第4話ワンワンとアリさん
こんにちは、ワンワンです。夏は苦手です・・・。大好きな散歩もこの季節だけはきつい・・・。木陰でお父さんとゼエゼエ、はぁはぁ言いながら休んでいると鼻先にアリさんの行列が・・・
「大将さんこんにちは。暑いのにがんばるねぇ」
「おう、ワンワンさん。暑くて苦しいね。お前さんもばててるねぇ。大丈夫かい」。ドッグランに巣を作っているアリさんたちのリーダーは大将と呼ばれています。僕らは去年から知り合いになりました。
「ワンワンさん。悪いけど左足を少し動かしてくれないか。おせんべいを回収したいんだ」
あらら、おいしそうなおせんべいの上に足をのせていたのに気がつかなかった。
「変だな・・。ワンワンさん、せんべい好きのお前さんが落ちているせんべいに気がつかなかったのかい?」
そうだね・・何かおかしいぞ・・においを感じない、大将の声も小さく聞こえる・・
「おい!どうした!、目があっちこっちにゆれているぞ」
そうなんだ、目がまわるってこういうことなのかな・・・
「うわー白目をむいちゃった。大変だ!」
ボクが覚えているのはここまで。気を失ってしまったのでこれから先は大将から教えてもらった話です、ワン。
「やろうども!みんな集まれ。ワンワンがぶっ倒れちまった!助けるぞ」。大将の大声で
アリさんたち30匹が集まりました。「困ったことに飼い主さんは大いびきかいて寝ている。まず起こそう」
「イヌのためにそんなに頑張る必要はないのでは?アリ」大将の部下のアリが言いました。
「ばかやろう、困った時はお互いさまだ。それにワンワンにもらったせんべいで去年の冬は助かった。ご恩を忘れるなんてアリとして恥ずかしいぞ!」
「でもどうやって人間を起こすのですか?アリ。アリの力では人間を揺り起こすなんてできないアリ」
「ううむ、仕方ない。全員で噛みつこう!いくら何でも起きるだろう」
「この騒ぎは何事ですか?モグモグ」
「おう、地下仲間のモグラさん。いいときに顔を出してくれた。イヌのワンワンが熱中症で気絶してしまった。助けてくれ。今俺たちが飼い主を起こすから、ワンワンが大変なことになっているのがすぐ分かるようにお腹を上に向けるようひっくり返してくれ!」
「OK!モグモグ」
モグラさんがうつぶせのワンワンをあおむけにしていると、アリさんたちはお父さんのすねに集まりました。
「みんないくぞ!せーの!」
「ぎゃーーーーー。何だ、何だ」お父さんはびっくりして目を覚ましました。
「蚊に刺されたにしてはずいぶん痛かったなぁ。あれ、おい!ワンワンどうした。やばい熱中症だーーー」
お医者さんに担ぎ込まれたボクは2時間後には目を覚ましました。目を開けたらお父さんはお母さんにどなられて怒られているのが見えました。ワン。先生によると暑いにもかかわらずドッグランで走りすぎたのが原因だそうです。気をつけましょう。
「大将、この前は本当にありがとう。大将は命の恩人だワン」
「気を使わなくていいよ。困った時はお互いさまだ」
「これは感謝の気持ち。もらってねワン」
ワンワンはアリの大将にたくさんのおせんべいを渡しました。散歩の時にお父さんにねだって買ってもらった。ファミリーパックです。
「ありがとう。これで今年の冬もじゅうぶん生きていけるよ」
「それはなにより」
ワンワンと大将はにっこりと笑いました。
セミの声が響く暑い昼下がりでしたが、2匹の心はほっこりと温かかったです。ワン
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます