事無く倒れた。

 すかさずビームが飛んでくるが左右のジグザグ移動で躱す。照射時間の長いビームは、威力も高いがクールタイムも長い。撃ち終わった所で一気に近づくと、その姿を捉えた。サソリと同じくダンゴムシの様なボディにサソリの様な尻尾、その先端に長距離兵器を積んでいる。ちなみにハサミは無い。

 バードンが左腕武器を起動させると、手首にある円状の窪みに光が現れる。さらに左操縦桿のトリガーを引くと左手首に紫色の光が灯り、最高速に達すると同時にトリガー横のダイヤルを一気に回す。紫色の光は勢いよく円錐状に伸びた。近接攻撃の射程に内になった所で、攻撃。標的に対してあらかじめ設定したモーションが再生される。サソリの頭部に向かって左手を勢いよく突き出すとバチバチと大きな音を立てサソリの頭部が溶け出し、サソリは機能停止する。ものの数秒で光は消え左腕の装甲が開き蒸気が噴き出すと冷却モードに入った。


「左腕溶断トーチ、左肩補助ジェネレーター冷却に入ります。再使用まで30秒」


 バードンは、2機のMBを倒し終えると再びレーダーを注視しつつ集合地点に向かい始めた。

 そして後集合地点まで10体近く倒すのだった。



 集合場所には既に二つの人影があった。一体はメタリックシルバーに赤と青の指し色、目元をバイザーで隠した18mはあろうかという巨人がバイクの横に立っていた。いわゆる特撮のメタルなヒーローないで立ちだ。

 もう一体はトリコロールカラーで、背中に天使の羽の様な形状のスラスターをつけ、大口径のバスターライフルを両手に一丁づつ装備してていた。いわゆる「見立て機」で有名なロボットアニメの主人公機に似せた姿をしていた。


「速いね、まだ5分以上あるし一番乗りだと思ってたんだが」

「まぁな、ワールドマップの方で巣落としを始めてっから、こっちも巣落としが可能になっただろ? んで今回はそれを見越した装備だから無駄玉は減らしたい。メインはこれからだしな、道中はこいつで突っ走ってきたわ」


 メタルヒーローがバイクをポンポン叩きバードンの問いに答えた。それに見立て機も続く。


「僕も同じですね、森を一気に突っ切って、追ってきたのだけ倒してって感じです」

「しかも今回は運がいい。荷電粒子砲持ちの特機がいる。って事たぁ、デカイの入ったらほぼクリアだ」

「そんな事言ってると失敗するわよ、前にチャージ中の特機が落とされた事があったわ」


 バードンン達の会話に第4の声が参加する。

 森の中から飛び出してきたのは、女性的なフォルムをした巨人だった。黄色に黒のラインの入った蜂ような意匠の機体で、腰から伸びたスラスターを左手に握ったコントローラーで器用に操り進んできたようだ。


「それクリアできたんですか?」

「棄権よ、即棄権。身内PTだったから、戻て直ぐに再チャレンジしようとしたのだけど間に合わなかったわ」

「巣落とし始まったら、あっという間だですもんね。せっかくのボーナスタイムに入れたんですから陽動がんばりましょう」

「そこまで言われたら、テコ入れしないとな」


 バードンはコックピットのメインディスプレイ下にあるレバーを握りロックを外すと90度回し引っ張り出す。引っ張り出されたパーツの上にはテンキーと小さな液晶画面が2つあった。そこにそれぞれ032と打ち込みエンターキーを押すと、再び押し込んで元の位置に戻した。

 バードンの機体が両腕を上げバンザイのポーズをとると、胴体左右側面にある円柱状のパーツがカシャカシャ音を立て、それぞれ左右に胴体1つ分ほど伸びる。上面には装甲は無く、黒い闇が広がっていた。そこから虫の足の様な細い作業用アームが何本も伸びて左右の腕を掴むと、胴体と腕の連結部分が外れた。左右それぞれの腕は作業用アームに支えられながら闇の中に沈むと、さっきとは別の壁の様な盾と一体化した腕を掴んだ作業用アームが伸びてきた。それは明らかに横に延びた円柱状のパーツより大きく、黒い闇から飛び出した先からスケールがかかったかの様に大きくなっていった。

 そしてその腕を、元の腕と同じ様なポーズで胴体に接続する。ガチンと重い音を立てて、胴体と接続されると作業用アームは離れた。その瞬間ミシっとバードンの機体が軋むが、そのまま作業用アームは黒い闇の中に戻り左右に延びた円柱状パーツは胴体の中に納まっていった。

 円柱状のパーツが収まると、バードンは両腕を前に倒した。巨大な壁が張り付いたような腕は、前ならえのポーズで地面とぶつかる。地面と接する面にはキャタピラがついており、それを動かし両手を前で組むと、左右の壁が一体化し、堅牢な防壁が現れた。


「初めてナマで動いてるのみたけど意外と時間かかるのね」

「僕もです。1分位は掛かってました」

「こいつは戦闘中につかえるのか?」


 3人の感想にバードンが答える。


「出し入れで約1分。しかもその間動けなくなるおまけ付き。戦闘中は守ってもらえれば使えるが、大体少し下がってだな。今みたいな状況なら問題は無い。ちなみに今出したのは見ての通り硬い。そして壁の内側に武器積んでるから火力もそこそこある。動く防壁として使ってくれてかまわない。ただし見た目通り足は遅い」

「じゃぁ僕が──」


 4人で陽動と突撃の作戦会議をしていると、大型特機がやってきた、戦車のキャタピラの部分に四本の脚が生えた赤一色のデザインで、ギアフレームやタイタンフレームを一般成人男性サイズとすると、人と軽トラック位のサイズ差がある。更に機体後部に、本体と同じくらいの大きさの長距離移動用のホバーユニットを付けており、さらに機体からホバーユニットにまたがるサイズの荷電粒子砲を載せ、異様な大きさになっていた。


「やーおまたせ、その様子だとそっちの準備は終わった感じ?」

「いや、集合時間丁度だし問題ないぜ。会議つっても、お前さんがいるからやることは決まってる様なもんだしな、想定外は思ったよりゴツイの背負ってるってトコ位だ」

「あはは、これは結構いじってるかね、火力は期待してもらって構わないよ。最後に来た私が言うのもなんだけど、話が付いてるなら始めようか? 一応ここが巣の入口の正面だし私はここで準備をさせてもらうよ。陽動開始と同時にチャージを始めるから2分位かな、ある程度は隠蔽出来るけど、半分超えたあたりで流石に気づかれると思うからそこはヨロシク。っとそうだったコレを渡しておかないとね」


 そう言うと、特機から各機へマップデータが送られてきた。そこには現在地からMB拠点までを、太い赤い直線が引かれていた。


「これは?」

「荷電粒子砲の射線範囲、余波もあるから赤線のすぐ近くに退避というのはあまりお勧めできないね」

「分かった。準備完了したら信号弾上げてくれ」

「はいよー」

「了解」

「わかりました」

「それじゃ始めよう!」


 足の遅いバードンはメタルヒーローと蜂女と一緒に集合地点からすこし斜めに進み、MBの拠点のあるエリアに向かった。そして足の速い見立て機は回り込んで横から突入となった。

 岩や木、MBの作り出した金属のオブジェクトを縫うように進むと開けた荒野に出た。その先には、ホワイトメタリックで中心に背の高い柱をもつ平たい建造物があった。プレイヤーには「巣」「工場」「棒」等、様々な呼ばれ方をしているが、これがMBの拠点であり、生産工場であり、このエリアをMB支配地域と決定づける物であった。

 周囲には複数のMBが配置され警戒しており、中でも正面ゲートの門の前には普通のMBより大きく重武装の個体が4機配備されていた。


「あれ、そうじゃないか?」


 メタルヒーローが指さす先に、上空を突き進む見立て機がいた。

 見立て機は、バースターライフルの射程圏内に入ると、2丁の銃を横に並べ合体接続させ銃口を巣に向ける。巣に向かって踏ん張るかのように両足を向けるとスラスターを使いその場で滞空する。合体したバースターライフルがエネルギーカートリッジからチャージを始める頃にはMBも気づき始め、飛行型が離陸し始め、対空砲火が始まった。直撃は早々無いものの、至近弾やかすり弾は少なくない。飛行型が完全に認識し始め向かって来始めた頃にバスターライフルのフルチャージが完了した。

 その武器の見た目から想像するよりはるかに太くて大きな光の柱が飛び出すと、MBの拠点に突き刺さった。光の柱に飲み込まれた飛行型MBはもちろん周囲に居て直撃していないMBすらも余波で爆散した。数秒間出続けた光の柱が消えると、直撃したエリアは吹き飛び周辺の迎撃兵器も吹き飛ばしていた。

 見立て機は、バスターライフルを操作し、空になったエネルギーカートリッジを取り外すと腰のサイドアーマーに装備していた替えのカートリッジを付けなおした。そして再びバスターライフルのチャージを始めるのだった。


「劇場版の再現じゃん! やるな! って陽動の目が向こうに行きすぎだ、こっちも始めるぜ!」


 バードンの機体の盾の陰に隠れ一緒に進んでいたメタルヒーローは、バイクに跨ると飛び出し拠点周囲のMBに襲い掛かかるのだった。一方、蜂女の方は肩に掛けていたスナイパーライフルを構えバードンの盾の陰から狙撃を始めた。

 そしてバードンも盾の内側にあるウエポンベイからミサイルを発射した。盾の内側から垂直に飛び出したミサイルは一定距離まで上昇すると、あらかじめロックオンされていた目標に向かって一気に降り注いだ。

 何体かのMBが特機の方へ進むも、蜂女の狙撃やバードンのミサイルで撃ち落とされていった。


 そんな事を繰り返しているとパンパンパンと乾いた音が響き渡った。集合地点の方から信号弾が放たれたのだ。

 4機は、あらかじめ渡された射線範囲から離れ位置を取る。

 そこに特機から通信が入った。


「待たせた。準備完了、赤いライン及びその周辺からは離れているね? 照射時間は10秒を予定している」

「待ってました!」

「穴あきチーズになっちまうトコだったぜ!」

「早くしてちょうだい!」

「指定範囲には誰もいない、やってくれ!」


 その声に応える返事は凄まじい光だった。

 見立て機のバスターライフルよりも強い光量のプラズマの奔流が、MBの拠点入口に流れ込む。射線内はもちろん周囲のMB、そして入口を守っていた4機のMBを一瞬で飲み込むと消し去り、勢いそがれぬまま内部へなだれ込んだ。内部も破壊され火災が起こったのが至る所で内側から爆発したり火の手が上がっていた。そして光の柱は次第に細くなり撃ち終わるのだった。


「こじ開けた。あとはヨロシク頼むよ」

「任せとけぃ!」

「行くわよ!」

「援護する!」


 バードンは残ったミサイルを一気に放ちMBの拠点の迎撃装備を破壊する。そしてメタルヒーローはバイクで、蜂女はスラスターを使って特機が開けた大穴に一気に突入していった。

 拠点内部には、普段なら迎撃装備や防衛用のMBが配備されているのだが、特機の荷電粒子砲により内部はズタズタに破壊され、それらの機能は麻痺していた。

 そして2機のタイタンフレームが進んだ先には、本来なら強敵であったであろうボスの大型MBが半壊の状態で待ち構えていたが、2機に通り過ぎざまに止めを刺され拠点中央のコアへの道を明け渡すのだった。

 拠点の中央に存在する柱、柱と呼ばれている通り地面に突き刺さっており、これ根元がコアと呼ばれ、今回のインスタントエリアのミッションの破壊目標だ。

 蜂女がコアの破壊用に持ち込んだ爆弾を取り出していると、おもむろにメタルヒーローは、自らが乗って来たバイクを肩に担ぎ持ち上げた。するとバイクの前面が開き大きな銃口が現れた。そしてバイクの下部からは銃のトリガーが照準用モニター等が飛び出した。


「まさかそれは?!」

「行くぜ! シューティン!!」


 何かに気が付いた蜂女に応える様に決め台詞を決めるメタルヒーロー。バイクの銃口から、見立て機のバスターライフルに匹敵する威力のビームが放たれ、コアパーツは破壊されたのだった。


 バードンは、ミッションクリアの文字がメインディスプレイに表示されるのを確認すると、周りに別れの挨拶をし、ギルに目配せをする。すると視界がブラックアウトし、視界が戻るとディスプレイに映る外の景色は元居たハンガー内のものになっていた。


「おつかれさまです。バードン」

「今回は特機がいたからそうでもなかったさ、さて報酬でも確認するかね」


 そういうとバードンは、ギルを引き抜くと腰に付け、レバーを操作しハッチを開けると機体の外に出た。

 ヘルメットや手袋を外し元の恰好に戻ると、ソファーにダイブし板状の端末を操作し始める。そこには銅色のコンテナのイラストが2つ、銀色のコンテナのイラストが2つ、そして金色のコンテナのイラストが1つ表示されていた。


「確定とはいえ金コンテナはいつ見ても嬉しいな」

「物欲センサーを確認」

「そんな事は無い、俺は平常心だ。素数だってわかるっ! オープン!」


 バードンは掛け声とともに端末に表示された「OPEN」のボタンにタッチする。

 銅色のコンテナのイラストがコミカルに揺れると、上面が開き内容物が表示される。その後も銅、銀、金の順で開かれていった。


「インゴット、インゴット、弾丸、筋肉ぅ~?、さぁ来い金コン! レアアイテムを! もしくは換金率高いやつを! っあー!!ペンキ!!!! しかも売買不可のヤツぅ」

「おめでとうございます」

「……爆死だよ、ソルの機体にでも塗ってやるか」

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