暑すぎる道、冷たい女

広野ともき

第1話

 最近。ニュースでは毎日のように命に関わる危険な暑さです。できるだけ陽射しを避け、適切な冷房な使用をと言われる。


 適切な冷房使用、それは公共施設や公共の場で率先してやらないといけない。もしそうしなければ、今の悲惨な状態が起こるからだ……。


「暑すぎる……。死ぬ」


「……」


 夏休みが目前に迫る季節の学校から帰る電車の中。ちょうど帰宅ラッシュの最中。隣では大学で偶然再会した幼馴染の澤村さわむら瑞葉みずはは涼しい顔をしてスマホを見ていた。


 パタパタと俺は襟の部分を扇いで少しでも涼しくなろうと努力をするが、その努力も虚しく汗が額から落ちていく。


 人の隙間から見る窓の外はまだまだ明るい。夏だなー。暑いなー。冷房をもっと効かせてほしいなー。と思っていると橋りょうに入った。川の上に浮かぶ雲は大きくて、夕日に染まって幻想的な雰囲気を醸し出している。


 この暑ささえなければいい景色だなーとなるのだが、今はただただ暑さを助長するに過ぎない。


 橋きょうを抜けると住宅街に入りさっきまでの入道雲が見えなくなる。白い壁が流れていく。すると電車にブレーキがかかりはじめ、ほんの少し電車が揺れて人も揺れる。


 おっと。


 バランスを崩して澤村に寄りかかる形になる。


「すまんすまん」


「大丈夫」


 すぐにスマホに目を戻した。


”河井、河井。河内方面へはお乗り換えください”


 電車は止まり、左のドアから出ていく人の流れに沿って改札を出る。後ろには澤村が付いてきていた。


 外に出ると昼の陽射しは無くなりはしたがまだまだ暑さは地上に張り付いていた。ムワっとした湿気を幾分と含んだ空気がまとわりついて非常に不快だ。


「ホント暑いな」


「暑すぎるよね。どうにかなっちゃいそう」


「マジそれな」


 片手に持っているスマホは本体温度が上昇しすぎたため一部機能を制限していますと出ていた。

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暑すぎる道、冷たい女 広野ともき @sizen

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