第53話:海のお買い物
前世の僕は、食べる物に凄い制限があった。
心臓が悪いから、塩味の強い物はもちろん、カロリーにも制限があった。
小学生に入る歳になると、ほんとんど流動食だった。
だから、生まれ変わってからは食べる事が大好きで、何でも美味しく食べた。
フェロウシャス・ボアを自分の手で殺してしまってからは、命を奪うのが恐ろしくなって、動物も魚も食べられなくなったけれど、食べる事は大好きだ。
だから、海の草木だという海草の食べ方にはとても興味がわいた。
行商隊の買い物が終わるまでの間、できる限り話を聞いた。
お礼に有るだけの海草を買ったが、とても安くておどろいた!
しかも、干して乾燥させて物は物凄く小さくなるのだ。
小さくなるだけでなく、とても腐り難くなるのだ。
これなら海から遠い所にも安心して運べる。
だけど、不味い物なら、どれほど腐り難くても商品にはならない。
そんな事は僕だって分かっている、ちゃんと試食させてもらった。
口に入れたら海の香りが鼻から突き抜ける、美味しい!
あまりの美味しさにその場で飛び上がってしまった。
おじさんにもっと話を聞かせてもらおう、料理を教えてもらおうと思ったが、漁師街の商品を全て買い占めて行商人たちに急かされて次の漁師村に行くことになった。
残念だが、これが最後ではない、何時でも来られるからあわてない。
少しでも安く海の物を買いたい行商人たちに頼まれて、漁師街ではなく小さな漁師村に行って買い物する事になった。
その時にやっと気がついた、砂浜に落ちている茶色い塊が海草だった!
全く同じものではないと言われたが、僕には違いが分からないくらい似ている。
砂浜に落ちている物を売るからあれほど安かったのだと思った。
売っていたおじさんに少々腹を立てたが、それを言うと山で集めてきた栗や果物も似たような物で、売れる物と売れなくなった物があるのだと思い至った。
砂浜に落ちている海草の全てが売れる訳ではなく、その中の一部が売れるのだ。
美味しい部分と美味しくない部分が有るのだと、自分が買った海草と比べてみて、何となくわかった。
「「「「「コケコッコー」」」」」
などと思いながら海草を見比べていると、ロック鶏が砂浜に打ち上げられている海草を美味しそうに食べだした。
僕がゆっくりとしているから、好きにしていいと思ったのか、これまで食べたいのを我慢していたのか、凄い勢いで海草を食べだした。
僕たち海の魚を食べたいように、草を食べる動物も海の草を食べたいのだろうか?
もし食べたいと思っているのなら、家の家畜にも食べさせてあげたい。
家畜以上、家族同然の馬や牛にも食べさせてあげたい。
「ウィロウ、預かり代を払うから、砂浜に落ちている海草を集めて」
「何馬鹿な事を言っているのよ、私のアイテムボッスにも限度があるのよ」
ウィロウのアイテムボックスを使えば、いちいち屈んで集める事なく砂浜に落ちている海草を集められると思ったのだが、断られてしまった。
しかたがないので、猟師村の人を雇う事にした。
「あの籠一杯に海草を集めてくれたら、美味しい果物か大銀貨1枚あげる。
みんなで集めるのなら、小銀貨や大銅貨で払ってあげる」
漁師たちに集めてもらった海草を、ロック鶏に運んでもらうのだ。
人間ではなく海草を運ぶので、万が一落としても大丈夫だから、足に絡ませる蔦壁籠ではなく、爪でつかんで運ぶ蔦壁の巨大籠を造って使った。
ロック鶏がつかんで運べるかどうかギリギリの大きな籠一杯の海草。
習い始めたばかりでも僕も行商人だ、徐々に日当をあげる心算で、最初は大銀貨1枚で交渉を始めたのだが、あっさりと引き受けてくれた。
失敗した、この漁師村では大銀貨1枚がとても価値が有るのだろう。
あるいは、猟師の稼ぎがよほど少ないかだ。
村中の人間が集まって来て、奪い合うように海草を集め出した。
僕は身体強化をしなくて視力が良いのだが、その僕が、目を身体強化しなければ見つけられないくらい遠くまで、海草を集めに走っていく。
あまりに巨大な蔦壁籠だと、1杯にするのに時間がかるし、猟師村で分けるのも喧嘩になるだろうから、家族や個人で集められるくらいの蔦壁籠を中小2つ造った。
10個で元の大籠を一杯にできそうな大きさの中蔦壁籠は小銀貨1枚。
100個で元の大籠を一杯にできそうな大きさの小蔦壁籠は大銅貨1枚分。
それを渡して家族や個人で集めてもらった。
1つ目の大蔦壁籠に集めてもらった海草は、村の中で争いが起きないように、それまで集めてくれていた人たちに、公平に大銅貨で支払った。
次に来る時まで、干した海草を中小の蔦壁籠に入れておいてくれたら、小銀貨1枚か大銅貨1枚で買うと約束した。
1日かけて18カ所の漁師町と漁師村に行って生の魚を買い集めた。
ウィロウのアイテムボックスを頼りに行商人たちが買った。
日が暮れる前に開拓村にもどった。
僕も自分で持てるくらいの生の食べられる海草と、特大の蔦壁籠いっぱいに入れた、食べられる所もある生の海草を開拓村に持ち帰った。
「「「「「ヒィヒイイイイイン!」」」」」
「「モー 、モー 、モー 」」
「「「「「メー、メー、メー」」」」」
僕の思った通りだった!
馬、牛、羊、山羊、ラバ、ロバ、家の家畜は全員海の海草が大好きだった。
あんなに安く買えるのだから、海に行ったらお土産に買ってあげよう。
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