タイムカプセル

勝利だギューちゃん

第1話

「20年後に開けようね」

「ああ」


校庭の庭の木の下に、仲良し8人組でタイプカプセルを埋めた。

高校の卒業式の時だ。


男女4人ずつの8人。

20年後には38歳になっている。

(生きていれば)


開けるのが楽しみだ。

・・・って、覚えてないんだろうな


「おーい、俺も入れてくれ」

クラスメイトの男子が声をかけてくる。


「いいよ。ついでだ。一緒に埋めよう」

8人の意見が一致した。


「ありがとう」

「いいって。早く入れなよ」

「うん」

彼はひとつ封筒を入れた。


「それは何?」

「漫画の原稿用紙」

「そういや、あなた漫画家志望だったね」

「ああ」


こうして、タイムカプセルは無事に埋め終わった。


そして、20年。

ある雑誌に、一本の漫画が掲載される。


『タイムカプセル』


高校卒業時に、タイムカプセルを埋めて、それを20年後に掘り起こして大騒ぎする、まあありがちな話だ。


作者は・・・

えっ?


私は急いで、あの校庭へと向かった。

幸いなことに、無事に残っていた学校。


「やあ、来たね」

最後に入れた、あの男子生徒がいた。

「まさか、あなただったとはね」

「知らなかったか」

「ああ」


作者の名前は、いわゆる彼の名のアナグラムだった。

どうして気が付いたのか?


「あなたは漫画をいれたんだよね、自作の」

「うん」

「どんな漫画?」

「掘り起こしてからのお楽しみ」


他の7人とは連絡が取れない。

遠くへ行ったり、結婚したりで、忙しい。


そして私も、もうじき永久就職をする。

職場結婚だ。


「私とあなただけ?」

「みたいだね」


仕方がない。

ふたりだけで開けよう。


掘り起こして、タイムカプセルを開ける。

中を見ている。


はっきり言おう。

くだらない。

こんなのをみんな大切にしてたのか?


まあ、それも想い出か・・・


「ねえ、見せてよ。あなたの漫画・・・」

「いいよ」


彼は漫画を見せる。


「これは?」

「気が付いた?」


あの雑誌に掲載されていた漫画のネームが入っていた。

そっくりそのままだった。


彼はこれを予知していたのか?

それとも、自ら叶えたのか?


「でも、この漫画だと全員いるよね」

「そだよ」

「じゃあ、他のみんなは」


あれ?

あの漫画には9人の中のひとりが、タイムカプセルを開けた直後に結婚とある。

その子に名前は・・・


私のアナグラム。


他のみんななも・・・アナグラムになっている。


そして・・・


「おーい、久しぶり」

「元気だった?」

「あいかわらずだな」

みんながやってきた。


手にはあの雑誌がある。


みんな自分のアナグラムと同じ道を歩んでいた。

医者、弁護士、花屋。看護師、運転士、主婦、サラリーマン・・・

そして、キャリアウーマンの私


いつに間にか、彼の姿はない。


だが、あの漫画には続きがあり、本編にもネームにも描かれていた。

それは、キャリアウーマンで職場結婚するキャラ・・・

つまり私の結婚式で締めくくられている。


そしてその相手の名は・・・


アナグラムでなく、そのまま描かれていた。

そう・・・

彼の名が・・・


そう、彼は漫画家になったのだ。

馴れ初めは、私が出版社に入社して、彼の担当になったこと。


この漫画が掲載された時は、私は担当を外れていたので、掲載時までは知らなかった。


「ねえ、あなたは何者?」

「さあね」


彼とはこれから、どんなドラマを描いていくのだろう?

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タイムカプセル 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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