第12話 異能の目覚め
「頼み事が、『異界』に囚われた人を救出する……というのは分かりました。そもそも僕たちも相原さんを助けるためにここに来たから、目的は同じなんですけど。でも、僕たちには特別な力なんてありませんし、一体どうすれば良いのか……。『適性』というのはそれに関係してるんですよね?」
巫さんの頼み事について、出来るだけ協力はしたいと思うけど、その点が気がかりだった。
果たして、僕達が持つ『適性』とは一体何なのか?
その問いについては、ゼアルさんが答えてくれる。
「俺が『適性』と言っているのは、つまりだ……お前たちは異界への適応力が高い、ということだ」
「異界への適応力……?」
まだ今いちピンとこない僕は疑問を呟く。
「そもそも、最初にあなた達がこの場所にやって来れたのも、それが理由よ」
ゼアルさんの言葉を引き継いで、巫さんが続けて説明する。
「適応力のある俺たちだからこそ、この『
巫さんの説明を聞いて、自らに言い聞かせるようにしながら、レンヤは呟いた。
そして、ゼアルさんも巫さんも、それを肯定するように頷く。
「そういうこった。更に言えば……カナメや俺の『護り』があったとはいえ、幽世・異界から現界に戻り、再びまたここにやってくる……なんてのはそうそう出来る事では無え。その事実こそが、お前たちの適応力の高さを示している」
……って、昨日はそんなに危うかったのか。
僕達の『適応力』とやらが高くなかったら、未だに迷ってたかもしれないんだ。
そう思うとゾッとする。
「それともう一つ。異界への適応力が高いということは、異界の者との親和性も高いということ」
「……もしかして、ファナちゃんがユウキに懐いてるのは、それが理由?」
異界の者との親和性……
確かにファナは『異界の者』だけど。
でも、妖精さんはあんなに沢山いたのに、ついてきたのは彼女だけだ。
「それは理由の一つね。あとは、その子とユウキさんの相性自体が良いのでしょう」
相性……要するに僕を好きになってくれたって事だよね。
何だか嬉しいなぁ……
「ユウキ!スキ!」
「……ふへ」
「あらあら……顔がだらしなくなってるわよ、ユウキ」
「あのクールな先輩が……」
「貴重だな」
……ん?
後輩ふたりのコメントがおかしいぞ?
クール?
僕が?
「……一年生の間で、僕はクールキャラになってるの?」
「ええ。クールでミステリアス……って言われてますよ」
なにそれ。
と言うかさっきも思ったけど、何で僕が後輩たちの間で話題になってるの?
「はっはっは!!クールでミステリアスか!傑作だな!」
「あははは!!無口で無表情でぼ〜っとしてるだけよねぇ……!」
レンヤとスミカがお腹を抱えて笑いながら言う。
……キミたち、失礼じゃないか?
「と、ともかく。僕達に適性があるのは分かりました。あとは、具体的にどうすれば良いのか……」
「それもそうだけど、『異界』には危険もあるのよね。私はそれが心配なんだけど」
僕が言い終わる前にスミカがそう言うが、たしかにそれは心配だね……
自慢じゃないけど、僕は強くないから。
得体のしれない……それこそ漫画とかゲームに出てくるようなモンスターが出てきても、逃げるくらいしか出来ないと思う。
「それなら、俺が何とかしてやる」
「ゼアルさん、良いんですか?あなた程の力を持ってると、影響が……」
「いや、俺が直接力を貸すわけじゃねぇ。……ちょっと待ってろ」
そう言ってゼアルさんは目を閉じて集中し始めた。
『……我、赤竜王ゼアルの名において、汝らの秘めたる力をここに呼び醒まさん』
彼が唱える言葉は聞いたことがないもの。
でも、何故かその意味は分かった。
そしてゼアルさんの身体から淡い光が発せられ……その光は僕達を包み込む。
「これ……は……?」
「なに……?身体の奥から……」
レンヤとスミカから驚きの声が上がる。
その理由は僕にも分かる。
たぶん、僕と同じような現象が起こっているのだろう。
お腹のあたりから生じた熱が、血流のように全身を巡り力が漲る。
身体を作り変えられるような感覚を覚えるが、そこに恐怖はなく、ただ高揚感に包まれる。
「おぅ、やっぱり俺が見込んでいた通りだな」
「彼らにも、『異能』の力が……?」
「せ、先輩たち……!」
「何が起きてるんだ!?」
ゼアルさんや巫さん、後輩二人の話し声が聞こえてくるけど、頭の中に入ってこない……
そうしている間にも、自分の存在そのものが変わるような感覚が続いている。
「大丈夫だ、心配いらねえ。あいつらの秘められた才能を叩き起こしただけだ。……さあ、どんな力に目覚めるかな?」
ゼアルさんが笑いながらそんな事を言う。
一体……僕たちはどうなってしまうんだ?
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