第75話 年越し配信準備
俺は今HESKAL本社に居る。
ここに来るにはとあるわけがあった。
以前、案件について打ち合わせをした日、
帰り道にマネージャーさんに
「そろそろ3D配信とか挑戦してみたいな」
そう呟いていたのだ。
もちろんマネージャーさんに聞かせるつもりもなかったのだが、耳には入ったようだった。
そして2日前、
《年越し配信を3Dでやりませんか?》
まさかの唐突で、びっくりした。
ということで今本社に居るわけだ。
一通りの資料と打ち合わせは済ませたので、ついに本番というわけだが…
(どんな感じなんだろ)
結局は身で感じないと分からないものだ。
今回行うところはHESKAL本社の中でもスタジオ部屋らしい。
案外ここのオフィスは広い。
初めてきたときはあまり見ていなかったけれど、歌ってみたとかそういうための部屋もある。
その中の一つに3D配信用のスタジオがあるということだ。
部屋のドアを恐る恐る開けてみると、大人の人がたくさんいた。
誰が誰なのか分からないので、辺りをきょろきょろしてマネージャーを見つける。
「岩佐さん。こんにちは」
「あ、ネスイ。こんにちは。今日は調子どう?」
「まあまあですね」
可もなく不可もなくと言ったところだ。
とりあえずマネージャーの岩佐さんに連れられて偉い方に挨拶を交わしていく。
「どうも。ネスイ、この方がHESKAL社長の 泉 琴葉さんだよ」
「あ、えっと…白海ネスイです。いつもお世話になってます…」
「いやいや、HESKALの期待の星なんだから。
こっちがお世話になってるよ!今日も頑張って!」
「あ、えっとありがとうございます。」
社長はロングヘアで眼鏡をかけている。
第1印象は何と言うか自由気ままな感じがする。
「さて、じゃあ早速だけど配信の確認とかから始めよっか」
「はい」
俺はそうして社長さんと意見を交わした。
まず配信は主にスポーツゲーム配信だ。
そして年越し配信の1時間前くらいに終わる。
まあ実際は年越し配信ではないのだが、年越す瞬間くらいは視聴者も個人の時間を大切にしてほしい。
そしてスポーツゲームとかは俺におまかせらしい。
部屋は最少人数で対応する形だ。
「あ、そうだ。もし最悪時間が余った用に1つ助言を教えよう」
「え?そんなのあるんですか!?」
俺の耳で社長さんはひそひそと囁いた。
「え!?えっと…良いんですか?」
「最悪ね。あっちも喜ぶよ」
「そ、そうですか」
たぶん使いそうだ。
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とりあえずざっくりとした打ち合わせも終わった。
一応打ち合わせはいつもより慎重に行った。
何しろたくさんの人が関わってるし、失敗したくない。
打ち合わせを終えて、いよいよ3D化を試しに行ってみる。
特に専用の機械を付けたりするわけでもなくボタン1つで変えられるらしい。
いっぱい機械を付けるのかと思ってた。
1プレイだけスポーツゲームをやってみる。
やるのはただ走るだけだ。
ゲーム専用の機器を足と手に付けてやってみる。
あんまり足は速くないので、モードは一番簡単で。
よーいスタートと同時に全力で足と手を動かす。
「しんど!」
なんとか1位を取れたが、一番簡単でも結構な難易度のようだ。
「わ~ネスイは相変わらず凄いですね」
と、横で見ていた岩佐さんがおっしゃった。
そうだ他の人も居る中でやってたんだった。
「いやいや、簡単なモードでこれなのでもっと頑張らないと」
配信開始まであと30分。
とりあえずギリギリまで色んなゲームを練習した。
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