最終話 この先も私は私のままでいたい

ルーナです。


私は薬のダブりが生じた日に、母親からの怒号が家中に響き渡りました。

その日に私は私だけでなく私の主治医のことを信じられないとお母さんは言いました。

だけど、その後怒っていないお母さんに同じことを聞くと信じていないと言ったのが、信じているとひるがえしました。

私はお母さんの気持ちがよくわかりません。

でも、そうですよね。

人の気持ちなんて分かるはずないし、分かることなんて諦めた方がいい。

その方がいいに決まってるから。


だけど、私はあの日。

お母さんが薬のダブりで怒った日。

私は殺されるかもしれない恐怖に陥りました。


お母さんは、何言ってるの?とか思うかもしれません。

そんなわけないよとかね。


だけど、私はあの日の土曜日の昼下がり。

私はお母さんの言葉で死ぬかもしれないそう感じました。

その時の私の脳内は、恐怖で満ち溢れていました。

私は怖くて脳内にある自分の部屋に駆け込んで鍵を閉めて、お母さんの声から遠ざかりました。


あなたの怒号が響くなか。


私は私を守るために、私ではない誰かに交代してもらいました。


私があなたの言葉で死んでしまう前にです。


私の言葉は信じられない、よく分からない言葉かもしれません。


だけど、私はあの日。


死んでしまうかと思いました。


あなたの怒号と言葉によって。


そして、お母さんとお父さんが話すたびに私の意見を全く聞かずに話を進める姿を見て、私は透明人間なのかなって思いました。

私はここにいるはずなのに、いないのかなって。

私は最初から透明で色のついていない消えてしまう何かなのだろうかと思っていました。

私は消えてしまうのだろうか。

そんなことを思って、私はここにいる人間なのだろうかと考えていました。


そのことを就労移行の人に話すと『あなたは素敵な人なのだから、透明ではなく自然なあなたでいて良いのよ』と言われました。


私はずっとお母さんを理解してお母さんと良い関係でいたかった。

だけど、、、私はずっと色んな人に相談もしたし、頑張ろうと頑張ってきた。


でも、頑張れば頑張るほどに私の気持ちや調子は苦しいまま。

人格交代は多いし、記憶の無くし方は多いし、自分がどこにいるかも分からなくなることが多くなるばかりだった。


だから、私たちは一緒にあまりいちゃいけないんだと思う。


主治医や就労移行の職員さんや多くの相談に乗ってくれた人に言われたんだ。

影響されたわけでもなんでもないよ。

私たちは適度な距離を保ちながら一緒にいなければ私は壊れてしまうの。


主治医に言われたんだ。

頑張っちゃいけないって。

頑張ったらおかしくなるって言われたの。


だから、頑張らないで生きないと私...

なんていうか、多分良くないんだと思う。


それから公務員試験を受けた方が良いとか。

あなたは障害枠じゃなくて、一般枠で公務員試験を受けた方がいいとかお母さんは言うけど、私はもうこの先、公務員試験は受けないと思う。

お母さんの悲願を叶えてあげられなくてごめんなさい。

でも、コロナになって考える時間がいっぱいあって分かったの。

私は本当にやりたいことをして生きていきたい。

そうじゃないとこのまま死ぬわけにはいかないって。

だから、私は農業の仕事に就きたいと思ってる。

お母さんは特性のある人の農業は良くないっていうけど、私は気にしないよ。

私は就労移行に通っている時点で障害枠でも良いと思ってるから。

もう、全て受け入れてるの。

全部分かってるの。


私はあなたが言うまだ分別のつかない赤ん坊でもないから。

私はもう自分で決められる大人になったんだよ。

時間軸があるならもう未来に進まなきゃ。

お母さん、過去より未来を見て生きて欲しい。


私はここより先の未来を見据えて、考えて生きようとしてるんだよ。

私の病気は解離性障害と双極性障害だよ。

解離性障害は極度のストレスによって引き起こされてしまうもの。


いつ治るかは分からないけど、私は毎日を無駄にしないように毎日を過ごしているよ。

忘れてしまわないように、写真に撮っても忘れてしまうんだ。

ここがどこかも分からなくなる。

だけど、覚えていたい記憶を忘れてしまうのも嫌だな。

私は忘れないように薬もリマインダーをつけて毎日やってるよ。

ご飯も昨日は食べれたものが、今日食べれないのは私の中にいる人格の好みによって、ご飯の好き嫌いが激しいからかな。


それから、プールに入った時に顔を水につけるのが、精一杯なのは人格交代がもうあるからなんだ。

人格によって、水が怖い子がいるからなんだ。

お風呂に入れるのは、違う子がお風呂担当をしているからなんだ。

電話が怖い子が1人いる。


それから、ずっともう言ってなかったけど...

私はやっぱりバイセクシャルなの。

レズ寄りのバイセクシャルなんだ。

嘘でもおかしいでも言うと思う。

でもね、本当なんだ。

私は小学5年生の頃から自分の性に違和感を持っていたの。

誰にも話せなかった。

だけど、高校の頃の友人にも大学の時の友人にも意を決して話したんだ。

みんな受け入れてくれたよ。

辛かったねって共感してくれた。

嬉しかったよ。

お母さんの思う普通の人と結婚して赤ちゃんを授かる人生を歩めなくてごめんなさい。

普通ではなくて、異質でごめんなさい。

面と向かっては本当のことを話すことは出来ないから。

本当のことを言ってもお母さんは否定してしまうでしょ。

そんなことないってお母さんは言うかもしれないけど、私から見たお母さんはあまり良いお母さんには見えてない。


私はお母さんにとってなんだったのかな?


私はお母さんの操り人形でもアクセサリーでもないよ。

私は大学を卒業していようとも大学を出ていない人と比べるなんてしなくても、みんな同じ人間だよ。

人と比べてあの人はダメだとか言うけれど、人の本質は話してみないと分かることと分からないことがあると思うよ。

それによって、決めることが1番大事だと私は思うよ。

だから、もう人と比べて私を批判したり、私を優秀だとは思わないで欲しい。

無理かもしれないけれど。

私はお母さんから批判を受けるほど世間知らずでもなく、お母さんの思う優秀な人材でもないよ。


私は周りと同じ人間なんだ。


障害があるからと蔑むのではなくて、その人にできることがあるとしたらそれは素晴らしいことだと私は思うよ。

お母さんはきっと蔑んでもおかしい人だとも思っていないと言うけれど、やっぱり私からみたらお母さんは人への偏見があると思うよ。


私はお母さんに変わってほしいなんてことは思っていない。

だけど、私はお母さんと離れる決断をした。

それは、私とお母さんにとってマイナスのことではないよ。

むしろプラマイゼロかな。

ゼロから始める親子関係かな。


私には6人の人格がいるんだ。

①U(ゆー)

29歳

空が好き。

年上の女性。

恋愛小説、恋愛漫画、恋愛映画、恋愛アニメが

好き。


②key(きー)

17歳

ポケモンが好き。

頭脳明晰

努力の天才

料理を作るのが上手。

なんでも食べ物が好き。


③律(りつ)

男でもなく女でもない中性

水が苦手

尖ったものが苦手

電話が怖い

歯医者に行きたいけど行けない

お風呂が苦手

芸術が好き

芸術的な才能がある

絵を描くのが好き

宝塚歌劇団が好き

冷えたご飯やピーマン、しいたけが嫌い。


④向日葵(ひまわり)

26歳

夜空が好き。

写真を撮るのが好き

可愛いもの綺麗なものが好き

洗濯するのが好き。


⑤雪人(ゆきと)

8歳。

物理と宇宙と化学と木の本が好き。

有機化学や相対性理論などに興味がある。

綺麗にするのが好き。


⑥リクオ

人格交代の指示役

リクオは兄貴肌。

一人称は俺。

韓国語と英語の勉強が好き。


これが6人の私の友達です。

私は写真を撮りながら場所を記録して道を覚えて帰ったりしてました。

そういう工夫をしないと家に帰ったり、どこかに行く時に分からなくなるからです。

人格同士の記憶の共有ができないのもあるからです。

だけど、慣れたところは何度も行ってるので、覚えていたりします。

でも、人格によっては精神科の主治医に初めて会うという子も居ます。

主治医の漢字を書けないという子もいます。

私の字は人格によって書き方が全然違います。

ペンを細字で書く子や大きな字で書く子など様々です。

朝が1番誰になっているか分からない時がありますね。

朝の数十分は違う人格が出ていることが多いですね。

だから、朝はだいぶ気をつけて自分に確認しています。

『あなたはだあれ?』ってね。

すると、だいたい答えてくれます。

お母さんは違う病院で双極性障害の病気をちゃん調べた方が良いと言いましたが、私は怖いので嫌です。

それから、私の精神科の主治医は解離性障害に詳しい先生でした。

改めて解離性障害について説明します。

❶体がふわふわする感覚や自分が自分ではない感覚や幽体離脱など

❷記憶がない、ここがどこだか分からない

❸自分の中に人格が複数人いる。

これを全て解離と言います。

主治医が説明してくれました。

そして、❶の症状は就労移行に通ったり、グループホームに行けば治ると言っていました。

❷と❸はこれから治療が必要なようです。

❷は今辛い体験を自分で守るために自己防衛しているために、記憶がなくなってしまうそうです。

❸は最終的には自分1人になることが望ましいけれど今はその人格が自分を守っている状態なので、今はまだそのままの方が良いそうです。

これからも精神科の主治医とは話しながら、頑張らないで闘病していきたいと思います。


お母さんは気づいていたか分からないけれど、私のおかしかったところもあったと思います。

その理由は全て解離性障害の症状のひとつだと思います。


お母さんに面と向かって言えなかったのは、お母さんの心配を増やしたくなかったからでした。

増やしてしまったら余計にあなたは心配して、情緒が不安定になってしまって本当かどうか私に迫ることを知っていたからでした。

だから、本当のことが言えなかった。

お母さんは前にあなたが暗いと家が暗くなるから明るくいてねと言ったことを私は知っています。

だから、私は無理にでも笑うことを決めました。

いつでも笑っていようと決めたんです。


就労移行でも笑顔で他の人に優しく接していたのは、お母さんのようにみんな情緒不安定になってしまったらどうしようと考えてしまったから、とにかく笑っていました。


それから、お母さんが体調が悪い時は戻ってきて料理を作ったり、お母さんが出来ないことを代わりにやって欲しいと言う約束は今の私には出来ることではないんです。

あの時は『うん』と返事をすることしか出来ませんでした。

なぜなら、出来ないと言うとお母さんは目をギョロッとして、眉間にシワを寄せて『なんでよ、元気なんだからできるでしょ』ということを知っていたからです。

でも、今の私にはすごく難しいんです。


多分、1回読んだだけじゃこの話は信じられないかもしれないので、何度も何度も読んでください。

そして、噛み砕いて心にしまってください。

理解するのはきっと難しすぎる話だと思います。

私も自分の症状を理解するのにとても時間がかかりました。

だから、読んで読んで読み込んでください。

人によって解離性障害の症状は違うと思いますが、これが私の症状であって同じ病気を持つ方のはまた違うと思います。


お母さんにはちゃんと話せなかったことを一度この場を借りて謝ります。

ごめんなさい。


今までそれでも、自分が分からないようにならないために頑張っていたんだよ。


グループホームに入ってもお母さんとは良い関係でいたいな。

これは本音だよ。

本音しか言ってないけど。


だから、もうお母さんの怖い顔も怒鳴る声も批判する言葉も人格否定することも私のことを信じないとか信じるとか意味のわからないことを言うことも謝らないと一緒に行かないからとか言うこともやめて欲しい。


私、お母さんにそんなにいっぱい悪いことしちゃったかな?


私はもう自分で何かをできる年齢なんだよ。


就労移行の職員さんは『あなたは自分の人生を歩んでいいんだよ。お母さんに縛られることはないんだよ』って言われたんだ。


だからね、お母さん。


私は私の人生を歩むことに決めたんだ。


私はお母さんと程よい距離感を保つために、自立することを決めたよ。


そのために、グループホームに入ります。


そして、やりたい仕事である農業の仕事に就きたいと思っています。


これからは、多くの人の力を借りて自立に向けて頑張ります。


だから、見守っていて下さい。


ちょっとずつですが、出来ることを増やしたいと思います。


だけど、いきなりあれをやれこれをやれとは言わないで下さい。

いきなり自立しろと引き離す言い方は、やめて下さい。

困惑するので。


お母さんも私が助けて欲しいと言った時は助けて下さい。

これは、お母さんを利用して言ってるわけではありません。

ただ、よろしくお願いしますと言っているだけです。


それでは、最後になりますがお母さんとこのエッセイを見ている方に向けてひとつだけ話したいと思います。


私は今、生きてて幸せだなっていう日々がもっと続いて欲しいなって思ってます。

私の夢は自分がやりたいことをやって、生きていくことが夢です。

小さな夢を大事にもってそれをどんどん大きくしていくことが大事だと思います。

私は、記憶がなくなって忘れてしまうかもしれない。

それでも、大事な記憶や楽しい記憶は覚えていたいです。

だから、これからもこの先も辛い時は辛いと言って嬉しい時は嬉しいと言いたいです。

空気を読むのも大事だけど、本当の自分を出すことも大事だと多くの方々から学びました。


だから、これからは本当の自分を出して、本音が言えるようになりたいです。

頑張らずとも自然にね。

私は私のままでいたいです。

これから先も


ずっとずっとその先もです。


それでは、これで。

『空の向こう側に咲く記憶のかけら』を見てくださりありがとうございました。


終わり。

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