〇と▢の方程式

菜乃花 月

〇と▢の方程式

『〇と□の方程式』


【登場人物】

🚹丸山 彰(まるやま あきら):みんなから人気の数学教師。ある生徒が気になっている。通称まる先生

🚹島崎 暖(しまざき だん):気持ちに鈍感な高校二年生。

🚺片岡 月乃(かたおか つきの):暖の事が好きな高校二年生。

🚺黒木 心寧(くろき ここね):保健室の先生。自分に自信があり、まる先生を狙っている。通称ここ先生。


上演時間 約60分

同性愛、R15の性的描写があります



ーここから本編ー


丸山:ただの生徒だと思ってた


月乃:ただのクラスメイトだと思ってた


心寧:ただの同期だと思ってた


暖:ただの先生だと思ってた。でもいつからか


丸山:気になって


月乃:好きになって


心寧:目が離せなくて


暖:特別になっていた


~間~


~教室~


丸山:「よぉしお前ら、今回のテスト返すぞー。赤点の人は俺と一緒に楽しい楽しい補習だ」


月乃:「えー先生、赤点いるんですかー?」


丸山:「そうだ。簡単なテストだったはずなのに数名いて先生は悲しいよ」


暖:「数名か・・・」


月乃:「暖くんは絶対赤点だね」


暖:「そんなことは」


丸山:「島崎 暖。テスト取りに来い」


暖:「あっはい」


丸山:「はい、赤点二人目だ」


暖:「あっれー、結構数学頑張ったんだけどなー」


丸山:「それでも赤点は赤点だ」


暖:「・・・はい」


~間~


~購買前~


月乃:「さーてお昼は何食べようかなー。うっわ購買めっちゃ混んでる」


暖:「僕はお弁当あるし飲み物だけでいいや。」


月乃:「あたしはデザート買いたいな。あ、そういや、やっぱり赤点だったじゃん」


暖:「うるさい」


月乃:「他の教科はできるのにね」


暖:「一年の時は数学もできてたんだけどなぁ」


丸山:「それは俺の教え方が悪いと言いたいのかな、赤点常習犯(暖の頬を引っ張る)」


暖:「まりゅせぇんしぇ」


月乃:「まる先生の授業はわかりやすいですよ!」


丸山:「月乃はいい子だな。それに比べてこの悪ガキときたら」


暖:「せぇんしぇ、はにゃして(先生、離して)」


丸山:「(手を放す)二回連続で赤点取りやがって。俺と一緒に補習受けたいのか?」


暖:「そういうわけじゃ・・・」


月乃:「違うの?」


暖:「え?」


月乃:「ほら、まる先生が担当するまでは数学だけじゃなくて、他の教科でも赤点なんて取ったことなかったじゃん。そんな暖くんが二回も数学で赤点取るなんておかしいからイケメンまる先生に惚れたのかなって思ってた」


暖:「確かにまる先生はイケメンだと思うけど惚れたわけじゃないよ」


丸山:「ははっ女子にはよく言われるが、男子にイケメンって言われてるとなんか嬉しいな。ま、でも赤点を取るよりは100点を取ってくれた方が俺はありがたいけどな」


暖:「・・・そうですよね」


月乃:「ところでまる先生もお昼買いに来たんですか?」


丸山:「いや、弁当はあるんだ。お前に用があって来たんだよ、暖くん」


暖:「僕にですか?」


丸山:「そうだ。補習の日程が出たから渡しとく。教室に貼っといてくれ」


暖:「あー、わかりました」


丸山:「じゃあ、俺は昼飯食いに職員室戻るわ」


月乃:「あっあたしも早く買わなきゃ。食べたいもんなくなっちゃう。暖くんちょっと待ってて」


暖:「うん、わかった。

(職員室に戻るまる先生を見ながら)かっこいいなぁ、まる先生」


~間~


~職員室~


丸山:「ごちそうさまでした」


心寧:「まる先生~」


丸山:「あ、ここ先生ちょうどよかった。食べ終わったからお礼を言いに行こうと思ったんだよ」


心寧:「ふふ、そんな気がして来たんですよ」


丸山:「お弁当おいしかったよ。弁当箱は洗って返すね」


心寧:「そのままでいいですよ。もしよかったら明日も作ってきましょうか」


丸山:「え、それは申し訳ないよ」


心寧:「一人分も二人分も変わりませんから気にしないでください。まる先生が良ければですけどね」


丸山:「じゃあ、お願いしようかな」


心寧:「んふふ、りょーかいです。明日も作ってきますね」


丸山:「今度お礼に何か奢るよ」


心寧:「やった~!楽しみにしてますね」


月乃:「失礼します。ここ先生今よろしいでしょうか?」


心寧:「つきちゃん。今そっち行くね。じゃあまる先生、午後も頑張りましょうね」


丸山:「はい」


~間~


~教室で補習を受ける暖~


丸山:「ここでXを求めたいからこの式になるんだ。そして出てきた答えがそのまま問題の答えになる。キリがいいから今日はここまでにするか。明日もあるから忘れずに来いよ。お疲れ様」


~他の補習の生徒はすぐに帰る支度をして教室から出ていくが、暖はそのまま教室に残っている~


丸山:「補習終わったけど帰らないのか」


暖:「あーえっとその・・・」


丸山:「どうした」


暖:「あの、もう少し教えてほしいって言ったら怒りますか」


丸山:「は?」


暖:「やっぱりだめですよねすぐ帰ります」


丸山:「いいよ」


暖:「え?」


丸山:「生徒が勉強したいって言ってるのに怒るわけないだろ。六時まででいいか」


暖:「はい!ありがとうございます!」


~間~


~職員室~


心寧:「お疲れ様です、まる先生。遅くまで補習ですか?」


丸山:「補習は五時には終わってたんだけど、一人もう少し勉強したいってこの時間までやってたんだ」


心寧:「へぇ勉強熱心なんですね」


丸山:「まぁ、そいつ二回連続で数学だけ赤点取ってるけどな」


心寧:「数学は難しいですからね。点Pが動く意味とかわかりませんもん」


丸山:「それを求めるのがいいのに」


心寧:「どこがですか。学生の頃、動くな~止まってて~!って思ってました」


丸山:「生徒からもよくすごい顔で言われるよ」


心寧:「みんな思ってることなんですよ。

あっそうだ、まる先生次の土曜お時間ありますか?良ければ一緒にお出かけしません」


丸山:「あーテストも終わったし気分転換にいいね」


心寧:「良かった~詳細は後で連絡しますね。それでは私はお先に失礼します」


丸山:「了解。お疲れさまでした」


心寧:「お疲れ様でした」


~心寧職員室から出ていく~


丸山:「暖くん明日も残るかな。せっかくならあいつ用の問題でも作るか」


~間~


~教室~


月乃:「何してんの」


暖:「数学の勉強」


月乃:「補習分のやつ?」


暖:「そうそう」


月乃:「大変だね~」


暖:「そうでもないよ。まる先生の教え方がわかりやすいから理解できて楽しい」


月乃:「わかりやすいし、イケメンだしまる先生最高だよね」


暖:「それな」


月乃:「・・・ねぇ。なんで赤点取ったの」


暖:「なんでって勉強不足かな」


月乃:「まる先生の授業真面目に受けてれば、点数は低くても赤点は取らないと思うんだよね」


暖:「んー、まる先生の授業受けてるときは、内容が入ってこないんだよね。ちゃんと受けてるつもりでも先生の表情を見てるとあっという間に終わるんだ」


月乃:「なにそれ恋する乙女じゃん」


暖:「え、そうかな」


月乃:「そうだよ。授業よりも先生見ることに集中してるのは恋の証だよ」


暖:「恋ではないと思うんだけど」


月乃:「認めたくないだけじゃないの~」


暖:「男の先生に男の僕が恋するわけないじゃん」


月乃:「わからないよ~男は女だけを好きになるなんて考え古いからね。今は好きになった人が恋愛対象の時代だよ。先生ってのはちょっとグレーゾーンだけど」


暖:「仮に僕が恋したとしても、まる先生が僕のことを好きになるわけないからなぁ」


月乃:「そこはアプローチすればなんとかなるんじゃない。ガンガン行こう」


暖:「そもそも僕が恋してる前提で進むのがおかしいから。僕は先生としてまる先生が好きなのであって恋じゃない」


月乃:「どうかね~うちは恋だとしても応援するよ」


暖:「だから違うって。・・・あっ、そろそろ補習行くね」


月乃:「お、頑張って」


暖:「うん、頑張る。じゃあねつーちゃん」


月乃:「じゃーねー暖くん、また明日―」


~教室から出ていく暖を見送る月乃~


月乃:「・・・応援するよってバカだなぁあたし」


~間~


~昨日と同じ教室で補習を受ける暖~


丸山:「今日も残って勉強する?」


暖:「いいですか?」


丸山:「いいよ」


暖:「えへへ、やったぁ」


丸山:「っ!可愛いな・・・」


暖:「え?」


丸山:「なんでもない。残ると思って暖くん用のプリント作ってきたんだ。今日はそれをやろう」


暖:「ホントですか!ありがとうございます」


丸山:「一問目からやっていこうか」


暖:「はい!」


~間~


丸山:「お、ちゃんと解けてるじゃん。全問正解だ」


~丸山、暖の頭をわしゃわしゃする~


暖:「わっまる先生」


丸山:「この調子なら追試は大丈夫そうだな」


暖:「・・・っ!」


~ニッコリと笑う丸山にドキッとする暖。思わず目をそらす~


丸山:「どうした?顔が赤いな」


暖:「・・・まる先生がかっこいいからですよ」


丸山:「そうか?俺はキスしたいくらい暖くんが可愛いと思うけどな」


暖:「はぁ?!」


~驚いて顔をあげた暖の額に優しくキスをする丸山~


暖:「!??!」


丸山:「ごめん、我慢できなかった」


暖:「ま、まる先生」


丸山:「もう六時だ。帰る時間だぞ」


暖:「あ・・・はい・・・。あ、ありがとうございました。さようなら」


丸山:「はい、さようなら」


~暖、教室から出ていく~


丸山:「あーーーやっちゃった。勢いでキスしちゃった。この気持ちはあいつが卒業するまでしまっておこうと思ったのに俺は・・・。誰にも見られてないよな」


月乃:「まる先生」


丸山:「っ!?月乃か。まだ帰ってないのか」


月乃:「忘れ物があって取りに来たんです。そしたらまる先生を見かけたから声かけちゃいました」


丸山:「そ、そうか」


月乃:「・・・まる先生」


丸山:「なんだ」


月乃:「ここ先生がさっきまる先生を探してましたよ。今なら保健室にいるんじゃないですかね」


丸山:「ありがとう、今向かうよ。忘れ物取ったらすぐに帰れよ」


月乃:「はい!さよーならまる先生」


丸山:「さよなら」


~教室から出て保健室に向かう丸山~

~それを眺める月乃~


月乃:「・・・」


~間~


~保健室~


心寧:「あっまる先生お疲れ様です!」


丸山:「お疲れ」


心寧:「ここに来たってことはつきちゃんに会ったんですね」


丸山:「たまたまな。何か急ぎの連絡だった?」


心寧:「急ぎではないんですけど明日休日じゃないですか。だから予定を連絡しようと思ってたんです」


丸山:「あぁ、なるほど」


心寧:「明日、十一時にマコ駅の改札前で集合でどうですか?お昼とか行きたいとこあります?なければ私の方で勝手に決めちゃいますよ」


丸山:「俺は特にないかな」


心寧:「わかりました。じゃあ明日楽しみにしてますね!」


~間~


暖:「まる先生、僕、100点取れました!」


丸山:「俺が採点したから知ってるよ。おめでとう暖くん」


暖:「まる先生がわかりやすく教えてくれたからですよ!それで一つお願いがあるんですけど・・・」


丸山:「お願い?」


暖:「ぼ、僕のことめちゃくちゃにしてくれませんか」


丸山:「っ暖くんそれって」


暖:「生徒である僕がこんなこと言うのダメだってわかってます。でも、でも僕まる先生にならどうされてもいいかなって」


丸山:「・・・いいのか」


暖:「・・・はい」


丸山:「暖・・・(キスをする)」


暖:「んっ、はぁ、まる、せんせ・・・」


丸山:「好きだ」


暖:「僕もです」


丸山:「はぁー。そんな顔されたら歯止めきかなくなるだろ」


暖:「遠慮しないでください。僕は先生と・・・一つになりたい」


丸山:「・・・辛かったら言えよ」


暖:「っ!ぁあ・・・んん・・・はぁっ」


丸山:「気持ちいいか」


暖:「ぅぁっ、きも、ちいい・・・!」


丸山:「暖・・・」


暖:「せんせぇ・・・すきっですっ!」


丸山:「俺もだ・・・暖っ」


暖:「せんせっあぁ・・・!」


丸山:「(ガバッと起き上がる)・・・っ!はぁ、はぁ・・・夢か・・・。

はぁー俺、最低だな、教師としても大人としても失格だ。

・・・今日はここ先生と出かけるんだった。準備しなきゃ」


~間~


~駅前。先に待ち合わせ場所についている丸山~


心寧:「まる先生~お待たせしました!」


丸山:「こんにちはここ先生、俺も今来たところだよ」


心寧:「ふふ、さすがまる先生」


丸山:「なにが?」


心寧:「なんでもないです」


丸山:「先生はいつも綺麗だけど今日は一段と素敵だね」


心寧:「わぁ、イケメンはどこまでもイケメンですね。今日はまる先生のためにオシャレしてきたんです。ふふ、先生もかっこいいですね」


丸山:「はは、ありがとう」


心寧:「じゃあお昼食べに行きましょうか」


~間~


~カフェ~


暖:「突然呼び出してごめんね」


月乃:「暇だったからいいよ。暖くんが呼びだすなんて珍しいね」


暖:「うん、ちょっとね」


月乃:「えーなになに」


暖:「あのさ」


月乃:「うん」


暖:「・・・つーちゃんってキスされたことある?」


月乃:「まぁ、一応あるかな」


暖:「ドキドキした?」


月乃:「そりゃあ、したよ」


暖:「・・・そうだよね」


月乃:「キスされたの?」


暖:「さ、されてない」


月乃:「・・・キスされたの?まる先生に」


暖:「っ!ちがっ」


月乃:「されたんだね」


暖:「・・・」


月乃:「はぁ。で、なんであたしを呼んだの」


暖:「・・・一人でいるとおかしくなりそうで」


月乃:「ふーん」


暖:「キスされたのを思い出すとドキドキするんだ。・・・これってつーちゃんが言った通り恋、なのかな」


月乃:「じゃあ恋かどうか教えてあげようか」


暖:「え?」


~暖の頬に軽くキスをする月乃~


暖:「・・・へ?」


月乃:「私とまる先生、どっちがドキドキした」


暖:「・・・えっと」


月乃:「もし同じくらいならそれは恋じゃない。でも、暖くんは同じじゃないでしょ」


暖:「・・・」


月乃:「ここまでやってあげたのに気付かないとか言わないでよ?あたし結構我慢してるんだから」


暖:「どういうこと?」


月乃:「・・・はぁー、本当に暖くんは鈍感だよね」


暖:「えっ?」


月乃:「あーもうあたしのことはいいの。暖くんがまる先生をどう思ってるかが大事なの」


暖:「僕は・・・まる先生のこと・・・」


~ふと、外にいる丸山と心寧を見つける暖~


暖:「・・・ねぇ、あれって」


月乃:「ん?・・・あっまる先生とここ先生だ」


暖:「・・・」


月乃:「暖くん?」


暖:「・・・っ」


~何も言わず席から立ちあがり、カフェの外へ走り出す暖~


月乃:「あっ、ちょっと待って暖くん!もうー。すみません、お会計お願いします!ありがとうございますっ、暖くん待って!!」


~一瞬丸山と心寧を追うか考えるが暖を追いかける月乃~


~カフェの向かいを歩く二人~


心寧:「パスタ美味しかったですね」


丸山:「そうだね。・・・ん?向かいのカフェから出てきたのって月乃?」


心寧:「ほんとだ。すごい勢いで出てきたけど急いでるのかな」


月乃:「暖くん待って!!」


丸山:「っ!暖くん・・・」


心寧:「どうしました?まる先生」


丸山:「・・・」


~丸山、追いかけるか悩み一歩暖たちが向かった方に踏み出そうとすると、心寧が丸山の腕を掴む~


心寧:「まるせんせ、今日は休日です。生徒のことは気にせずに楽しみませんか」


丸山:「でも、俺は」


心寧:「今日私、まる先生と一緒に過ごせるのを楽しみにしてたんです。・・・まる先生は私といるより暖くんが気になりますか」


丸山:「それは」


心寧:「生徒想いなのはいいですけど、たまには先生というしがらみから外れましょう。この後行く場所も決めてます。だめ・・・ですか?」


丸山:「・・・っ、行こうか」


心寧:「はいっ」


~嬉しそうに歩き出す心寧と複雑な気持ちで歩き出す丸山~


~がむしゃらに走る暖~


暖:「はぁっ、はぁっ!」


暖M:「なんで僕は先生たちが楽しそうに歩いてるだけで、あの場から逃げ出したんだろう。なんで僕はこんなに二人の笑顔が頭から離れないんだろう。なんで僕は


こんなに胸が苦しんだろう」


月乃:「暖くんっ!!!」


暖:「あっ、つーちゃん・・・」


~背後から聞こえた声に思わず立ち止まる暖~


月乃:「ぜぇっはぁっ、やっと追いついた・・・」


暖:「なんで追いかけてくるんだよ。今は一人にしてほしい」


月乃:「できるわけないでしょバカっ」


暖:「なんで」


月乃:「暖くんのことが好きだからだよ!!!」


暖:「は?」


月乃:「こんな形で言うなんて思ってなかったし、結果も見えてるのが最悪だけど・・・。ここまでやらないと暖くん気付かないんだもん」


暖:「今なんて言った」


月乃:「暖くんのことが好きって言った」


暖:「嘘・・・だよね」


月乃:「嘘に聞こえたの?だったらちゃんと言うよ。あたしは暖くんの誰にでも優しいところ、話を聞いてくれるところ、鈍感なところとか全部が好きです。付き合ってください」


暖:「・・・」


月乃:「・・・返事は」


暖:「えっと・・・その・・・」


月乃:「ははっ、本当に優しいね暖くん。それともまだ認めたくないのかな」


暖:「僕は」


月乃:「思った言葉でいいんだよ。フッていいんだよ。変に気を使われる方が傷つくから」


暖:「僕は・・・つーちゃんとは付き合えない」


月乃:「うん、知ってた」


暖:「ごめん」


月乃:「ほんっとだよ。ずっとあたしの心ズタボロだったんだから」


暖:「・・・ごめん」


月乃:「・・・もういいよ。最初から知ってたし。

ねぇ、一つ聞いていい?」


暖;「なに」


月乃:「暖くんってさ、好きな人いるの」


暖:「僕は・・・」


月乃:「うん」


暖M:「なんであの場から逃げ出したか、なんで胸が苦しかったのか。今ならわかる。僕はいつの間にかあの人を好きになっていたんだ」


暖:「まる先生が好きだ」


月乃:「・・・やっと認めたか。遅いんだよバカ」


暖:「ごめん」


月乃:「あはは、そう言いながらスッキリした顔してるの腹立つ。

さ、あたしが手伝えるのはここまで。あとは暖くんに任せるからね」


暖:「うん、わかった」


月乃:「ねぇ!今まであたしが頑張ったご褒美にクレープ奢ってよ。高いやつがいい」


暖:「いいよ」


月乃:「やった~!よし、行こっか」


暖:「つーちゃん」


月乃:「ん?」


暖:「ありがとうね」


月乃:「・・・どういたしまして」


~間~


~居酒屋~


丸山:「ここ先生飲みすぎだよ」


心寧:「だぁって、まる先生が楽しくなさそうなんだもん」


丸山:「俺は楽しいよ」


心寧:「うっそだー!お昼食べた後から全部返事がてきとーだった!」


丸山:「そんなことない」


心寧:「そんなことある!まる先生は私といるの楽しくないの?」


丸山:「楽しいよ」


心寧:「じゃあなんで私ばっかり飲んでるの!」


丸山:「俺もちゃんと飲んでるって。ここ先生がハイペースなだけだよ。さすがに飲みすぎだよ」


心寧:「(遮って)暖くん」


丸山:「っ」


心寧:「わーわかりやすい反応。暖くんって言葉聞いてからずっと上の空だよねーまるせんせ」


丸山:「それは」


心寧:「まさかー、暖くんのこと生徒以外の目で見てたりしてー?」


丸山:「・・・」


心寧:「あーその顔は好きになっちゃったんだー。ダメだよー先生が生徒を好きになっちゃあ。私たち教師は生徒のことをそれ以上の目で見ちゃいけない。しかも男の子に恋するなんて先生も罪な人だねー」


丸山:「わかってる」


心寧:「まるせんせはどうしたいのー?告白するの?」


丸山:「告白なんてしないよ。このまま生徒と先生の関係を続ける」


心寧:「できるの?」


丸山:「(今朝の夢を思い出しつつ)・・・できるよ」


心寧:「そっかー。私はできないと思うけどなー。だってまるせんせ今すごい苦しそうだもん」


丸山:「苦しいよ。でも、教師として線引きはちゃんとする」


心寧:「もういっそ諦めたら?」


丸山:「それはできない」


心寧:「どうして」


丸山:「もう、戻れそうにないから」


心寧:「へぇー戻れないってことは暖くんに何かしたんだ。我慢できてないじゃーん」


丸山:「うっ」


心寧:「でも知ってる?暖くん付き合ってる人いるんだよ」


丸山:「えっ」


心寧:「つきちゃん」


丸山:「・・・あぁ」


心寧:「あの二人結構長いんだって。喧嘩することもなさそうだし、お似合いだよねー」


丸山:「そうだね・・・」


心寧:「良かったね!これで苦しみから解放されるよ!今日は祝い酒だーー」


丸山:「・・・」


心寧:「・・・先生辛そうだね」


丸山:「別に」


心寧:「私が楽にしてあげるよ」


丸山:「はぁ?」


心寧:「暖くんのこと忘れさせるくらい私でいっぱいにしてあげる」


~間~


~教室~


月乃:「追試お疲れ様―。何点だったの」


暖:「じゃーん100点」


月乃:「お、すごいじゃん」


暖:「ちゃんと聞くと簡単だったからね」


月乃:「つまりテスト前はまる先生に夢中で授業どころじゃなかったと」


暖:「そうなりますね」


月乃:「素直でよろしい」


暖:「昼休みにまる先生に感謝の気持ちを伝えてくるよ」


月乃:「告白はしないの?」


暖:「し、しないよ!」


月乃:「そっかー。勢いで告白して来ればいいのに」


暖:「僕は今のままでいいんだよ。付き合いたいとか言っても迷惑だろうし」


月乃:「どうだろうね」


暖:「それにまる先生イケメンだから告白したらいろんな人に僕が刺されそう」


月乃:「あーそれは否定できないわ」


暖:「でしょ。だからこのままでいいんだよ」


月乃:「そうだね」


~昼休み、職員室~


暖:「失礼します。まる先生」


丸山:「ん、どうした暖くん」


暖:「先生、僕、100点取れました!」


丸山:「俺が採点したから知ってるよ。よく頑張ったね暖くん」


暖:「まる先生がわかりやすく教えてくれたからですよ。あの」


丸山:「なんだ?」


暖:「数学って楽しいですね。まる先生のおかげで好きになりました。ありがとうございます」


丸山:「それはよかった。次のテストは赤点取るなよ」


暖:「はい!では、失礼します」


丸山:「なぁ、暖くん」


暖:「なんですか?」


丸山:「お前さ、・・・好きな人とかいる?」


暖:「へ?」


丸山:「あ、いや、なんでもない」


暖:「いますよ。すぐ近くに」


丸山:「っそうか」


暖:「失礼します」


~職員室を出る暖~


丸山:「・・・はー自爆した。やっぱり暖くんはいつも近くにいる月乃が好きなんだ」


~職員室から出て教室に戻ろうとする暖~


暖:「先生の前で好きな人いるって言っちゃったー穴があったら入りたい。(誰かとぶつかる)わっ」


心寧:「おっと、よそ見してたら危ないよって暖くんじゃない」


暖:「ここ先生」


心寧:「どうしたの?暖くんがぼーっとしてるなんて珍しい」


暖:「あーちょっと色々あって」


心寧:「私でよければ相談に乗るよ?」


暖:「ありがとうございます。でも、大丈夫です」


心寧:「そう?私よりも相談相手にぴったりの人がいるのかな」


暖:「いえ、ここ先生のお時間を取らせるほどの悩みじゃないってことですよ」


心寧:「それならいいんだけど。もし困ったことがあればいつでも保健室に来てね」


暖:「はい」


~購買から戻ってきた月乃が合流する~


月乃:「あれ、ここ先生と暖くんだ。珍しい組み合わせ」


心寧:「つきちゃんこんにちは」


月乃:「こんにちはここ先生」


心寧:「暖くん悩み事あるんだって。私には話してくれないみたいだからつきちゃんが聞いてあげてね」


月乃:「?はい。え、なんかまる先生のとこ行ってやらかしたの?」


暖:「まぁやらかした・・・かな」


月乃:「おっ後でじっくり聞くわ」


心寧:「まる先生?」


暖:「さっき数学の追試で100点取れたから感謝を伝えに行ったんです。そ、それだけですよ」


月乃:「(小声)さっきやらかしたって言ったじゃん」


暖:「(小声)う、うるさい」


心寧:「んふふ、本当に何もなかったか、ずっと隠れてるまる先生に聞いてみようか」


暖:「え?」


心寧:「聞いてるんでしょまる先生。盗み聞きなんてよくないですよ」


丸山:「はは・・・いつからバレてたのかな」


心寧:「職員室から出た時からずっと見えてましたよ」


丸山:「それは恥ずかしいな」


暖:「まる先生・・・」


丸山:「・・・」


心寧:「ねぇまる先生ぇ、暖くんと何かあったんですか?」


丸山:「な、何もないよ」


月乃:「まる先生に近くないですかーここ先生」


心寧:「これくらい普通ですよねーまるせんせっ」


丸山:「うん」


月乃:「・・・。行こう暖くん」


暖:「わっ、つーちゃん!?」


~強引に暖の腕を引っ張り教室に向かう~


心寧:「本当に仲がいいですねーあの二人」


丸山:「そうだね」


心寧:「あ、お昼一緒に食べませんか?」


丸山:「いいよ」


心寧:「わ~い」


~間~


~月乃の部屋~


月乃:「(家族に向かって)バイト行ってきまーす。

あとで暖くんに連絡・・・やめよう。任せるって決めたんだ。先生と生徒のままでいいなんて言ってたけど、このままだとここ先生にまる先生取られちゃうよ。それでいいの暖くん」


~暖の部屋~


暖:「ここ先生とまる先生距離近かったな。先生同士ならあれくらいが普通なのかな。・・・もやもやする。僕もあんな風に話したい。ここ先生だけずるい。こんな気持ち初めてだ。・・・つーちゃんは頑張ってくれたんだ。僕も明日気持ち伝えよう」


~心寧の部屋~


心寧:「まる先生が暖くんを好きなのは意外だったけど、そのおかげで予定より早くまる先生が私のものになりそうね。ふふ、暖くんに感謝しなきゃ。そろそろ告白しても良いころ合いになったわ。告白して付き合うことになれば学校一イケメンの彼女になれるなんて最高よね。あはは」


~仕事終わり、最寄り駅に向かう丸山~


丸山:「お疲れさまでした。お先に失礼します。


(歩きながら)なんで好きな人いるなんて聞いたんだろう。苦しくなるの自分なのに。教師が生徒に恋心を抱くなんて間違ってることは俺が一番わかってる。もういっそここ先生と付き合った方が楽なのかな」


月乃:「あっまる先生」


丸山:「月乃。何してんだこんな時間に」


月乃:「バイト帰りです。・・・ねぇ先生、せっかくなので少しお話しませんか」


丸山:「いいよ」


月乃:「ありがとうございます。回りくどいのは嫌なので単刀直入に聞きますね。まる先生とここ先生はお付き合いされてるんですか」


丸山:「してないよ。でも」


月乃:「でも?」


丸山:「付き合おうと思ってる」


月乃:「・・・暖くんのことはいいんですか」


丸山:「なんでそこで暖くんが出てくるんだよ」


月乃:「先生、暖くんが好きなんでしょ。私見てたんですよ。キスしたの」


丸山:「あの時か・・・」


月乃:「好きな人がいるのに別の人と付き合うってそれでいいんですか」


丸山:「でも、暖くんは月乃と付き合ってるんだろ」


月乃:「え?」


丸山:「え、違うのか」


月乃:「誰情報ですか。あーここ先生か。

私、暖くんは付き合ってないです。むしろ私フラれてます」


丸山:「えぇ!そうなの」


月乃:「そうですよ。暖くんには好きな人がいるんです」


丸山:「月乃が好きな人じゃないなら誰なんだ」


月乃:「ここにも鈍感男がいたか・・・」


丸山:「何か言ったか?」


月乃:「何でもないです。まぁ、一つ言えることはちゃんと好きな人とくっついてください。そうじゃないとフラれた私が報われませんので」


丸山:「でも、教師と生徒でしかも男同士だぞ。付き合えるわけないだろ。だったらここ先生と付き合った方がいいと思うんだ」


月乃:「それで本当にまる先生はいいんですか。好きの気持ちを誤魔化して付き合うんですか。好きになったら年の差も性別も関係ないですよ」


丸山:「そう言われても・・・。なぁ暖くんの好きな人って誰なんだ」


月乃:「それは教えません。でも、素直になった方がいいですよまる先生」


丸山:「素直・・・」


月乃:「私からはもう言うことはないです。あとはまる先生と暖くん次第です」


丸山:「俺次第?」


月乃:「好きな人を優先するか、逃げるかは自分で決めてください。では、さようならまる先生」


~帰る月乃~


丸山:「好きな人を優先か逃げるか・・・そんなの決まってるだろ、もう迷うのはやめよう。(ある人に電話をかける)もしもし」


~間~


~次の日の放課後。職員室~


暖:「失礼します。まる先生」


丸山:「どうした暖くん」


暖:「今からお時間ありますか」


丸山:「あるけど、何かあった?」


暖:「一緒に来てもらえませんか」


丸山:「わかった」


暖:「ありがとうございます」


~教室~


丸山:「この教室に来るのは補習以来か」


暖:「そうです。まる先生と二人で残ったのは僕にとって大切な時間です」


丸山:「・・・あの時は突然キスとかしてごめんね」


暖:「嬉しかったですよ。すごくドキドキしました。むしろあのキスがあったから、僕は自分の気持ちに気付けました」


丸山:「・・・そう」


暖:「まる先生、伝えたいことがあるんです」


丸山:「なに?」


暖:「僕、まる先生のことが好きです」


丸山:「え?」


暖:「先生としてではなく一人の男として好きです。こんなこと言うのも変だとは思うんですけど、僕と付き合ってくれませんか」


丸山:「・・・っ」


暖:「気持ちに気付いても生徒と教師のままでいいと思ってました。でも、昨日のここ先生の距離感を見たらずるいなって思ったんです。生徒でいたくないって思ったんです。もっと色んなまる先生がみたくなったんです。だから」


丸山:「いいのか。教師と生徒で男同士。それだけで普通じゃないんだぞ」


暖:「好きになった人が恋愛対象って友達が言ってました。だから男とか先生とか関係ないんです」


丸山:「はぁー、よかった」


暖:「まる先生?」


丸山:「実はさ、昨日ここ先生に電話して、俺なりにけじめをつけたんだ。・・・暖くん」


暖:「はい」


~暖にゆっくり近づき、抱きしめる丸山~


丸山:「俺もずっと暖くんが好きだった」


暖:「・・・はい」


丸山:「ずっと誤魔化そうとしてた。でも、素直になっていいんだね」


暖:「いいですよ」


丸山:「暖くん、好きだ」


暖:「僕もです・・・んっ」


~丸山が優しく激しいキスをする~


暖:「まるせんせっ」


丸山:「今まで我慢してた分、たくさん愛してやる」


暖:「はいっ。大好きです。まる先生」


丸山:「俺も大好きだよ暖くん」



終わり






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