第30話 不思議な人

 《コラボしかしてない配信(3人目)》



 紫色のショートヘアが特徴で言葉数が少ない八神もえさんと

 今俺は配信を始めた。

 正直不安でいっぱいだが、一期生である彼女を信用するしかない。

  


 『えっと、では、まずは、以前募集した質問から』


 『ど、どうやったら、ゲームうまくなりますか』


 一つ目の質問から難しかった。

 実際上手くなった理由はblancというプロゲーマーとしてもっと成長するためだった。

 だがそんなことをここで言えるはずはなかった。


 「まあ、上手くなりたかったから毎日努力してたな」


 これは事実だ。

 実際プロゲーマーになると決めてから一試合一試合を意識していた。

 エイムが悪くてしんどいときもあったけれど、

 今は頑張ったかいがあったと感じている、


 『や、やっぱり、最初はしんどかったんですか?』


 「そうだなあ。最初は銃で戦うゲーム自体あんまやらなかったから

  思った通りに行動できなくてしんどかったな」


 『や、やっぱり、最初はしんどいですよね』


 ーもはやプロゲーマーの質問コーナー

 ーもえちゃん頑張れ

 ーすごいなぁ

 ーこの二人の日常感好き

 ー面白い


 『じ、じゃあ、次の質問!』

 

 『絡みにくそうなVTuber』


 急に質問コーナーみたいな質問来るやん。

 しかもちょっと難しい質問。

 まだ絡んだことがあるのが春陽さんとプリームだけなんだが。


「絡みにくそうな人は今はまだ居ないかな。」


 『まあ、流石にいませんか』


 どうやら八神さんの質問枠だったようだ。

 

 「ただ、1人面白そうな人がいたんですよ」


 一応コラボ打診とか、話題に上がった時用に、HESKALのメンバーの目を通した。

 その中で何人か興味があった人は居たが、その中で一人印象深い人がいた。


 「祭川 カプラさんって方が興味ありますね。」


 ーあぁ

 ーあの人か

 ー確かに合いそう

 ーそんなことを言うとコラボが来るぞ

 ーコラボしそう


 祭川 カプラ

 HESKALの3期生だ。

 3期生登場時、一番期待度が高かった。

 彼女は頭の回転が速く、謎解きなのがずば抜けてすごい。


 ここからは個人的な考えだが、

 fps界隈とかに入ると立ち回りがすごく上手そうだった。

 

 HESKALではたまにHESKAL杯といわれるfps大会が行われる。

 もちろん招待枠でVTuber以外も参加して、どのグループがトップに立てるか競うものだ。

 blancのときも招待がいくつか来たが、その時はすでに現役を休止していたから

 参加しなかった。


 そんな中でカプラさんのプレイを見たが、その少しでも立ち回りの才能があった気がした。


 『カプラは、あの人は、頭がいい、ですね。だから面白い配信が見れそうです』


 まるでもうコラボが決まったかのように話しているがまだ決まってない。


 「八神さんはコラボしたことあるんですか?」


 『あ、ありますよ』


 謎に詰まった感じの言葉だったが、あんまり気にならなかった。

 

 「どんなことをしたんですか」


 ーあれか

 ー罰ゲーム

 ーもえが泣きかけてた

 ーあの人は才能だわマジで

 ー天才


 『お、思い出したくもないです』


 コメ欄で大体察せられるが、まあそういうことなんだろう。

 トラウマを思い出したくないことなんてよくあることだ。


 「そっか。まあアーカイブ見とくよ」


 『見ないでくださいよ!!』


 たぶん初めてなんじゃないかくらいの声だった。

 けれどちょっとかわいくて透き通るような声でもあった。


 「ごめんごめん」


 まあ、どちらにせよアーカイブ見る気はなかったので大丈夫だ。


 『そういえば、』


 そう八神さんは話し始めた。

 ゆっくりだけれど、言葉が詰まることはなかった。


 『HESKALのメンバーは基本皆、下の名前で呼んでますけど、呼ばないんですか?』


 質問コーナーにすればよかったのに、自分の質問とあからさまにする限り、

 八神さんの性格がにじみ出ていた。


 「男だから…あんまり呼びにくいなぁって」

 

 ーそんなこと思ってたのか

 ー意外と考えてた

 ーそうなのか

 ー男vがあんまいないしね

 ーほかに2人だっけ


 『HESKALは基本先輩とかも呼び捨てで良いですよ』


 それを断言しちゃってどうなのかとは思う。

 けれど1期生が言うことなんだ。

 たぶん暗黙の了解的なものがあるのだろう。


 「じゃあ、もえって呼ぶのか?」


 『そ、そうですね』


 双方が恥を隠し切れず、黙った時間が続いた。

 そんな時に助けを求めてほしいがためにコメ欄を見ていた。


 「ていうか、男性のVTuberはあと二人ここに居るんですか!?」


 俺の持っている名簿は女性ばっかだった。

 まあ、深夜に読み返していることもあって、記憶があいまいなのだろう。

 

 『はい。1期生と、4期生に』


 いたのか。

 てっきり一人だけかと思っていたので少し安心した。

 というか普通は男性と女性で企業ごとに分類わけしているのかと思っていた。


 「会ってみたいなぁ」


 俺の思っていることが口から出てしまった。

 それにもえは少し笑ったような声を出して、


 『たぶんすぐ会えますよ。お二人も楽しみにしていることだし』


 まあ、二人しかいなかった状況に、3人目がやってきたのだ。

 期待されていてもおかしくない。


 

 『ま、まだまだ質問コーナーし、していきます!』


 もうだいぶ内容が濃かったがまだまだするらしい。

 まあまだ題材が途切れてはないし、

 いざとなった時の切り札もあるから大丈夫だろう。



 そう信じた。

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