英雄には興味ないのでラスボスを目指します!
焦がしチョコ
第一章 魔人誕生編
第1話 目覚め、そして決意
目が覚めたら知らない天井だった。
まさか自分がこのセリフを言うことになるとは思わなかった。いや、実際は言ってないけど。
俺の最後の記憶は横断歩道を渡っていた記憶。そこに信号無視の車が突っ込んできて俺は引かれてお陀仏。なんとも悲しい最後だった。
そして、目が覚めたらこの部屋にいた。恐らくだが俺は異世界転生というものをしてしまったのだろう。
漫画や小説で数多く見てきたのだ、自分が同じ立場になっても案外冷静でいられている。
そんなことを考えていると部屋の扉が開き、一人の女性が入ってくる。
世間一般的にメイド服というものを着ているところを見るとこの家に仕えているのだろう。
部屋に入ってきた女性は俺に一礼して笑顔を向けて言った。
「おはようございます。お坊っちゃま」
★
さて、まずはこの世界での俺の名前から紹介するとしよう。
『カイン=ダーベル』
これが俺の名前だ。
歳は今年で5歳になる。
黒い髪に青い瞳、容姿は上の下。自分で言うのはなんだが割とかっこいい。
いや、そんなことはどうでもいい。
次はこの世界について説明を。
この世界には剣や魔法が存在するファンタジーな世界、時代感的には中世ヨーロッパといった感じだ。
世界には魔物が跋扈し、人と日夜争い続けているという。
そして、俺はそんな世界にダーベル伯爵家の長男として生を受けたという訳だ。
この世界の歴史書を閉じ、うーんと伸びをする。
この姿になってから早一週間が経ち、家にあった書物を読み漁って、この世界の常識やら歴史やら片っ端から調べていった。
自室の窓を空け、外の風を部屋へと招き入れる。
窓の外からは俺が住む町、王都システリアの街が見える。
ここは街だが耳を澄ませば小鳥のさえずりなども聞こえてくる、いい場所だ。
大きく息を吸い外の空気を取り込む、この世界の空気は俺が生きていた世界とは比べものにならないくらい澄んでいて癒される。
俺はこの街を見て、改めて決意する。
人々を守り、笑顔を守る人類の英雄に俺は……
ならないっ!!
俺が目指すのはこの世界のラスボス!魔王!邪神!そういった悪の権化!!
そう!俺は…、俺は…!
この世界の『ラスボス』になって見せる!!
★
小さい頃から特撮テレビが好きだった。高校生になっても見続けて、その中でずっと惹かれていたもの、それが悪役だ。
自らの理想や信念の為に命を懸けて戦う者達。それはヒーローにも言える事だろうがヒーローは悪役が出ればそれを倒すだけで具体的な目的など持っていない者がほとんどだった。世界平和だの皆の笑顔だのそんなフワっとしたものしか持っていなかった。
だが、悪役はどうだ?
自らの目的のために具体的な計画を立て、一つの目的のために自分の命すら懸ける。
少年時代の俺はそんな姿にひどく憧れた。友達とヒーローごっこをする時も進んで悪役を買って出た。
例え、悪役である彼らがやられると分かっていたとしても俺はやれる姿ですら憧れた。彼らは散る時ですら華を持っている。
だから、この世界に転生したと分かった時に俺は決めたのだ。この世界で最強のラスボスとなって人類と戦い、正義のヒーローが現れて俺を倒すその日まで俺は俺の理想のラスボスになって世界を敵に回して戦ってみせると!
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