第47話 達人大観 

運命を分ける3マッチ目。

とりあえず2マッチ目の反省点を生かすために、

何ごとも慎重に進もうと思う。


とりあえずまずはいつもの固定降り。

過疎地ということもあり敵が来るはずもなかった。


物資がそろわなくても、しばらくは動かないでおこうと思っていたが、

武器や回復はすべて揃ったので良かった。


とりあえず今回は1位を取ることだけに注目して、キル数は気にしない。

というのも、さっきのマッチは少し配信というのを意識してしまった。


その結果キルペースを上げることが頭に入りすぎていた。

結局死んでしまっては元も子もないし、

視聴者はネスイが勝つところも見たいだろう。


配信を意識するのが悪いというわけではないが、

大会というものを集中しなければ意味がない。



なので今回は最低限しか喋らないし、大会にだけ集中する。




そう決めて3マッチに取り組むわけだが。


特にすることはない。

無理に攻めず、ただ漁っていた家の窓付近でひたすら待機だ。

安全地帯の範囲にも入っていたので余計に待機だ。




待っている間、この大会でどうすれば総合1位になるか考えていた。

1マッチ目も2マッチ目も試合内でtop5は取れていない。

ただキルポイントでぎりぎり総合には載った。


だが、1位には遠く及ばない。

とりあえず総合1位を目指すならば段階的に目標を立てるべきかもしれない。

そう俺は気が付いた。



このマッチ目標はやっぱりマッチ1位になることだ。




「頑張るか…」



もはや癖ともなったこの言葉をぽつりとつぶやいた。









2つ目の安全地帯は少しだけ外れていた。

だから移動しなければならないのだが、どのタイミングで移動すべきか悩んでいた。

進む方向は、2マッチ目にキルを稼いだ街だった。


近いのですぐに進むというのもありだが、待ち構えられている可能性もある。

だからと言って、ぎりぎりで進んでも待機されてることが多い。



俺は頭を悩ませつつ、どうしようか考えていた。


そう思って、マップを見ながら立ち回りを考えていたら、街で銃声が鳴り始めた。




今しかない。





今街に居る敵はおそらく、銃声の方に向いているだろう。

なので今なら移動してもヘイトが向く心配がなかった。


運がよかったな……



たまたま銃声のおかげでヘイトが向かずに俺は街に入ることができた。







街の家の中で隠れていても、特に敵にバレるということはなくそのまま次の安全地帯まで過ごせた。

次の安全地帯はもうすでに範囲内だった。



ずっと隠れていても面白くないが、勝利への執念ってことで視聴者には許してもらいたい。

どちらにせよ終盤になると戦闘は嫌でも行われる。

その時に判断を間違えずにキルを稼ぎつつ1位を取りたい。




残り人数は15人と相変わらずの量を示してくれている。

もはや安全地帯の大きさは街の大きさとほぼ一緒だろう。


周りでは常に銃声が鳴り響くものの、敵も引き際が分かっているのか

キルログは全く流れずに、次の安全地帯の発表があった。



ここで範囲内に入っていたらどれほど楽だっただろうか…

俺はまさかの逆側に移動しなければならなかった。


次の範囲内に家が結構あるのが唯一の救いだろうか。

それでも立ち回りをまた考えなくちゃならない。


さっきは銃声に紛れて行くことができたが、次はそうはいかないだろう。

俺はどうするかまた悩みだした。


なんとなく考えていて、急に思い浮かんだ。




俺アイテム使って無くね…



この大会1マッチ目も2マッチ目も俺はアイテムを使っていなかった。

回復は使っていたが、アイテムという存在は忘れていた。


アイテム欄を見ると、グラップラーが入っていた。


「神かよ」



グラップラーなら瞬間的に移動が出来る。

唯一の欠点は対空で撃たれる可能性があることだ。

だからヘイトが出来るだけ向かないタイミングで行く。




だが、逃げる方向には1人ずっと待機している人が居た。

おそらく俺には気が付いていないんだろうが、移動してくる敵を全員倒す流れのようだ。




俺に気が付いていないのなら、スナイパーで撃てばいいか。


すっかり忘れていたが冷静になると戦闘しないは別だ。

判断さえ見誤らなければ全然戦闘していい。




スナイパーでしっかりタイミングを定めて、撃つ。

多少運も必要だったが、相手の動きを読んだ俺の弾はしっかりと頭に当たった。

進行方向に居た敵をキルしたことで、安全地帯への移動の安全はさらに硬くなっただろう。



もう大丈夫だろうと思い、グラップラーですぐに移動する。

移動中に敵に撃たれることは無かったが、敵を見つけた。


まあどうせならと思って、安全地帯内にあるビルの上に上がった。

周りの中では1番高いビルなので撃たれる心配をせずに、敵を狙える。

とりあえず、さっき見つけた敵を狙う。


スナイパーで見ると結構隙が分かりやすい。

敵はまさかもっと上に居るとは思わないのか警戒していない。


ならばその隙を狙うのみ。

少し狙いにくいが、練習のおかげでしっかり命中した。

これで2キル目。


しっかりと安全にキルも取れている。



残り人数は10人を切った。

そして皆立ち回りがうまく、敵が見当たらない。



次の安全地帯の範囲には入っていた。

なので移動せず、一番高い場所 いわゆるハイグラを取ったままで良い。


そして、この安全地帯を移動する敵をスナイパーで一掃できる。

と言っても、相手も油断せず警戒しているということもあり、全然見つからない。


唯一分かりやすい位置で移動していた敵を倒した。

これで3キル目だ。



範囲が狭まることで敵の接触も増えてきたのか、銃声が鳴り響く。

そして、キルログが少しずつ流れていく。

俺はしばらく、上でのんびりしていると、1人上ってくる敵が居た。

グラップラーで少しずつ地道に上がっているようだった。


俺は上からショットガンで撃つ。

真下ということもありヘッドショットはほぼ確定、

相手は致命傷を負って、降りようとしていた。

ショットガンじゃ距離的に倒せないだろう。


だが俺はスナイパーに切り替えて撃つ。


しっかりと当たってくれて、4キル目だ。




残り人数は自分を入れて4人となった。

そして、俺はハイグラに居る。

このチャンスを逃すわけには行かなかった。


次の安全地帯は移動する。

なので、ずっととどまることは出来ず、常に移動し続けなければならない。

なので下では戦闘が激化するだろう。


ハイグラを降りて戦闘するのも候補にはあるが、

リスクを背負うよりは安全に移動しようと思った。


まだグラップラーはあと5発撃てるので、そのままビル間を移動しようと思う。




俺が移動を進める中、下では常に戦闘が起きているようだった。

だが全員が強者なのか、人数は減らない。


グラップラー1発を残して、ビルを移動し終えた。



そして次がいよいよ最後の安全地帯移動だ。

しかも少しずつ範囲は狭まるので、どんどん敵の集まる位置も狭まる。


ここからが勝負場だ。




急に下でも状況が変わったようで、

一気に2人居なくなった。


つまりこの場は俺ともう一人のみだった。


敵はおそらく下で待機しているだろう。

俺はグラップラーを使い終えた。

今いるところから降りて、戦闘で勝つ。



俺なら行ける。

今までこんな状況でミスったことがない。

緊張せず、普段通りにすれば行ける。


最後に自分を鼓舞して、深呼吸をした。




さて行くぞ!




まずはビルから降りる。

少し高いところだったから足音は聞こえず敵の位置は分からない。


見えたらまずはショットガンを入れる。


ヘッドには当たらなかったが、胴体に当たる。

すぐさま近くのビルの柱に隠れて、タイミングを見計らう。


相手が少し銃口をそらしたタイミングで俺は体を出して撃つ。



日ごろから頭に位置を当てるよう癖をつけていた。

そして今回も相手の頭に弾が当たった。





《Champion!》




「やったあああああああ」


ーうおおおお

ーナイス!!!

ー上手すぎだろ

ーすげええええ

ーおめでとおおおおおおおおお


すぐにコメント欄をオンにしたら、みんなが褒めてくれた。

これだから配信者はやっていて気持ちがいい


「勝てた…」


3マッチ目にしてようやく勝てた。

やっぱりマッチのレベルは高い。


「次はキル増やさないとな……」


5キル1位を取った。

次はもう少しキルして1位を取りたい。


「ていうか休憩か」


3マッチ終わった時点で休憩時間がある。

top5はインタビューなどが行われる。


「さて、順位は」


1風山 氷

2プリーム・アラモート

3春陽のゲーム部屋

4白海ネスイ

5清城 ひな


「4位!やったああ」



中間発表で4位だ。

全然良い立場だろう。

1位もまだまだ圏内だ。


ーおおお

ーすげえ

ー1位見えてる

ー次のマッチがカギになりそう



「さて、配信見ながらインタビュー待つか」


脳を休憩させながら、視聴者と雑談だ。

そしてインタビューも控えているので待機する。

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