だれ?
蒼田
1.
夏。
短い休暇を使って俺は実家に帰っていた。
久しぶりに会う親戚と挨拶も程々に一緒に墓参りへ行くことになった。
暑い中クーラーの効いた車に乗ってお墓へ行く。
墓石に水を撒きご先祖様に米をやり手を合わせて再度車に乗る。
親の車で家に帰っているとふと思い出す。
「そういやA君ってどうしてるんだろ? 」
それを聞いた隣の母さんが訝しめな顔をする。
が何かに気が付いたようで「あぁA君ね。A君」と頷いた。
A君とは小学校に上がる前、よく一緒に遊んだ子である。
どういった理由かは覚えていないが小学校を上がるのを機に遊ぶことが無くなった。
あとから考えると違う学校にでも行ったのかなと思っていたのだが、母さんの反応が気になるな。
「……何かあった? 」
母さんに聞くと何か言いにくそうな表情をする。
まさか事故か病気か?
思っていると運転している父さんがバックミラー越しに俺を見た。
「そのA君、という子なんだが……」
「? 」
「聞いたことがないんだ」
「え? 」
思わず言葉が漏れた。
聞いたことがない?
「少し言い方が悪かったな。お前からは良く聞いていたんだが、この周辺でそんな子は聞いたことも見たこともない」
「けどね。遊んだ場所がこの先の公園って言うでしょ? ならご近所のはずなんだけど」
「が誰に聞いても知らないとしか返ってこなかったんだ」
「そんなことは……」
と言いながらも言葉に詰まる。
思い返せば顔をはっきりと思い出せない。
服装はいつも短パンに半袖。
よくよく考えるとおかしなことだ。
冬も短パンと半袖だったもんな。
「あの頃は俺達も忙しかったからな」
「誰かお友達と楽しそうに遊んでいるみたいだったからそっとしていたのだけど」
それを聞きぞくりとする。
じゃぁあの子は一体誰なんだ。
考えるも、顔を思い出せない。
気まずい雰囲気が流れる中俺は顔を逸らして窓を見る。
父さんが雰囲気を変えようとチラリとこちらを見て言う。
「まぁ考えても仕方ない。次、寿司でも食いに行くか? 」
「……うん」
通り過ぎた公園に、寂しそうな顔をした半袖短パンの男の子が立っていた。
———
後書き
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だれ? 蒼田 @souda0011
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