少し長めの掛け合いのようなもの 2人用練習台本

第1話 少し長めの掛け合いのようなもの

１組目

女：ねえ、私告白しようと思うんだけど

男：罪を？

女：なんでよ、愛をよ

男：愛？お前好きな奴いたの

女：うん

男：へぇ

女：で、四六時中私と一緒にいるあんたにその告白のセリフを考えて欲しいんだけど

男：俺に？なんで

女：だって私のこと一番知ってるのはあんたじゃない。言われたら思わずOKしたくなるような最高のセリフをちょうだいよ

男：…「あなたのことを考えるだけで胸が苦しくて」

女：ほうほう

男：「あなたのすべてが知りたくて、あなたのごみまで漁ってしまうの」

女：ん？

男：「あなたの位置情報と家の鍵を私にちょうだい、骨の髄まで愛してる」

女：…は？

男：こんな感じじゃないか？

女：本気で？本気でそれ言われたらOKするの？

男：ああ

女：…分かった。「あなたのことを考えるだけで胸が苦しくて、あなたのすべてが知りたくて、あなたのごみまで漁ってしまうの。あなたの位置情報と家の鍵を私にちょうだい、骨の髄まで愛してる」

男：え

女：言ったわよ。OKくれるんでしょうね

男：え、お前の好きな奴って俺なの？

女：そうよ。あんたがまさかこんな重たい女が好きだなんて思いもしなかったけど

男：あ、いやそれは…フラれればいいなって

女：あら、サイテー

男：だって！

女：（笑う）

男：なんで笑ってんだよ

女：ねえ、私勝算のない戦いするタイプだと思う？

男：おまっ…サイテー

女：あーあ、せっかくあなたがキュンキュンするようなセリフで告ってあげようと思ったのになー

男：もう一回！

女：「あなたのこと考えるだけで」

男：そうじゃなくてっ！

女：…好きよ。GPSは共用しなくていいけど、私と付き合ってくれる？

男：…喜んで

2組目

兄：なあ、妹よ

妹：なんだ兄ちゃん、カビの生えたキノコみたいな顔して

兄：どんな顔だよ。でもそうだな、俺はカビの生えたキノコのような男なのかもしれない

妹：うわ、クソめんどい形で自分語りに持ってこうとしてる

兄：妹までもが冷たい。いやしかし、カビの生えたキノコのような俺にはちょうどいい扱いなのかもしれない

妹：風呂先入るかんな、覗くなよド変態

兄：待て妹よ

妹：なんだよ

兄：500円やるから聞いてくれ

妹：手短に話せ

兄：彼女にフラれた

妹：なるほど、じゃあな

兄：待て妹よ

妹：なんだよ、聞いただろ

兄：流石にコスパがおかしい！

妹：あたし9時から見たいテレビあるんだけど

兄：もうワンコイン追加するからアドバイスをくれ。俺の何が悪かったんだ

妹：存在じゃね？

兄：もう少し具体例を出してくれっ

妹：ったく…フラれる前に何したの

兄：何って、普通に楽しくデートして…最後、居酒屋出た所で「別れよ」って急に

妹：居酒屋？

兄：ああ

妹：奢ったの？

兄：割った

妹：胸張って言うな。まさか毎回割り勘なの？

兄：なんだよ、言っとくけど付き合った時に彼女から言い出したんだぞ、自分の分くらい払わせてって

妹：好きな奴の会計くらい持てよ、みみっちいな

兄：意思は尊重すべきだろ。俺の彼女を「財布チラ見せして払う気全くない系女子」だとでも言いたいのか

妹：元でしょ、元カノ

兄：傷を抉（えぐ）るなっ

妹：はぁ…デートの食事は毎回居酒屋系だったの？

兄：系、とは？

妹：大皿シェアするタイプかって聞いてんの

兄：そうだ、二人で美味しく楽しくシェアした

妹：で、会計は毎回きっちり割るの？

兄：きっちりじゃないぞ、今日は4389円だったから2100円だけもらったな

妹：偉そうに言うな、つーかその100円キモイ。なんで100円要求してんだよ

兄：なんだよ！この100円のせいで俺はフラれたのか！？

妹：それが致命傷ではあるけど、そうじゃなくて…多分積み重ねだな

兄：どういうことだ

妹：兄ちゃん、大食いじゃん

兄：え

妹：兄ちゃんさ、自分の食べた量、ちゃんとわかってる？ちゃんと半分だけ食ったの？7：3（ななさん）とか8：2（はちに）で食ってない？

兄：えっと…どうだったかな。ちゃんと半分食った…と思うけど

妹：思うって…はぁ…覚えてねぇってことは彼女の食べる分考えずに食ってた証拠だろ。付き合ってる相手がちゃんと食ってるかぐらい考えながら食えよ、ただでさえ大食いなんだから。兄ちゃん、半年前の親戚の集まりで寿司一人だけで抱えて食ってしこたま怒られたの、もう忘れたの？

兄：あ、いや

妹：全奢りなら問題ない、4000円のうち1000円徴収でもまだ笑ってやれる。でもしっかり半分もらうってそれどうなの？自分の食ってない分要求されるって彼女さん普通にモヤるだろ。それお前、逆に毎回奢られてんじゃん

兄：うっ

妹：彼女さん、急に「別れよ」になったわけじゃねぇよそれ。そういう配慮の無い所に傷ついて疲れたんだよ。あたしにワンコインで相談するくらいならさ、彼女のこともっと気遣えよ。そんなだから元カノになっちまうんだよ

兄：うう…

妹：兄ちゃんって、キモいし空気読めないし面白くないしキノコ生えてるような男だけどさ、それでも一応…あたしの兄貴なんだから次はもっとちゃんとしろよ。一ミクロンくらいいいとこはあるんだから、もっと周りを観察しろ

兄：（演者の名前入れて）○○…

妹：ってことで、お世辞料、特大アドバイス料込みでしめて3000円のお支払をお願いします

兄：○○！？

妹：風呂から上がったら徴収すっから、耳揃えて用意しとけよ

兄：ひぃぃぃぃ

0：扉を閉めて一言

妹：いいとこはちゃんとあるんだから、ちったあマシな男になれよ