第5話 相手

俺達の初めての試合である一年生大会の1回戦が始まっていた。

試合は3回まで0対0、双方ノーヒットの投手戦になっていた。

「ツーアウト!内野一つ!」

キャッチャーの声が響く。

(次は俺からの打順だ。しっかり守って、早く先制しなきゃ。)

カキーン!

甲高い音が響く。敬一郎の球が芯をくわれた。打球が右中間に伸びる。

「センター!」

ズシャー!

センターが飛び込んだ!

(取ったか?)

〝アウトー!〟

センターのファインプレーでスリーアウトチェンジ。

(良い流れだ。このまま先制する。)

第一打席、靖一はフォアボールを選んでいるが、それはピッチャーの調子がまだ上がっていなかったからだ。

(狙いはあくまでストレート!)

初球、インローまっすぐ。

(ちょっと甘い!)

カコーン!

少しバットの先で打ってショートの上をギリギリ越すポテンヒット。

「へいへい、ラッキーのポテンだよー、タイミング早いってー、打つ気満々じゃん。」

敬一郎にそう突っ込まれる。

(うっせーな、そんなことは分かってんだよ。)

心の中でそう返しておいて、集中し直す。

(さぁこれでヒットもこっちが先だし、流れ作ったぞ!打てよ、せめてゲッツーだけはやめてくれよ!)

2番の井上は、2番っぽく無い。短打10本より、長打1本の奴だ。だからこそこういう時に心配になる。

コツッ

「え?」

バントした。というか集中しすぎてサインを見ていなかった、だからこの、ブンブン丸の井上のバントに反応出来なかった。

その僅かな隙を、そいつらは見逃さない。

「二つ!」

バント処理したピッチャーがキャッチャーの言葉で迷いなく二塁に投げる。

俺はスライディングに行ったが、ホースプレーの分、ショートが伸びて取り、間一髪アウト。少しの油断や隙を見逃さずついてくる。[耐え凌ぐ野球]あいつらは、[戸屋シニア](とやシニア)初戦は厳しい試合になるだろう。

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球の心は素直なり! @kikami

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