第17話 天才魔導士?

次の日、朝イチで僕とリーネはサルヴァンに事情を話し、魔導士協会に来ていた。


 受け付けで資質鑑定を依頼し、銀貨1枚ずつ支払う。



「ではこの証書を持って奥へどうぞ」



 僕とリーネは証書を受け取り、奥にある鑑定室へ向かった。ここでは様々な鑑定が行われており、魔法の資質だけでなく未知のアイテムの鑑定、レベルなどももちろん鑑定できる。資質鑑定の証書を提出し、奥へと通された。


 そこには反応石という水晶球が並べられており、各属性との親和性を光の具合で判断できるのだ。



「ではそこの少年から行こうか」



 鑑定士に促され、僕は机の上に並べられた8つの水晶球の前に立つ。先ずは赤い水晶球から。これは火属性だ。


 水晶球の上に手を乗せると、赤い光が立ち昇る。



「ほう、C判定ですね。なかなか優秀です」



 やはりおかしい。前にやったときは全く反応しなかったのに。


 次の水色はまんま水属性。前はB判定だった。しかし僕が手を乗せると鑑定士の顔色が変わった。



「に、虹色…!? え、S判定!?」



 あー、これは確定だな。どういうわけか強化ブーストした資質がそのまま残っている。他の属性の水晶球にも次々と手を乗せていくと、鑑定士は呆気に取られていた。


 結果は氷C、土B、風A、雷A、無S、光S、闇C。オールC以上とか普通いないらしいよ。



「次は私だね!」



 そしてリーネも水晶球に手を乗せていく。


 火S、水A、氷S、土S、風B、雷S、無B、光C、闇S。リーネすごい。S5つかー、負けたね。



「ふ、2人とも天才ですね…。とにかく承認印を押しますので、これを受け付けに」



 鑑定士は震える手で証書に鑑定結果と承認印を押すと、僕たちに返す。ちなみにこれを渡さないと会員証が返って来ない仕組みになっている。


 僕たちは証書を受け取り、受け付けへ戻って証書を渡した。すると受け付けのお姉さんが「少々お待ちください」と言い残してどこかへ走って行ってしまった。



「どうしたんだろうね」


「不正でも疑われたかな?」



 不正ねぇ。どうやって不正ができるのか検討もつかないんだけどな。強化ブーストで確かに資質は底上げしたけど、普通はできることじゃあない。でもS判定がこれだけあるっておかしいんだろうな。


 それとも知らず知らずのうちに何かやらかしてしまったのだろうか?



「お待たせしました、こちらへ。ギルドマスターがお会いになります」


「へ?」



 戻ってきた受け付けの人に言われ、僕は素っ頓狂な声をあげた。僕らは別にギルドマスターに会いに来たわけじゃない。怒られないといいけど…。


 とにかく言われるまま僕らは受け付けの人の後ろを付いていった。会員証を返してもらってないんだけど…。



 受け付けの人の案内で応接室と書かれた部屋に通された。


 中では白い髭を蓄えた老齢の魔道士が待っていた。なんか風格と威厳を感じる。この人がギルドマスターなのだろう。


 その魔道士が僕たちの入室を確認すると、ジロリと鋭い眼光を僕たちに向ける。その重圧に僕もリーネも完全にびびっていた。目力強すぎる…。


 そして座るよう手で促され、僕たちは身体を強ばらせたままソファに座る。その眼光が僕たちを見定めてるようだった。



「ふむ…。なるほどな」



 その一言に僕はビクッと身体を震わせる。



「ああ、すまんすまん。怖がらせたようじゃな。楽にしてくれてかまわん。2人の魔力を見ていただけじゃ。まさかこれ程とはな…。以前の資質も見せてもらったが、なかなかの才能じゃったな。しかし今の鑑定の結果が余りに常軌を逸しておったからな、確認させてもらっただけじゃ」


「えと、別に怒られるとかそんなんじゃ?」


「怒られるようなことでもしたのか?」


「いいえ…」



 よかった、何かやっちゃったのかと思った。魔力を見ていただけかぁ。



「なぜ急にこんなに資質が上がっておるのだ?」


「うーん、成長期だから…?」



 一時的に資質を上げはしたが、あくまで一時的なはず。どのみち拡大解釈のことは言わない方が良さそうだ。



「なるほど、成長期か。それにしては異常じゃがな」


「そう言われましても…」


「ふむ、まぁあい。しかしこれだけの才能が2人か。お主らが望めば貴族の養子になることも出来ることもしれんな。興味があるなら紹介してやるぞ?」


「いえ、僕らは4人で頑張りたいので」


「私もです」



 貴族とか僕の器じゃないと思うけど。それに僕はサルヴァンやアレサ、リーネ達と頑張りたいのだ。いつかはみんな別々の道に進むかもしれないけど、まだその時じゃないと思う。


「そうか、もったいないのう。冒険者をやっておるのじゃったな。ならクランへ入ることを勧めよう。その才能が知られれば確実に騒動の元になる。後ろ盾もなしに巻き込まれれば不幸な結果を産むことになろう。ギルドマスターに手紙を書いてやるからクランに入りなさい」



クランとは幾つものパーティが手を組んで結成する互助会やチームみたいなものだ。若い冒険者は経験や研鑽を積み、ベテランはその時に必要な共同依頼のパーティも見つけられるし、引退した後も後継の育成で生活の糧を得ることもできる。そういった将来を見据えた計画も建てられるし情報交換もできるのでギルドの方でもクランの加入は推奨されている。クランにより傾向は異なるが貴族が後ろ盾にいたりすることもあるらしい。


ただ新人が入るにはコネや実力がないといけないはずだ。そのため勧誘されるためには討伐隊に参加して目をかけてもらうか、ある程度の名声が必要になると思う。



「あ、ありがとうございます」


「まぁ、気が変わったらいつでも言いなさい。理念上本人の意思なしに誰かに教えることはせんが、遅かれ早かれその才能は知られることになるじゃろうからな」



僕たちは手紙を受け取ると頭を下げて退室し、受け付けで会員証を受け取るのだった。

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