第52話 最終決戦
さて、残り人数は5人と、人数の減りは異常だった。
本来まだ20人は残っているくらいの時間だ。
こんなに少なくなったのはラストマッチだから、
皆戦闘を仕掛けるのが多くなったのだろう。
そのおかげで敵は急激に減り、敵を見つけづらくなった。
だが、二か所で銃声が響いた。
一か所は俺の右側。
もう一か所は左側だ。
どうしようか。
まあ無難に安全地帯側だった左側に行く。
森の中で敵同士が戦っていた。
アサルトライフルでの撃ち合いで実力は拮抗していた。
だから俺がその状況をぶち壊す。
まずは片方の敵にサブマシンガンを撃つ。
距離は少し離れているので最大ダメージは出ないが、それでも頭に当たると威力は大きい。
そして敵が引くと、もう片方を狙う。
流石に敵には俺の存在がばれていて、アサルトライフルで今にでも撃ちそうだった。
だがそこで俺は弾を避ける。
サブマシンガンならまだしも、中距離でアサルトライフルなら簡単に避けられる。
相手が弾切れするのを待ちながら俺は少しずつ近づく。
そして銃声が止んだ時、俺は一気に走り出す。
もちろんサブマシンガンを撃ちながら近づいていく。
安定したエイムに敵はなすすべなくやられてしまう。
そしてもう片方の敵は、回復を終えたのか小屋の屋根からスナイパーを構えていた。
気が付くと俺はすぐさま射線を切る。
流石にスナイパーの弾が頭に当たるとほぼ即死なので避けたい。
少し遠い距離だったので詰めるしかない。
まだ他の方で銃声が聞こえるので漁夫の利は来ないだろう。
少し冷静になって詰めるべきだろう。
まずサブマシンガンをリロードしつつ、前に進んでいく。
射線管理を忘れないように脳内で何度もシミュレーションする。
だが、やはり相手も一筋縄ではいかしてくれないようだ。
俺の進行方向にトラップが張られる。
近くを通るとすぐに爆発するので避けるしかない。
また立ち回りを変えなければいけない。
俺は頭の中で演算を繰り返す。
そして試してみるも、相手はトラップを置いて進行方向をふさぐ。
どうしたらいいだろう。
そう思っていたら一つ案が浮かんだ。
持っていたグレネードを手に構える。
そして少し斜め上を向き、投げる準備をする。
角度は合っているか
飛距離は考慮しているか
相手の位置は特定しているか
すばやく確認を済ませて俺はグレネードを投げた。
しっかりと準備を怠らないその爆弾に敵は当たり、ダメージをもらう。
そして敵が少し下がるタイミングで唯一残されていたルートを通る。
敵は気が付くのが少し遅かったのかトラップを慌てておいた。
(もう遅い)
トラップを設置された時、もう敵の目の前でショットガンを構えていた。
この状況、相手はグレネードでダメージを食らっていたのでどこに当ててもキルが取れた。
敵は反応できずそのままやられていく。
そしてそれとほぼ同時刻に別のキルログも流れて、1vs1だ。
「ふう」
少し落ち着いて深呼吸だ。
今キル数は16と、かなりのハイペースだ。
だが何があるか分からない。
ここでしっかりと1位を取らないとまだ安心できない。
そう考えた俺はこの勝負に絶対勝とうと決意した。
【コメント欄】
ーうーん
ーこれはもう…
ー世界でもトッププレイヤーだな
ーなんでこんな有名じゃなかったの
ー一応このゲーム初心者らしい
ー他界隈は?
ー分からん
ーここまでうまい人あんま見ない
ー皆、現実から目を背けるな……彼は2キルしたんだ
ーシラナイナー
ー16キルとかここで1位取ったら記録更新
ーあれ、世界記録なんだっけ
ー16キル1位だね
ーここで1位取れば更新!?
ーえ?
ーふぁ
ーやばあ
ーがんばれ!
ーネスイ!!お前の力見せてみろ!!
ーてか氷やん
ーあ、ほんとだ
ー真の最強決まりそう
さて、少し落ち着けた。
敵はおそらく今安全地帯、こっち側に向かってきている。
だから先に居る俺は断然有利だ。
だがここで油断すべきではない。
一応高台に上っておこうか。
そう思い近くの山に登る。
上からラストの敵を探すがまったく見つからない。
もしかしたらと思って後ろを見るも居ない。
敵が居ないのが1番怖いなと思っていると、
ドカーン
急に上から大量に爆弾が降り注いできた。
とりあえず急いで小屋に隠れるも、爆弾で小屋が破壊される。
こんなチートアイテム。
1つだけ知っていた。
《空襲爆弾》
その名の通り置いたところから周りに空から爆弾が降ってくる
威力は最高レベルの火力を誇る。
そのチートレベルから排出率は極めて低い。
まさか敵はこのタイミングでこのアイテムを引いていたのだ。
ちなみに俺もこのアイテムを使ったことがあるから知っている。
このアイテムの時間はすごく長い。
つまり長時間この攻撃から耐える必要があった。
「やべえ」
とりあえず近くにある小屋を転々と移動して、なんとか生き残れた。
だが敵の位置も分からず大ダメージを負っている。
とりあえず回復をと思うんだが、しようとすると近くにグレネードが投げられ小屋が破壊される。
急いで別の小屋に入るのだが、その繰り返し。
ようやく収まったのだが、崖下という結構きつい場所だった。
とりあえず回復をするが、あんまり無かったので凄くピンチだ。
(どうしよう)
こういう時は頭をフル回転させて、物事を考える。
敵は今どこに居るか分からない。
ただ攻撃が収まったということは敵も俺の位置が分からないだろう。
だが今俺は崖下だ。
もし敵が上に居るのなら見つかってしまったとき一気にやられる。
だから先手を撃ちたかった。
作戦を考えつつマップを見る。
どうにか敵の位置が分かるものとかないのかなあ……
敵の位置?
あ
『近くに敵の位置情報が分かる機械があるんだよ…完全に忘れてた』
夜音と初めて練習をした時だ。
初戦2位と、最後に負けた時に彼女が言った言葉。
そしてマップには今それらしき物があった。
「これだ……」
《GPS特定機》
マッチ上で一人1台しか表示されず、その特定のものからしか使えない。
使用すると周辺の敵の位置が分かる。
だがその代わりに自分の所持する回復を失う。
今俺は回復がないので実質デメリットがなかった。
もはやこれしかないだろう。
急いでそっちに向かった。
敵にバレることなくそのまま機械のありかに付けた。
たまたまここの安全地帯内にあってよかった。
俺はすぐに起動する。
少しだけ待つと敵の位置が赤く囲われた。
(山上か)
やはり敵の位置は、俺がさっきまで居た山上だった。
でも今俺は位置が分かった。
ならばこの有利さを使うしかない。
まずは進行方向とは別にグレネードを投げる。
すると敵の注意は絶対にそっちに向く。
次に斜め上にグレネードを投げる。
これはさっき敵がやっていたように、グレネードを集中的に狙う。
しかも今は遮蔽物がほとんどないので、逃げにくい。
そして敵が少し山上から離れた時、グラップラーで駆け上がる。
だが敵にバレないように、煙幕というアイテムを使う。
すると、俺は赤色で囲われているから敵の位置が分かる。
だが敵は俺の位置が分からない。
俺はすぐにサブマシンガンを撃ち始める。
ただ遮蔽物がないので煙幕が引いたらすぐに下がらないといけない。
だが敵も銃声を頼りに撃ち返してくる。
アサルトライフルなのでギリギリ避けることができるがかなりの精度だ。
煙幕がもうすぐ消えるであろうタイミングで俺は下がる。
そして、今あるアイテムをもとにまた作戦を考える。
グラップラーはあと弾が3発。山にはあと一回しか登れないだろう。
グレネードは2つ
煙幕はあと1つ
さてこの中だけでどうすべきなのか。
もう俺の頭の中では浮かび上がってきた。
まず煙幕を山上に投げる。
すると敵はおおわれる。
だがこのまま上に上がっても銃声で撃たれるだけ、
ならばここでグレネードを投げてしまおう。
少しグラップラーで離れたところから微調整を行う。
「角度確認
飛距離再確認
物理演算再起動
狙いは1つに
そして勝利を
この一つで決める!!」
俺はグレネードを投げた。
この弾が着弾してから爆発するまで、すごく体感長かった。
敵が逃げてしまうのではないかと思うくらい長かった。
だが俺の作戦は的中した。
《Chanpion!》
「よっしゃああああああああ」
VTuberとして配信を始めて、これほどうれしい瞬間は無かっただろう。
この瞬間17キル1位 そして世界記録更新を果たしたのだった。
【コメント欄】
ーうおおおおおおおおおおおおおおおお
ーきたあああ
ーおめでとおおおおおおおお
ー10000円/お前が最強
ー2500円/強すぎおめ!!!!
ーえぐすぎだろまじでwwww
ー20000円/信じてよかった
ー15000円/これからも推すわ
ーはあああああ
ーやばくね
ーもうこれは最強の域超えてる
ー世界大会行ける
ー25000円/メミシス/俺の負け
ー本物!?
ーえ!?
ーほんものじゃん!!!
ー見てたのかよww
ー誰?
ーこのゲームの世界1位
ーえ!?
ーすげえええええ
ーなんだこの試合
ー歴史的試合すぎる
「めっちゃ気持ちよかったあ」
とりあえず優越感に浸りつつコメント欄を付けた。
大量のスパチャが流れてきていてすごく満足する。
だから大会はやっぱり気持ちいい。
(これを機にプロゲーマー復帰とありだな)
まだ絶対にとは決まっていないが、一種の選択肢としてありかもしれない。
今なら過去と立ち向かって新たな自分として目指せるかもしれない。
けれどそんなことは今どうでもいい。
とりあえず優越感に浸りながら実況側の配信を付ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます