第10話 流れる血が星屑なら

「もしも流れる血が星屑や色とりどりの花だったとしたら、怪我をして血を流しても怖くないし、血を大量に流して亡くなったとしてもかわいそうだなんて思われなくて済むと思わない?血が流れ出た真ん中で死んでいたら、輝く星に囲まれているか色とりどりの花に囲まれているんだもの、むしろ感嘆されるかもしれない」


 窓の外を眺めながらその子は言った。その瞳には今何が映っているのだろう。そう思えるほどに、その子の瞳はいつだって捉えどころがなく不思議だった。


「そうね……でもそうだとしたら、その美しい星屑や花見たさに、他人をわざと傷つける人がいるかもしれないよ。そんなのむしろ恐ろしいじゃない」


 そう言うと、その子は静かにため息をついた。


「確かに。他人を傷つける人もいるだろうし、自分自身を傷つける人もいるかもしれない。自分から流れる美しい星や花を見たくて見たくてたまらなくなってしまうだろうからね」


 その子は自分の手首についた傷をそっと撫でて静かにそう言った。


 まさか。


 いや、そんなはずはないと思う。まさか、その子には血が美しい星屑や花に見えているだなんてことは、きっとない。きっと。


 そう思ってしまったことがわかったのだろうか。


 両目を見開く私を見て、その子はふふっと微笑んだ。


「それに、美しい星屑や花に囲まれてこの世から旅立ちたいと願ってしまうかもしれないもの」


 うっとりとした瞳で空を見つめるその子の腕を、思わず掴んでいた。そうしなければ、いつの間にか目の前から消えていなくなりそうだったから。





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