第227話 一瞬の気の迷い

さて、3試合目。

これで決勝進出者が決まると思うと、少しドキドキするのは仕方がない。


俺とendmが降りたのは1試合目にも降りた、慣れ親しんだ街。

やはり敵は居ないので、俺らだけでこの街の物資を独占できる。


ここに降りた理由はそこまで難しいわけじゃない。

まず、今現段階では1位。

しかも2位と差を開いている。

世界大会進出をもっと安定に狙うならば、ここで初動落ちは回避したい。

だからあえて、敵が居ないであろうところでかつ物資も安定して集められる場所を選んだ。

予選、準決勝とendmが大暴れしていたが結果的にそれは正解だったのかもしれないな。

決して良かった選択とは言わないが((


『あれ、私のところに敵が居ますね』


少し漁り終えたあたり、endmがそう言った。

まじか気が付かなかった、と思いつつ俺もすぐに駆け付ける。


が、まるで俺を待っていたかのように敵が1人俺の前に現れた。

どうやら先には進めないよう。


「すまん、俺のところに一人いるからそっちに行けない!」


『分かりました、ここは自分でなんとかします。』


endmと俺で一人ずつの対峙。

ここは勝っていきたいところ。



流石に俺が居る場所は若干不利なところ。

だから移動しつつ、より勝てそうなところを探していた。


だが、その進路は綺麗に塞がれていき、俺は残った道を歩むしかなかった。


あれ、これ誘導されてるな?


移動中ようやく俺はこの事実に気が付いた。

このまま進み続ければ、endmと合流できる、が、挟み撃ちになるのでもはや負けたも同然になる。


危ない、ここで気が付けて良かった。

ただこの進路、どこで気が付いても俺が不利なのは変わりない。

この敵、なかなかやるな。

ちゃんと場所と、どれだけ有利に動けるか分かっている。


lucusみたいだな、そう感じるほどだった。

そう思ったと同時に、endmは一言、


『これwartですね、間違いないです』


「え、まじか?」


流石に彼女の一言にえ?となってしまった。


endmが言うには、立ち回り、追い込み方、使っている武器、などなど色んなところが酷似しているらしい。

それにどこを動いても場所が見透かされている感覚だとか。


じゃあ俺の戦っている敵はlucusなのかもしれないな。



あれ…



ただ1つ、ここからの攻撃を遮るようなことが浮かんできた。

lucusとwartはさっき7位だった。

ここで俺らが倒してしまうと、世界大会はもちろんいけない。


戦闘において、情は無用、そんなことは分かっている。

それでも少し戸惑ってしまう。本当にこれで良いのか、っと。


ただそのタイミングでlucusからの一言を思い出した。





『なあblanc。1ついいか?』


「ん?」


俺がendmと電車に乗って家に帰ろうとしたあの時、lucusに声を掛けられた。

wartは車に戻り、endmは少し前まで進んでいる。

そんな中俺に用ってなんだろうか、そう思った。


でもそこまで重要なことじゃない。


『どんな形で出会っても、戦場では敵同士だ。

 全力でかかってこい、全力で迎え撃つからな。』


「当たり前だろ、絶対負けないからな」


俺らはグータッチをして別れた。

いや、そんなこと今になって言うか?そう思っていた。



けれど策士のlucus、もしかしたらこの場をも読んでいた可能性がある。




「やるな…全力で行くか」



今まで無意識にでも付けていたであろうリミッターを解除した。

ここくらい全力でやらないとlucusに怒られちゃうな。




lucus、別名 戦術の貴公子。

巷ではそう呼ばれ、俺もまたそう実感することが多い。

彼自身は謙遜気味だが、実際戦術の貴公子という名には恥じない戦い方だ。


行くか、


さっきまでの守りの姿勢を止めた。

こっからは攻めの姿勢。

武器をサブマシンガンに持ち替えた。


『こっちは倒せました~!行けそうですか?』


endmとwartの決着はついたらしい。

俺の相方は流石だな。


「いや、俺で十分だ。」


ここで彼女の助けなんて不要。

絶対勝てる、そう信じて疑わない。疑うはずがない。


俺は彼に背を向けるのを辞めて、向き合った。



銃声は再び鳴り始める。




俺がサブマシンガンで撃つと同時に、相手はすぐさま身を引く。

だが、そんなもので逃げれるわけがない。

俺はそのまま攻める。

角待ちだろうという読みは当たっていて、敵は端でスナイパーを構えていた。


目が合った瞬間、既に弾は出ていた。

いや、これは避けれる。


まだギリギリではあるが、俺の本能は避ける方にシフトチェンジだった。

相手はまた後ろへ下がろうとする、がここで逃がすのは後々がしんどい。


「決めるか」


スナイパーを構える。



(────弾道を再補正)


何度も告げてきたそれは、詠唱の様に。

幾度となく重ねてきたこの経験が積み重なるように。


(────移動速度の修正)


移動速度を含めて再演算。


(目標地点は現在40m、標的の行動予測────オールクリア)


経験はやがて花へと変わる


一度廃れたものでも、やがて蘇る。


何があろうと努力は実力に昇華される。


目を背けず


狙いは違わず


過去に捕らわれず


まだ幻想を見ず


全てを込めて_______



「───俺らがこの勝負、頂いた」




彼の位置は完全に読んだ。

この後どう動くかも、この先どう展開するかも。

全てを演算処理した1つのスナイパー弾は、見事に命中した。




lucusとwartはこの時点で世界大会デュオ部門の進出は消えた。


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【後書き】

最後の構文は考えるのに20分くらいにらめっこしました。

どうだったかなー……良いものになっていることを願います!


フォロー数も6000に近づいていて嬉しいです~!

もっとこれからも頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします~!!!


追記)ツギクルジャンル別累計3位に上がってました~ありがとうございます!

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