第60話 最強への再開花
さて、残り人数は5人から変わらない。
結構安全地帯も狭いはずなのだがこれがトップ帯だ。
なんならマスター帯の人とマッチングしている可能性だってあるし、レジェンドマスター帯の人も居る可能性がある。
だからこそ実力な差を覆すためには油断できない。
「まじで居ない」
敵が一向に見つからないまま、安全地帯は狭まっていく。
中心部に大きな建物があるのだが、流石にむやみに行けなかった。
ただ、今高台を取っているからこそ移動していないとも捉えられる。
どちらにせよ、ここで無駄に動けば的になって集中砲火されてもおかしくない。
1vs4のヘイトなんて絶対耐えきれない。
だからこそ慎重に動く。
「安全地帯寄らねえ」
運は味方に付けられず安全地帯は反対側に位置する。
タイミングを見計らって移動するのだが、建物を通らないと移動できない。
「これ、どうしよ………」
流石に通るしかないのだが、どこに敵が居るか分からない。
グラップラーがあったら上から行けるのだが、今回はそれすら無い。
「行くしかないかあ」
恐る恐る進んでみる。
全くもって銃声が響かないからこそ逆に怖い。
「あっぶね!」
通ろうとした道にトラップが置かれていた。
そして後ろを振り返ると敵がショットガンを構えていた。
「やばい!」
逃げる場所もなく、とっさの行動で何とか致命傷は回避できた。
だが、回復する暇もない。
俺はショットガンを持ち応戦する。
反撃からは冷静を取り戻し、相手の弾を避けつつ攻撃する。
「当たらねえ」
敵も避けているのか、それとも予測しているのか。
あまり弾がヒットしない。
そして敵は少しずつ下がっていった。
それでもダメージは結構与えているのですぐに詰める。
「うおぉ」
まさかの角待ちだった。
攻撃はとっさの判断で避け、ショットガンを頭に当てる。
見事あたり、これで18キルだ。
この銃声により敵同士の戦闘も盛んになった気がする。
まだ残り人数は4人とはいえ、すぐにでも3人になる勢いだ。
安全地帯に何とか入ると、まずは状況整理だ。
まず、建物の屋根に1人。
室内に2人。
外側に1人だ。
俺は室内に居る。
だから同じ空間に居る敵をまずは倒しに行こうと思う。
アサルトライフルで、どこから来ても良いように身構えつつ、敵を探す。
「あ」
反応したときにはもう、俺は撃っていた。
敵は俺に気が付いていなかったが、撃たれるとすぐに下がった。
だがそっちは行き止まりだ。
そこに俺はグレネードを投げ込む。
流石に敵は出てきた。
そこを俺はショットガンでしとめる。
「よし。いいね」
すると、同じタイミングで残り人数が2人、つまりは1vs1だ。
「まじで勝てる」
そう自分を鼓舞しながら、もう一度状況把握だ。
残された敵は屋根に居る。
そして俺はその建物の室内に居る。
敵の方が有利な場所に居る以上、むやみに攻められない。
だがここで勝つのが最強への道だろう。
VTuberを始めて、今に至るまで、結構良いプレイはあった。
それは色んな方に切り抜いてもらい、そしてどんどんと拡散されていった。
だが、そんなんじゃだめだ。
今までのは全部遊戯だ。
VR版として視覚だけでも自分の本ゲームに近い状況が作られている。
コントローラーだからという言い訳なんて絶対作らせない。
「やるか」
視聴者に聞かせるためじゃない。
本気の、小さな、でも強い力のこもった声が漏れ出た。
そして1つ思い出した作戦があった。
それはプロゲーマー時代、世界を勝ち抜くために使ったやり方だ。
(ここでやってみるとするか)
まず敵がドロップしたスナイパーとショットガンを切り替える。
そして建物から出る。
移動する安全地帯へと切り替わり、入口も近づいていく。
外を出るとまずは敵の場所は把握だ。
そしてすぐに見つけるとわざと足音を鳴らす。
すると敵は当然銃で撃ってくる。
そして俺はこれを避けながらアサルトライフルで迎え撃つ。
全感覚を研ぎ澄まし、1つ1つの弾に対応しているかのように避ける。
この洗練されたプレイは絶対に墜とされることがない。
そして弾が当たらない今、相手は隙しかないようなものだ。
すぐに敵はやばいと思ったのか下がった時、俺はすぐに上を登る。
これで立場は形勢逆転だ。
だがここでミスをしては元も子もない。
まずアサルトライフルをリロードして、もう1度脳内で作戦を試行する。
(行ける)
そんな確信が芽生えた。
次の安全地帯は建物のない平野へと続く。
これはもはや俺に状況が傾いているともいえる。
敵は上を警戒して一方に出てこない。
だが、そこで相手が望んでいたかのように俺は平野へと飛び出した。
すると敵は移動するために出てくる。
俺はその時を待っていたのだ。
まさに射線がすべて繋がったタイミング。
偏差を推測、推定距離を計算。
弾の速さ、敵の予測位置。
そして導かれた理論上最強の弾道。
そしてスナイパーを撃った。
「やったあああ」
ー????
ーやばあああ
ーえぐいってまじで
ーきもいきもい
ーどういう動き
ーこれはチーターだわ
ーもうBANされてもおかしくない。
ーチーターより強い人間
ーてか今倒された人レマスじゃん
ーまじかよw
ーしかもtop100入ってる人
ーそれを倒したのか
ーしっかり完封勝利なのが変態
「まじでうれしい!!」
しっかりランクマもマスター帯に上がれた。
キル数は20で1位。
ランクマにおいて、
ソロでのこの成績はまたもや世界記録更新だった。
「まじで楽しかった。VR版まじでほしいわ」
ーここまで上手くなる?
ーいやいやまさか
ーでも欲しいな
ーちょっと見た感じプレイしやすそうだった
ーまあ買うか
ー買うしかない
俺の配信は意外にも好評だったようで良かった。
「というわけで【end world】のVR版やってみた感想なんですが」
「今までよりもFPS感が増して楽しい!!ということでした。」
ー草
ー雑だけど一番伝わった。
ー楽しそうだった
ーこれ競技自体難易度変わるぞ
ーもっと白熱したやつ見れるかも
ーまじでネスイが案件してくれて良かった
こうしてただVRゴーグルをつけたランクマ配信も終わった。
マネージャーは結構手ごたえを感じていたようだったし、
運営も大いに感謝しているらしかった。
まあ成功したようで何よりだ。
プロゲーマーだったころがなつかしいな。
あの時はたくさんの戦術を考えてたんだっけ。
それが成功しても楽しいし、これが大会に通用したときの嬉しさはすごかった。
世界1位も今となっては昔のことだが、いまだに最近の事のように思えてくる。
っとそんなことは考えたくないや。
夜音が居るであろうリビングに出向き、辛辣な感想でも貰ってくるかあ。
そう思って部屋を出た。
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