メルティ・メルティ・クロックタワー

籾ヶ谷榴萩

プロローグ

かちっ、かちっ、かちっ


 時計の針の動く音がリズムよく静寂に広がっては溶けていく。


かちっ、かちっ、かちっ


 僕はその音を聞きながら、暗闇で眼球を動かす。

 夜はいい。誰にでも平等だ。

 暗がりの中なら、みんな一緒だ。


かちっ、かちっ、かちっ


 こうやって一秒一秒が進む音を聞きながら、僕はこのまま一秒一秒を無駄に溶かしている。


でろっ、でろっ、でろっ


 ドロドロとした形を持ちながら、僕の時間は溶けていく。


かちっ、かちっ、かちっ


 時間って、固いんだろうか、柔らかいんだろうか。


かちっ、かちっ、かちっ


 まあ、どうだっていいや。

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