第93話 謎過ぎるオフコラボ
さて、何度か配信を重ねた2月中旬。
「ええ……………」
さて、俺は今どこにいるかというと、
HESKAL1期生の光マナの家の前だった。
見れば分かるような豪邸だ。
アニメでしかこういうのは見ないかと思った。
「えっと、ここ押せばいいのか……」
あまりにも広すぎる門の端の方にあるインターホンを押す。
『えっと…もしかしてネスイちゃん?』
画面の奥からは、マナの声がした。
「あ、えっと……はい、白海ネスイです」
とりあえずと思い、名を名乗ると…
『え!?やっぱり!?私天才かもな。とりあえずちょっと待ってて!!』
そう言ってインターホンが切れる。
待っている間に門から少し庭を覗く。
「いや豪邸すぎだろ……………」
思わずぽつりとつぶやいてしまった。
中心には噴水、そして壁のように建物が建っている。
そしてその建物に囲まれた中心部の最奥。
そこには宮殿みたいな家があった。
「ありがとうございます」
「うわ!?」
いきなり後ろから声をかけられてびっくりした。
振り向くと、この家の使用人が立っていた。
「あ、えっと…白海ネスイです」
「家主様からうかがっております、こちらへどうぞ」
そう言われ、俺は使用人に付いて行った。
「こちらが家主様の娘様のご自宅でございます」
壁沿いに建つ建物の一つが、どうやらマナの家のようだ。
というか広すぎる。
普通にこの家にたどり着くまで10分くらいかかった気がするのだが……………
「では、どうぞ」
家のドアを開けてくださり、俺が中に入る。
「きたああああ!!!ネスイちゃんだああああ」
家の中に入るとすぐにマナが前から走ってくる。
「あ、えっと……………どうも」
若干人見知りが発動した気がする。
けれどマナはお構いなしだ。
このまま抱き着いてきそうだったので素早く横に避ける。
「もう!避けないでよ!」
マナは少し頬を膨らませつつも、凄く元気だ。
「まあ、ネスイに会えてよかったよ!とりあえず皆来てるから付いてきて!」
マナはそう言って前を歩き出した。
彼女は20代前半だろうか。
黄色がかった髪に、少し俺より大きい身体。
まあ、何か頼りに出来そうなお姉さんという感じがする。
「ていうか、マナさんの家大きいですね」
家に入ると、大きな玄関と天井に付くシャンデリア。
そこら辺の一軒家とは比べ物にならない広さで、部屋も結構な数がある。
「えへへ、いいでしょ~…というか敬語!?」
「あ、ちょっと緊張しちゃって……」
「まあまあ、落ち着いて~。1期生だけじゃないんだからさ」
元々当初の予定では1期生+俺ということだったんだが、明らかに不自然だった。
ということでHESKAL内で1期生以外の方も何人か来ているらしい。
「はいこれ、名札ね」
マナに渡された名札には、白海ネスイという文字が入っていた。
「あ、ありがと」
そっか、いつもはVTuberという殻を付けているからこそ、中が分からない。
まあオフ会みたいな感じでいいね。
「よし、ここだよ」
マナが立ち止まったのは、廊下の最奥部だった。
彼女はドアを開けると大声で
「ネスイが来たよおおおおお!!!!!」
そう叫んだ。
ちょっと…というかだいぶ恥ずかしい。
周りの目線はこっちに向いている。
「あ、えっと…白海ネスイです。新参ですがお願いします」
そう言って俺は礼をする。
HESKALのメンバーなのだろうが、オフで会うと誰が誰だか分からないや。
「あ、ネスイだ」
ギリギリ聞こえるような声でそう言って真っ先に駆け寄ってくれた方が居た。
身長は低く小柄、そしてロングヘアの少女だった。
掛けられた名札には[八神もえ]そう書かれていた。
「あ、もえか、だいぶ前だけどありがとな」
こんなに人気になったのは1期生の底上げがあったからだろう……………。
「いや、ネスイもコラボしてくれてありがとう………」
ん?
何か違和感がある……………。
「あれ、話し方が今日は普通だね」
半年前は結構、詰まっていた感じがしたんだけど………。
「えっと………なんかネスイと話すときは心が落ち着くんだ。」
そう言ってくれた。
「そう?ありがと!」
もえの声に俺も心は落ち着いてくる。
まだ、配信は始まらず、皆でわいわいしている中。
もう一人駆けつけてくれた方が居た。
「よ!」
そう言って俺に手を挙げて、もう片方の手は名札に添えられていた。
[風山氷]
数少ない男性VTuberだ。
「あ、氷じゃん!」
なんだよこいつ、イケメンすぎる。
ちょっと許せないね……………。
「やあ、ネスイと会えてうれしいよ」
「氷かっこよすぎ……。」
どうやら地毛が緑色のようで、黒いコートをまとっていることで様になっている。
「なあ、ネスイ。今日何するか聞いてるか?」
ゲームの話で弾んでいた時、ふと聞いたきた。
「いや何にも聞いてないな」
そういやマネージャーに内緒と言われた。
しかも場所はめちゃくちゃ広い。
こんなとこで何するんだろ……………。
「あれ?たくさん人が入ってきた……………。」
ふと入ってきた方向を見ると、使用人が次々と入ってきては色々と準備を始めた。
おそらく配信準備だろうか。
ていうか、今この場に10人くらいいる……………。
何するんだ?
「何をするんだろうね……………。まあマナだからえげつないことしそうだけど」
氷が横で笑いながらそう言った。
「マナってそんなにやばいの?」
「色々とね」
今度じっくり聞いて見ようかな。
そう思ったら、
「さて、そろそろ配信するよ~!!!!」
舞台の上でマナがそう叫んでいた。
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