第34話 HESKAL杯に向けて②
『あっごめん』
あんまり遮蔽物もないところで、彼女はダウンした。
遮蔽物がないのでその後すぐにキルへと変わる。
キルをされるとバナーカードとをドロップする。
味方が近づくと、それを入手して、所定の位置にもっていくと
そこで味方を復活できる。
だが、安全地帯と言われるものが時間ごとに縮まっていき、
復活できる場所は今俺らの範囲には無い。
よって、1人で戦うことしかできなくなるのだ。
「頑張るわ…」
ほぼ自信の欠片すら存在していないが、とりあえず頑張ってみよう。
練習だからそこまで気合いを入れなくてもいいと思うが、
実際こんくらいの実力で当日戦う気がするので、
どこまでいけるか知りたかった。
ゲームは終盤に入りつつあった。
生き残っている人数は9人だ。
俺だけがソロのようで、他はデュオだと思う。
なので数の不利をどうやって埋めるかが勝利のカギとなりそうだった。
『そこの家に居よう』
経験時間がずっと長いであろう彼女の話を聞いて、
俺は移動する。
安全地帯の端っこということもあって、
次の移動も必須だろう。
範囲が小さくなっていくことで敵同士の接触が増えてきているのだろうか、
どんどん銃声の量が増えてきた。
俺はわんちゃんを狙って、家から出てスナイパーを持つ。
戦っている敵の隙を狙って撃つ。
惜しくも当たらず、
相手も俺の存在を察知して射線を切られてしまった。
『今のうちに移動しよ』
そう言って新しくピンを刺していた。
俺もそうだなと感じて移動する。
前に敵が居る…
もちろん移動するためには前に行かないといけないのだが、
相手は二人チームだ。
人数不利ということもあって、戦いたくはない。
だが、戦わないと安全地帯から出てしまってすぐに死んでしまう。
「どうするべき?」
思わず頼りある人に聞いた。
夜音はうーんと声を漏らした後に、
『戦ってみたら?』
そう言った。
おそらく戦わなくても進めるのだろうが、戦ってみた方がいいという
案なのだろう。
深読みしている気もするが、そのまま俺は戦うことを選択した。
今なら別方向でも戦っているので、割り込んでくる敵が居ない。
なのでやるとしたら今しかないのだ。
「やるか…」
とりあえず数的不利を覆したかった。
そのためには一つ方法があった。
スナイパーに切り替えた。
やっぱりこの武器構成で良かったのかもしれない。
俺はスコープを覗きタイミングを見る。
相手はまさか後ろに敵がいるのかと思わず後ろを向いて止まっていた。
その瞬間を抜く。
しっかりとヘッドを狙ったおかげで、1人ダウンがとれた。
『強くね…』
夜音の驚嘆の声が漏れていたが気にしない。
相手はもちろん後ろに俺が居ることに気が付いて、対抗してくる。
俺はショットガンがあるので近距離戦に持ち運びたかった。
だが、敵と俺との間に隠れれそうなものはなく、どうするか考えていた。
「スナイパーでやるか」
もういっそ、2人ともスナイパーでやればいいという結論に達した。
弾は結構余裕があるので何度も撃ち続ける。
撃てば撃つほどこのゲームでの感覚がだんだんつかめてくる。
相手の出るタイミングもなんとなく分かってくるので
自分の撃つタイミングをずらす。
するとヘッドではなかったものの、頭にダメージが入る。
もし俺が敵側だったらとりあえず下がるだろう。
つまり俺はショットガンに持ち替えて詰めるしかない。
『行ける!』
夜音の後押しもあったのか、逃げていた敵をしとめることができた。
まさかのクラッチ…
正直負けると思いつつやっていた部分はあったので勝つとは思っていなかった。
だから俺も少しは驚いているが、
すぐに移動しないと敵が銃声につられてやってくるのだ。
「あと3人か…」
考えながら戦っていたらいつの間にか1vs2となっていた。
敵がどこにいるかも分からないので、俺はとりあえず安全地帯の中で隠れる。
相手も隠れているのかずっと足音がしない。
なんとなく油断したからか隠れていた小屋のなかから出てくる。
すると、どこから撃たれたのか分からないがすぐにやられた。
『あちゃ~』
最初何が起きたか分からず混乱していた。
するとその状況を知った彼女は
『近くに敵の位置情報が分かる機械があるんだよ…完全に忘れてた』
絶対それは忘れるべきではないと思いつつ、もう一回マッチに入った。
いつの間にか彼女の立ち回りや作戦で無言になっていたことに今気が付いた。
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