―05― 鑑定結果、討伐ランクはE級

 鑑定スキルを頼りに俺はダンジョン中層を進んでいた。

 すると、目の前に巨人のような図体をした化け物が現れた。あまりにも強そうなモンスターの登場に体が震える。

 いや、まずは落ち着け。

 落ち着いて鑑定するんだ。


「鑑定スキル、鑑定してくれ」


『鑑定結果、モンスター名〈オーガ〉。討伐ランクはE。ご主人さまでは手こずるかもしれません』


 討伐ランクEだと。

 さっきであったコカトリスは討伐ランクがFだった。その、コカトリスよりも強いモンスターということか。


 ブルンッ、と風を切る音が聞こえた。見ると、オーガで手に持つ棍棒を振り下ろしたのだ。

 反射的にそれをナイフで受け止めようとする。


「――え?」


 受け止めきれなかった。

 結果、オレの体はそのまま壁に激突する。


「ぐはっ……」


 あまりの衝撃に口から血を吐いてしまう。


「グォオオオオオオオオオオオオッッ!!」


 オーガの雄叫びが聞こえる。再び攻撃しようとしているんだ。

 このままだと殺されてしまう。


「嫌だ、死にたくない!!」


 そう叫びながらオレは闇雲に逃げる。

 初めて死の恐怖を感じた。

 このオーガというモンスターはコカトリスとは比にならないほどの戦闘能力を有している。なにがあっても勝てる気がしない。


『落ち着いてください。この程度の危機、探索者なら日常茶飯事です』


 鑑定スキルの声で冷静さを取り戻す。


『どれだけ怪我をしても、魔石を飲み込めば治るので気にする必要はありません』


「確かに、そうかもしれないけどさ!?」


 でも痛いものは痛いし!?

 てか、探索者ってこんなこと日常茶飯事なのかよ。マジか。探索者ってヤバすぎる連中しかいないのかよ。恐ろしすぎる。

 

『相手は所詮Eランクのモンスターです。ワタクシの言う通りにすれば勝てます』


「そうかよ」


 思わず笑ってしまいそうになる。

 さっきまであれだけパニックになっていたのに、今は平然としているどころか勝てる気しかしない。鑑定スキル様々だ。


「頼む、どうすればいいか教えくれ」


『さきほど、魔石を飲み込んだ影響で体内に魔素が溜まっています。その魔素を活かせば、戦闘能力を大幅に向上させることができます』


「マジか!? どうやって魔素を活かすんだよ!」


『魔素を気合いで感知してください。探索者なら誰だってできることです』


「気合いでって、説明が雑すぎるだろ!?」


 絶叫しつつも、俺は必死に体の中にある魔素を感知しようとする。

 よくわかんないけど、探索者ならみんなできるみたいだし、多分できるだろ!?

 えっと、えーっと、こうか!? こんな感じか!? 体の中に異物のようななにを感じる気がする。気のせいかもしれないけど。


 あれ――? なんだろう。体が軽くなった気がする。


『魔素には肉体を強化させる能力がございます』


 そういうことか。

 もしかしたら、今ならオーガを倒すことができるかもしれない。


「くらぇえええええええッッ!!」


 ナイフを片手にオレは突撃をする。

 ブルン、とオーガが棍棒を振り回す。

 今なら、この程度の攻撃受け止められる――。


「ん……?」


 なんで視界が上下逆さまになっているんだ?


「ぐへっ」


 オレの体は盛大に壁に叩きつけられていた。

 あ、これは勝てないやつだ。

 だって、まったくオーガ相手に力勝負になってなかったもん。


「よしっ、逃げるか」


 オレはその場から全力で逃げることにした。

 初めての敗戦だった。

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