第七話 熱中症は危ないんです!

「はぁ……今日は朝から暑くて嫌になりますね」


「うちもわかるぞ。通学中にこの暑さだと、昼の体育の時間には……うぅ、考えただけでも恐ろしいんだ!」


 言って、頭を抱える莉央。

 そんな彼女の言っている事は正しい。

 なんせ。


「よりにもよって、いま体育でやっているのは持久走ですからね」


「それなんだよな……走ってる最中でも、水分補給の休憩はいつでもしていいとはいえ——」


「わかりますよ、莉央ちゃん。いかんともしがたいこの暑さ、太陽の光が体力とか色々奪って行くんですよね」


「運動自体は好きだけど、この季節の運動は少しなぁ」


 運動が好き。

 花蓮からしてみれば、そう言えるだけで莉央はすごい。


 花蓮は運動が嫌いだ。

 暑い中の運動となると、なおさらに嫌いだ。

 好きな点があるとすれば。


「莉央ちゃんの滴る汗、荒い息遣い。そして何より、汗で張り付き透き通った体操着から見える下着! あれはたまらんほどエ○いです!」


「い、いきなり何を言っているんだ!?」


「あ、ついうっかり声に出してしまいました……これは失礼」


「う、うっかりって……体育の時間、花蓮はいつもうちのことを見てるのは知っていたけど……ま、まさかそんなことを考えていたのか!?」


「それはもう! というか、莉央ちゃんだってわかってますよね? だって体育の授業の後、よく体育倉庫で私、莉央ちゃんのことを襲って——」


「わぁあああああああああああ!」


「いやぁ、襲われてる時の莉央ちゃんは本当に可愛いんですよね! 最初は嫌がってるのに、途中からは受け入れ始めて、最終的には切なそうな表情で——ふがふが」


「それ以上は言ったらダメなんだ! 見ろ! 通学中の同級生がみんな気まずそうにこっち見てるんだ!」


 言って、花蓮の口を押さえてくる莉央。

 別に同級生に知られるのなんて、今更すぎると思うが。


 まぁ、莉央が嫌ならこれ以上はやめておこう。

 などなど、花蓮がそんなことを考えていると。


「反省したか、花蓮?」


 と、ようやく花蓮の口から手を離してくれる莉央。

 花蓮はそんな彼女へと言う。


「もちろん反省しましたよ! 私は莉央ちゃんのことが大好きですからね!」

 

「す、好きって…….うぅ、そんな大きな声でっ」


「ふぅ……それにしても暴れたら、余計に暑くなりましたね」


「か、花蓮のせいだぞ! どうして、うちのせいみたいな目でうちを見るんだ!」


「あ、そうだ」


「?」


 ひょこり。

 と、首を傾げてくる莉央。

 花蓮はそんな彼女をよそに、最強のアイディアを思いついたのだ。


「莉央ちゃん! なんだか本格的に暑くなってきました! ちょっとやばいレベルです!」


「大丈夫か? うちの水を飲むか?」


「そうですね、あれになったら危ないですしね。あれ、ほら……なんでしたっけ?」


「熱中症のことか?」


「え、今なんて言いましたか?」


「熱中症?」


「すみません、ゆっくり言ってもらっていいですか?」


「? ねぇちゅうしょう?」


「もっとです! もっとゆっくりと、感情をこめて! そして、私の名前を読んでから言ってください!」


「え、あ……か、花蓮。ねぇ、ちゅう、しよう?」


「……」


 このあと、路地裏に連れ込んでめちゃくちゃした。

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