さくらちゃんと幼馴染みの日々
天王野苺
第1話 さくらちゃんと幼馴染みの出会い
その時、わたしは生後たったの1カ月ほどだった。
わたしのママとわたしの幼馴染みのママは昔からの友達で産まれたばっかりのわたしに会いに来てくれたそうだ。この世に生まれておめでとう~!の真のハッピーバースデーを祝いに。
わたしは3月31日生まれで幼馴染みは4月に1歳になったばかり。ベビーベッドに横たわりうにゃうにゃ~って手足を動かすだけのわたしと、仁王立ちで手に持ったバナナを握り潰しながらむっしゃむっしゃと食らう幼馴染みを見て、『この二人が同級生で机を並べるなんて嘘みたい‥さくらちゃんまだいもむしくらいしか動けないよ!』『自分でバナナ持って、生きようとしてんじゃん!さくらちゃんは100パー生かされてる状態なのに!』ってママは幼馴染みのママと笑い転げたらしい。
しっつれいな!
この話聞くたびにちっちゃい頃からわたしは地団駄を踏んで怒りを表明することにしている。
もう14歳だけどひさびさにやるよ!うらうら!
じだんだじだんだじだんだんだん!!
それはともかく。
幼馴染みはバナナを潰し終えるとよったよったとわたしのほうに歩みよった。なんと彼女は10カ月くらいから歩きだしたエリート赤ちゃんのだったそうだ。幼馴染みのママが抱っこしてわたしとご対面させたその時。
「ほら!さくらちゃんだよ~、かわいいねぇ~」
その時だった。
「‥さ‥く‥ら‥」
幼馴染みは初めてしゃべったのだ。
ママもパパも言ったことのなかった彼女が初めて言った言葉。
二人のママはびっくりして、それから歓声を上げた。
えーさくらちゃんの名前言った!?もう一回言ってごらん?ほーら、さ・く・ら・ちゃん!
なにー!ママが最初じゃないのー?ほら、マ・マ・って言ってごらん?
幼馴染みはわたしだけを見て口を開く。
「さ・く・ら‥」
わっ!と笑うママたちの声の後にこう続けた。
「ぬたまろ‥ここむいり‥」
ママたちの笑う声と、窓から入る春のひかりが眩しかったことを、なぜか覚えているような気がする。どちらもきらきらとはじけてわたしに降り注いでいた。
幼馴染みの黒い両目がこちらにじっと止まっているのも。
わたしは、幼馴染みに名前を呼ばれたその時に、ものごころがついたって気がしている。
まー誰も信じてくれないけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます