第80話 初詣

「はあ、ったく………………」


1/1、いわば正月の朝から俺は彼女にぶつぶつと文句を言われた。


「横で寝落ちした幼馴染何か手を出そうと思わないわけ?」


「いや、別に」


「海斗は本当に男?」


「じゃあ逆にしてよかったのか?」


「っは!?い、いやべっっっつに?」


まあ、しようと思わないが……。

大体夜音が横で寝落ちするなんて親の顔より見たし何も思わない。

例え思ったとしてもちゃんと相手の事は考える。




ちなみに今は家の中ではなく、初詣のために神社に向かってる最中だ。

だからこそ公共の場でこういう話は控えてほしい。


「大体な、お前にそういう感情は抱かないから安心しな」


「は?もっと私の想いを考えなさいよね…ったく」


そんな1日目から不機嫌にしてしまった彼女を横目に見つつ、神社に到着する。


ここらへんでも有名だからもしかしたら知り合いとかも居るかもな。


「とりあえずお参り行くか」


手をゆすいで、すぐにお参りするために境内に向かう。

有名どころということもあり、混み過ぎている。


(はぐれないようにしないと……)


夜音の裾をつかみつつ、少しずつ前へ向かってく。



「よし、俺たちの番だ」


夜音はお金を入れてすぐに手をたたいて目を瞑った。

俺も同じようにする。


(平和な1年が訪れますように)


そう願い目を開けると、まだ夜音は願っていた。


「何を願ってるんだよ…行くぞ」


どうせ後から付いてくるだろと思い、先に出る。



「ちょっと~、待ってよ~」


ほら、やっぱりついてきた。


「はあ、願い事が多いんだよ、何願ってたんだ?」


「んー内緒。それよりおみくじひこ~」


「ん?あ、そうだな」


まあやっぱり初詣と言えばおみくじだ。

去年はなんだったか思い出せないけど、今年こそは大吉引きたいな。


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「んー悪いなあ」


俺は凶だった。


「夜音はどうだった?」


「ちょっといい」


そう言って中吉を出してきた。

ちょっと悔しいな。


「あれ、海斗は凶じゃんwwww」


夜音に言われつつもおみくじの内容を見る。


(大きな選択肢がやってくる?)


なんだろうな。

今時の俺の選択肢なんてあんまりない。


「どう?」


「恋は粘り強く行けば叶う………………」


「ん?なんか言った?」


「何も言ってないよ!帰ろ?」


「え、あ、うん」


最近夜音の発言と行動が不審だ。

まあ挙動不審な年頃なのか?ってことで気にしないでおくか。





「次の配信楽しみなんだよね~」


帰り道、夜音がウキウキしながらそう言った。


「何するの?」


「えっとね~、もえちゃんとFPS~」


もえちゃん?ああ八神もえか。

1期生であんまり喋らない子だけど、FPSとかしてるんだな。


「もえってFPSどのくらい出来るの?」


「んーHESKAL杯7位くらいだったしまあまあって感じ」


HESKAL杯は5位までしか把握してない。


もえは音ゲーが上手いという印象しか立っていなかったな………………。


「ちなみに配信内容はコラボ?」


「いや、耐久だよ?」


「え?なんの?」


「【end world】でマスター帯行くまで終われません」


マスター帯は普通にやばい。

俺はVR版の案件動画の時に行っちゃったが、敵の強さはやばく、油断すると即死ぬ。


「今どの辺?」


「ダイヤⅠ」


ダイヤⅠならもうマスター帯が目の前だ。


「それ耐久配信になるの?」


「は?海斗はすぐ乗ったけどこっから余裕で3時間とかかかるよ」


あ、そうなのか………………


案外マスター帯って難しいんだな。

そう思いつつふと前を見ると見たことのある顔が2人居た。


「あ、前に居るの友達だ」


そしてそのまま俺の手をつかんで、前へ走って行く。

このままじゃめちゃくちゃ誤解生むぞ?


「やあ!あけおめ!」


「あ、夜音………………っと坂峰?」


「え?なんでこの2人が…あ、ふーん」


そう何かを理解したかのようににやついた。

あ、手を繋いだままだった。


「夜音、また今度じっくり話聞くからね~」


そう言って2人は去っていった。

たぶん2人は同じクラスの同級生だ。


ん?まずくね?


「えげつない誤解生むけど大丈夫なのか?」


俺は別に噂なんてダメージにもならないから良いが、

彼女は大丈夫なのか?


「あ、別に良いよ~」


何かをしめたような笑みがこぼれていた顔だった。


「何をかんがえているんだか」


ちょっと考えたけど何もわからぬまま、家に帰った。


 

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