第48話:海産物

 やっぱりお父さんとお母さんは凄い!

 2人とも泳ぎ方を知っていて、僕にも教えてくれると言う。

 傭兵や冒険者をしていた時に泳ぎ方を覚えたそうだ。


「この子たちなら少々の重さでも運べるのよね?」


 3人で波とたわむれていると、急にお母さんが聞いて来た。


「ちょっと待って、聞いてみる……フェロウシャス・ボア5頭は軽く運べるって」


「近くに漁師の村や街があるのなら、魚と塩を買って帰りたいわね」


 お母さんには、海に来たのなら買って帰りたいモノがあるようだ。

……しまった、僕も一応行商人なのだから、商品になる物を安く買って高く売る事を考えないといけないのに、ぜんぜん思い浮かばなかった。


 でも、海で取れる物を買って帰ったら、どうやって手に入れたか言わなければいけなくなるし、最初からロック鶏を秘密にする気だったから買う気もなかったし、思い浮かばなくてもしかたないよね。


「ケーン、この子たちに近くに人間の村や街がないか聞いてくれる?」


「分かった……海沿いだよね?」


「そうよ、海から離れた場所ではなくて、海に沿った村か街よ」


「「「「「コケコッコー」」」」」


「……飛んでみてくれるって」


 僕がそう言うか言わないかの間に、10羽が一斉に飛び立った。

 飛び立ったかと思ったら、直ぐに戻って来て教えてくれた。


「5つほど村があるそうだけど、買って帰っても大丈夫かな?」


「私もどうすれば1番ケーンのためになるのか色々考えたの。

 開拓村の事もあるし、行商人との関係もあるわ。

 ケーンが隠そうとしていたから、最初は隠す事を前提に考えていたのだけれど、隠さずに堂々とする方がケーンのためになると思ったの」


「また嫌な顔をされたくないんだけど、大丈夫かな?」


「それは大丈夫、ケーンが強いのが分かったら、あの時のような顔はされないわ。

 ただ、別の嫌な顔、怖がるような顔や、欲深い顔は見る事になるわ」


「できたら、僕が神与スキルを頂く前のような村に戻したいんだけど……」


「可愛そうだけれど、1度力を見せてしまったら、元には戻らないの。

 開拓村を出て1人隠れて暮らすのなら大丈夫だけれど、私たちと一緒に暮らすのはもちろん、将来結婚して家族を持つのなら、嫌な人間ともかかわる事になるの」


 お母さんがとても真剣に話してくれた。

 教会がフィンリー神官を中心に造った開拓村や、前世の病院には良い人が多かったけど、行商隊で外に出たら悪い人もいっぱいいた。


 そんな人が嫌なら、1人隠れて暮らすか家族で隠れて暮らすしかない。

 僕だけが好きな時にロック鶏と旅に出て、家族は僕のせいで隠れて生きる。

 そんな事は絶対にさせられない!


「うん、分かったよ、お父さんとお母さんに迷惑はかけられないし、エヴィーたちを友達もいない所に行かせられない。

 力を見せた方が良いのなら、ロック鶏たちを村の衆に見せるよ」


「よく決断してくれたわ、後の事は何も心配しなくても大丈夫。

 お父さんとお母さんに任せておきなさい」


 お母さんが力強く言ってくれて、お父さんもウンウンとうなずいている。

 

「じゃあ、さっそく海の衆に私たちの力を見せつけるわよ!」


 お母さんはそう言うとうれしそうにロック鶏の蔦壁籠に乗った。

 お父さんも顔を引きつらせながら乗ってくれた。

 

 お父さんとお母さんは、ロック鶏を恐れて逃げる漁師さんを落ち着かせた。

 僕がロック鶏を言い成りのできるのを漁師さんたちに見せて、安心させた。

 それから行商人として売り買いの話をした。


 僕は途中から離れて見ないようにしていた。

 父さんとお母さんが、生きた魚や干した魚を、僕が実らせた果物と交換していたから、吐かないようにしていたのだ。


 僕は10羽分の蔦壁籠、左右の足に付ける17個を新しく造った。

 その時にも結構な量の果実が実ったので、商品にするには十分だった。

 4番目に行った漁師の村では塩も作っていたので、有るだけ交換した。


 5番目の漁師村に行く時間がなかったので、開拓村に帰った。

 今日直ぐにロック鶏を見せるのではなく、準備してから見せると言う事だったが、今日交換してきた魚と塩は開拓村に運ぶことになった。


 でも、簡単に運ぶと言っても結構多い。

 僕が身体強化すれば直ぐに運べるけれど、身体強化は最後まで隠した方が良いと、お父さんもお母さんも言う。


 既に開拓村の衆には身体強化を知られてしまっているから、噂にされるのはしかたがないけれど、本当にできる所は見せない方が安全だと教えてくれた。


 だから、僕が海の魚と塩を見張っている間に、お父さんとお母さんが牛、馬、ロバ、ラバを連れて来て開拓村まで運ばせると言う。


 お母さんは畑東門の見張りがあるので、家畜を連れて戻ったのはお父さんだけ。

 全部運び終えるまでに5往復もかかった。

 最後の5回目に、僕も一緒に開拓村に戻った。


「なんだ、どうしたんだ、こんな大量の塩をどこから手に入れた?!」

「おい、おい、おい、なんだこれは、まさかサバか、こっちはイワシなのか?!」

「干物ならともかく、どうやったら生の魚を手に入れられるんだ?!」

「アラミス、ケーン、話があります、教会まで来てください」


 海の魚に興奮する村の衆はうるさいだけだったが、フィンリー神官の声は物凄く怖かった。

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