Episode04-20 クラスチェンジ
デメリットは「警察への協力義務」が生じる事、になるが、これは俊也の言い分を信じるなら「月に2回程度」との事。それ程重い負担にはならなさそうに思える。
他には、
(アイツに
そんな警戒感は少し残る。
ただ、こうやってマイナス面ばかり考えていても仕方がない。現に、俊也の申し出はメリットが多い。それは彩音の言葉を借りる間でもなく、明らかだ。
先ずは外見上「団体職員」という肩書を得られる。これで無職やフリーターのような社会的に弱い立場に起因するトラブルは防げるだろう。
それに、団体職員としての「共済組合」があるのも大きなメリットだ。
更に言えば、身分がしっかりとして将来の「万が一」にも備えが出来れば、別の事を考える余裕も出来る。それは
(彩音……大学へ行けるよな)
というもの。
今のところ、
(自称保護者としては……提案くらいはしないとな)
勿論、提案だけではなく、「そうなったら」協力もするつもりだ。
そんな事を考えつつ、俺は車を走らせて目指す目的地へ向かう。その目的地は……当然「穢界」だ。
*******************
「七曜会」への加入は一旦棚上げにして、俺は「朝の穢界」として八等穢界に入った。そして、いつもの如くスキルの習熟度を上げるために「単結界」を使いつつ、書き溜めていた「呪符」の効果確認も行う。
自作の「呪符」については、劇的に上達するという事は無いが、徐々に効果は上がっていると思う。欠かさず近所の書道教室に通っている成果だろう。
一方、なかなか習熟度が上昇しない「単結界」だが、今回の穢界でようやく
――単結界★★★――
となった。
ちなみに、★3つで覚えた結界術は「
――怪異の侵入を阻む――
というもので、他の「
試しに使ってみたところ、目の前に差し渡し3メートル程の縄が腰の高さに出現した。ちなみにその効果は、突っ込んで来た八等の小餓鬼を
――バチンッ!
と弾き飛ばす、というもの。どうやら、3回から4回くらい怪異を弾き飛ばす事が出来る模様。しかも、
「破魔符、行け!」
こちらから発した法術は、縄の上を難なく通過して怪異に効果を発揮する。
これ迄の榊や柊の生垣と違い、効果がある間はこちらから一方的に遠距離攻撃が出来る感じだ。
「やっと使いやすいのが出て来たな」
目に見える範囲で粗方の怪異を斃した俺は、一息吐きつつ感想を(独り言で)述べる。
耐久性にやや問題を感じるが、初級クラスの「陰陽学生」だとこの程度なのだろう。それよりも、
「これで陰陽学生のクラスが★3つになったな――」
こっちの方が重要。これで俺は「退魔剣士」にクラスアップする条件の1つをクリアした。
ちなみにこの「退魔剣士」というクラスは、「
だから、俺の中では次のクラスは「退魔剣士」にすることが確定している。ただ、クラスチェンジに必要な能力ポイントは50。これは、
「能力ポイントが10足りないかぁ~」
初期の頃に「チュウとリアル」を見た勢いで能力ポイントをステータスアップに使ったのが悔やまれる(スクにゃんも「勿体ないのだ!」とか言っていた)。
この能力ポイントはレベルが上がると10ポイント付与される。ただ、俺はこの前レベル15に上がったばかり。次にレベルが上がるのは少し先の話になる。まぁ、今まで通りに活動していれば、その内クラスチェンジが出来る訳だ。しかし、
「う~ん、彩音も巫女になったしなぁ」
ちなみに、彩音の「巫女」は和職の中級職。一方、俺は初級職(2つ目だけど)というのは、ちょっと格好悪い気がする。なので、
「浄化ポイント使うか――」
という選択肢を思い付く。
ちなみに、「能力ポイント」は「浄化ポイント」から直接交換する事も出来るし、宝珠ショップでアイテムとして買うことも出来る。ただ、浄化ポイントから交換した場合は
10浄化ポイント=1能力ポイント
であるのに対して、宝珠ショップで購入した場合は
1,000宝珠=1能力ポイント
となる。
「1浄化ポイント=10宝珠」だから、宝珠ショップでアイテムとして購入した場合は10倍のコスト高になる。
(これ……作った人の間違いだろ)
そんな気がするが、とにかく、俺は手持ちの浄化ポイントを100使い、能力ポイント10を手に入れた。「100浄化ポイント=現金10万円」だけど気にしない、気にしない。それよりも今は――
「これで……よしっ」
「退魔剣士にクラスチェンジしますか_Y/N」のメッセージで「YES」を選択。そして俺は、ようやく「退魔剣士」となった。
*******************
その後、俺は取り敢えず穢界を浄化することに決めた。新しいクラスの「退魔剣士」については、一旦自宅に帰ってじっくり調べようと思ったからだ。
というのも、この日の午前の穢界で、俺は思った以上に長い時間、穢界に滞在してしまったから。
こうなると、
「うわ……」
可能性ではなく、現実のものになった。
(20分くらい大丈夫かと思ったけど……)
駐車禁止の黄色いステッカーがフロントガラスの上から現実を主張している。
ちなみに、こんな場合でも「七曜会」に加入していれば「何とかなる」らしい(俊也談)。
こういった場合や、先日の俺のように「不法侵入」的な不法行為(世間的には犯罪行為)で逮捕されたような場合でも、目的が「穢界がらみ」ならば「七曜会職員」という立場が融通を利かせてくれるとのこと。これも「七曜会」のメリットの1つだ。
「はぁ……」
俺は溜息を吐きつつ、フロントガラスに張られた黄色のステッカーを剥がして運転席に乗り込む。そして、
「入ろうかな……」
こんな切っ掛けで決めてしまってもいいのか? と思うが……10万円分散財した直後の罰金1万数千円はちょっと痛いのだから仕方ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます