第15話 思った以上の反響

「なぁ見たか?」


「あーあれな」


「あれはプロの領域だぜ」


「ネスイさん、まじすげー」


と、盛り上がりは衰えなかった。

俺は横で会話聞きながら窓の方を見る。

今日はblancの配信だ。

といってもただプレイするだけなので考えることもない。


「あっ、海斗」


名前を呼ばれたので横を向く。


空太そらた、どうかしたか?」


彼は夏希 空太。

全体的にイケメンといわれれば納得してしまう顔つきだ。

身体は少し細いようにも見えるが、筋肉質で高身長だ。


こいつはゲーム好きで毎日4時間くらいしていると聞いたことがある。

なのに、それでも1学期のテスト順位は一桁だった。

流石に羨ましい。


「いや、お前もネスイさんの配信見たか?」


「まあな」


実際には見たんじゃなくてしたんだがな。

正直そこまで人気が出るとは思わなかった。

なのに、登録者も今は15万人を越えている。

何でこんなに人気が出たのか分からないので、


「ネスイ?はなんでそんなに人気なんだ」


「HESKALは女性vが多いんだよ」


つまり、珍しく男性vが入って盛り上がったらしい。


「しかも急に4.5期生なんて出すから皆見るに決まってるじゃん」


確かに珍しい現象が起きたら見に行ってしまう気がする。


「海斗、またゲームしような」


どうやら空太の友達が待っているようで、行ってしまった。

この学校に親友と呼べる人はほとんどいない。

というのも高校生になると同時にこっちに引っ越してきたので、知ってる人がほぼ居ないからだ。


だから夜音としか仲良くなれない。


「いや~あの人ヤバイね」


「声もきれいだしね」


「ゲームしよっかな、マッチングしたいし」


「参加型とかあったら出来るかもね」


どうやら女子にも評判がいいみたい。

参加型も企画してみようかと案にいれた。


「上手い人の真似したら」


「例えば?」


俺の後ろのロッカー付近で男子が喋っていた。

次の時間の用意をしないとなと思い、ロッカーに行こうと席を立ち上がった。

男子たちとすれ違った瞬間、


「blancさんとか?」


「ゲーム違うじゃん」


「いや、あの人のエイムさばきは真似した方がいいって」


俺は立ち止まってしまった。

彼らの話が止んで、


「坂峰、どうかしたか」


立ち止まったことが不思議に思ったのか

俺を心配してきた。


「ああ、すまん」


ロッカーから急いで荷物を取り出して席に着く。

座ったと同時に大きなため息が出てしまう。


流石にビックリした。

どちらの存在も知られてる人がいる想定はしていたが、こんな近くに居るとは思わなかった。

同一人物と分かってしまうリスクも上がった。

更に警戒しないとな、と心を引き締めた。


「海斗、人気だね~」


いつの間にか夜音が前の椅子に座っていた。

声を潜めているとは言ってもバレてないかヒヤヒヤする。


「ああ、そうだな」


人気が出て嫌な気分にはならないので、素直に認める。

だがこれからハードルが上がってしまうと心配になる。

次の配信は春陽さんとのコラボだ。

明日する予定で、2回目の配信だ。

公表するのは今日の夜で、皆がどんな反応をするのか楽しみだ。


「今日のご飯は私がおごるね」


「いや、それはいいよ」


別に今日外に食べに行く理由は無いので、家でいい。

それに夜音にはお金を大切にしてほしい。


「いや、今日は私がおごる!」


どうやらどうしても奢りたいらしい。

こうなった以上、彼女は引き下がらないので素直にさせてもらう。

分かった、と小さく首を縦に振ると、夜音は満足したような表情になった。


「じゃあ寿司だね」


「それはお前が食べたいだけだろ」


呆れながら夜音に言い返した。

まぁ彼女がこんな事をしてくれるのが珍しいので甘えておく。





普通に寿司はおいしく食べた

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