―14― ピヨちゃん
「えっと、お前はいったいなんなんだ……?」
目の前に現れたヒヨコにそう尋ねる。
けれど、ヒヨコは「チチチチッ」とくちばしを鳴らすだけで、説明してはくれなかった。
よし、困ったときは鑑定スキルに聞こう。
「なぁ、鑑定スキル。このヒヨコがなんなのか教えくれ」
『鑑定結果、コカトリスの幼体です』
「あ、確かに。胴体がトカゲになっている」
ただのヒヨコかと思っていたが、よく見るとヒヨコなのは上半身だけで下半身はトカゲに似ている。
なるほど、コカトリスは上半身がニワトリだったし、その幼体はヒヨコというわけだ。
「しかし、なんでコカトリスを召喚できたんだ?」
思い当たる節といえば、いっぱい倒したから、そのせいだろうかだったら、他にも倒したことがあるモンスターなら召喚できるかも。
そんなわけで、試しに召喚魔術を使ってみるもなんの反応もない。
どうやらコカトリス以外は召喚できないようだ。
どういうことかわからん……。
まぁ、これ以上は考えても仕方がないか。
「よし、お前の名前はピヨちゃんだ」
『随分と安直ですね』
うるせーな。名前なんてわかればいいんだよ。
「よし、ピヨちゃん。早速戦ってみるぞ」
ピヨちゃんが召喚モンスターだというなら、戦うことができるはずだ。
「いけー! ピヨちゃん!」
早速見つけてスライムを相手に戦わせてみる。スライムなんて弱いはずだし、ピヨちゃんでも問題ないだろ。
「ピヨォォォォッッ!!」
ピヨちゃんはスライムに背を向けながら全速力で逃げていた。
『これは、Fランク以下ですね』
まぁ、こんなことだろうとわかってはいたけどさ!
「食欲だけは旺盛なんだな」
スライムを解体すると、ピヨちゃんがどこからともなく戻ってきて、無造作にスライムを食べ始めた。
うぉおおおお、オレも負けてられねぇ、と謎の対抗心でオレも急いで食べた。
◆
時々思う。
このダンジョンに潜ってからどれだけ時間の経っただろうかって。
一年は絶対経っているよな。
二年経っていてもおかしくない。
三年経っていても驚かない自信はある。
オレはダンジョンにずっといるせいで時間感覚がおかしくなってしまい、どれだけ経っているかわからなくなってしまった。
ダンジョンに入ったばかりの頃は夏休みの間には外に出たいとか思っていたんだけどな。
ボスの部屋を見つけて以降、モンスターを狩ったり筋トレを続けたり強くなる努力をしているが、そろそろ打ち止め感がある。
どんなモンスターも一撃で倒せるようになったし、出会っていないモンスターはもういないようで新しいスキルが手に入ることもない。
ピヨちゃんは相変わらずモンスターと出会うと逃げるし。
「なぁ、そろそろボスと戦ってもいいと思わないか?」
『………………』
相変わらず鑑定スキルは答えてくれない。
自分で判断しろってことなんだろうけど、ちょっとぐらい相談にのってくれてもいいじゃん。
いつまでもここにいるわけにいかないしな。
まだ戦えないピヨちゃんの召喚を解除する。すると、ピヨちゃんの足下に魔法陣が現れてピヨちゃんはどこかへ消えていった。
召喚していない間、どこにいるんだろう。
「よし、それじゃあ、いい加減ダンジョンから出るとするか」
そう言いながら、オレはボスへと続くと扉を開けた。
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