第五話 女豹になってみてください!

「莉央ちゃん! 女豹になって私を襲ってください!!」


「あ、朝からいったい何を言ってるんだ!?」


「いいじゃないですか! 私達は同棲——この家には二人きりなんですから!」


「うちが言ってるのは、そういう問題じゃない!!」


 うぅ……っ!

 と、いつもの恥ずかしそうな様子で、困った表情をしている莉央。

 今日も抜群の可愛さ。


(正味、これを見られただけでも満足ではあるのですが……そういう訳にもいかないんですよね)


 実は花蓮、またしても締切がやばいのだ。

 コミカライズ特典用のSSのネタが、まったくもって思いつかないのだ。


(とりあえず方向性は決めてはいるんですよ。主人公の男の子が、女豹化した義妹にめちゃくちゃ迫られて、エッチッチな目に合う……問題は)


 花蓮、これまで生きてきた中で女豹な女の子に迫られたことがない。

 無論、想像はできる。

 だがしかし。


(想像でエロシーン書くとか、そんないい加減なことが出来るだろうか!? いや出来ない!! 私は梓花蓮——私は自分で体験したことを、より高次へと昇華して描く作家!!)


 それこそが花蓮のポリシー。

 他の作家のスタイルは知らないが、花蓮の中ではそれ以外は論外なのだ。

 故に。


「かくかくしかじかなので、お願いしますよ莉央ちゃん! 私、莉央ちゃんしか頼める人が居ないんですよ!!」


 花蓮はこれまで考えた一連を、手短に莉央へと説明していく。

 さてさて、そうして数分後。


「うぅ……こ、これでいいのか、花蓮?」


 と、頬を真っ赤に染め、ベッドの上で四つん這いになっているのは莉央だ。

 ただしその服装はいつもの制服ではない——脳内描写したら、もしカク◯ムだったら警告きそうなほどやばい衣装だ。


「はぁはぁ、いいですよ莉央ちゃん! それではお願いします! 莉央ちゃんの中での最強の女豹で、私を誘って見てください!!」


「は、恥ずかしいけど……うち、がんばるぞ! う、うちは花蓮のためならがんばれるんだ!」


 と、なんとも健気な莉央。

 そうして、彼女は女豹になった。


「か、花蓮……っ!」


 莉央はまず四つん這いのまま、片手を招き猫のようにあげると。


「が、ガオ〜っ! うち、おまえのことを食べちゃうんだ!」


「……」


「怖がっても無駄なんだ! ガオ〜、ガオ〜! うちは女豹だから、花蓮はもう逃げられないんだぞ!!」


「……」


「捕まえて、とっても恥ずかしい目に合わせたあと、ゆっくり味わってやるんだ! ガオ〜っ!!」


「ぶふっ」


 やばい。

 不覚ながら花蓮、鼻血を吹き出しながら倒れてしまった。


 女豹はガオ〜って言わなくない?とか、色々ツッコミどころはあるものの。

 莉央が可愛すぎてやばい。


「花蓮!? どうしたんだ、大丈夫か!?」


 と、心配そうな様子で駆け寄ってきてくれる莉央。

 彼女はすぐさま花蓮のことを膝枕してくれると、そのまま言葉を続けてくる。


「具合が悪いのか!? 救急車を呼んだ方がいいか!?」


 そんな莉央の服装は本当にやばい。

 何がやばいって。


「し、下乳……すこ、です」


「花蓮! しっかりしてくれ、花蓮っ!!」

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