第65話 さて始めようか

「ではでは、ゲームをやっていきましょうか!」


『やってやるぜ!!!』


「今回は色々と勝負しますかあ」


ーお~

ー面白そう

ーてかこれ隣でやってるんだよね

ーそういやそうか

ープリーム怒ってネスイにまた飛び込みそう

ー草


「まずは卓球やりますか。」


まあそんながっつりと楽しむわけでもないので3点先取とシンプルなルールだ。


『私こう見えて卓球出来るんだよね』


「それは本当か?」


俺は横にじっと目を向けた。

夜音はすっごい誇らしそうで、やる気満々だ。


「うわ、めっちゃ腹立つ顔してる。」


『なっ!失礼な』


ー直球すぎw

ーダメージ大きいぞ

ー何かすごい音鳴ってない?

ーまた襲ったか?

ー普通男が襲う側なんじゃないの?

ーネスイはああ見えても優しい…はず




「おいプリーム。邪魔すぎ」


流石に俺の上に乗られたら邪魔だ。

てかやけにスキンシップ多いな今日。


なんか腹が立つしボコボコにしたろ。



容赦ないネスイのプレイが始まった。




『は?』


『え?』


『なんで!!!』



まあ言うまでもないが3-0でボコボコにした。

その結果彼女は再戦を望み、またやる。


結果は同じ。



なんか夜音の考えが分かってしまう。

ここに絶対打ってくるなとか。

ここは避けようとするとか。


『あと一回チャンスを!!』


「あと一回だけな」


仏の顔も3度までと言うし、これがラストでいいだろう。


どうせ勝つ。






『今からぼこしてやる!』


「いや、何回やっても一緒だろ……うん?」


なんかさっきとスタイルが違う。


先ほどとおんなじプレイヤーだったのか疑うレベルだ。


「なんか上手くね!?」


見事に不意を突かれ1点取られる。


『ふっ。』


なんかこの勝ち誇った笑いが腹立つな。



気を引き締めて、次こそはと思い神経を研ぎ澄ませるのだが、きれいに読みが通らない。

行動を読んだときにはもう別の手段が判明している感覚だ。

こんな感覚を味わったのは、いつ頃だろうか………………


ちょっと楽しいな。

全力でやろ…



『うわ!』


彼女の隙を狙ったのだがぎりぎりで返される。


ドロップ、バックスピン、次はサイドスピン、


色んな攻め方を試行錯誤しているのだがどれも彼女は止めてくる。


そしてプリームが攻めに移った時、ぎりぎりを突く玉が多い。


「え?うま」


ーなんか大会でもやってる?

ー勝手に大会開くなw

ーこれ勝敗付く?

ー分からん

ーでもなんかすごい


『もう少し本気出しちゃおっかなあ』


そう言うと彼女の動きはさっきとまた傾向が違う。

そして行動も先が読めないようなものが多くなってきた。

読むより先に反応しないといけないレベルの演算量だ。


「やべ」


思わずミスプレイ、そしてその隙が出来た玉を容赦なく彼女は決めた。


『よし!2-0だあ』



「まだわんちゃん……」


『そんなのあるかあ』


彼女の動きは容赦ない。

隣でずっとカチャカチャするコントローラーの音が物語っている。

俺はこれに勝てるのか?


ーやばい

ー何かネスイを凌駕してる

ーこれプリームCPUみたい

ー上手すぎる

ーネスイも対応してるのが凄い


「くっ」


流石にさっきから撃ち返すことしかできない。

カウンターの手段すら考える暇も与えてくれない。


『いっちゃえいっちゃえ』


やばいな。


いつもは玉を避ける。

じゃあその逆をすればいいのではないか?


否。これは違う。

条件下が違うのだ。

玉を瞬発的に認識したところで、その一瞬で戦法を考えることは難しい。

その結果がこの防戦一方に現れてるのだろう。


「いや、強すぎだろ」


スピンを多用してくるのも鬱陶しいが、チャンスさえあればすぐ決めるのがやばい。

油断したらすぐ終わりそうだ。


せっかく勝てると思って卓球選んだのにな。



『いけいけ!』


ここまで行くと戦い方を考えるより、いつ攻めに移るかが大事になってきそうだ。


「強い!」



なんか一生点が取れる気配すらしない。

流石に状況的にまずいのでは?

一点も落とせないこの状況、そして防戦にしか手が回らない。


少しでも油断するとここでゲーム終了だ。



まあここで全力を尽くしてもメリットが無いし、手を緩めようかな…



でも、何ごとも全力で勝つ!

これは破りたくはない。

だから諦めない!!




「おらおらおら」


もはやどっちが攻めでどっちが守りなのかすらわからない。


ーラリー…?

ーラリーではないなw

ーずっと決め打ち

ーこれネスイもすごいんだよな

ー全部返してる時点でえぐいことに気が付いてくれ



ふと彼女を見てみた。

目の奥が凄い燃えていて、全力のようだった。


『いっけええ』


「え」


まさかと思わないタイミングの強力なストレート。

早すぎて動けず、そのまま負けた。


「くっそおおお」


『やったああああああ』


ーすげえええ

ーなんだこれ

ーもはや3戦目以外手を抜いていただろ

ーもうそれだわw

ープリームってああ見えてえぐいからな

ー一応HESKAL杯3位だったりする


『私頑張った~♡』


「あざと…」


思わず小さな声でつぶやいたのだが、彼女には聞こえてたみたい。

結構強い力で殴られた。



ちなみにこの後もいくつかゲームしたんだが、なんか夜音の立ち回りが分かってきた気がする。



最初は弱く、後から強く見せることでたくさんの視聴者を引き付ける…とか?

なんか卓球の時にすでになんとなく感じてた。


けど確信には至ってない。

だって


(夜音にそこまで考える知能があるのか)


ちょっと申し訳ないがたぶん無い。



だからこそ奇妙な行動をするようにしか思えない彼女だった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る