Episode03-05 異常地点
2024年8月22日
「スーパーバリューショップ・与野店」で「八等穢界」と「九等穢界」を浄化した翌日の朝。
今日も今日とて、俺はスクーターの後ろに彩音を乗せてバイト先へ送り届けた。
ちなみに、昨晩買った賞味期限切れ(4日もオーバーしていた)の「コロッケパン」は今朝の朝飯になったが、今のところお腹に問題はない。
――それ、分かってて食べるって、マジやばくない? ちょーウケルんですけど――
出発前の彩音に滅茶苦茶笑われた(そして、若干引かれた)けど、勿体無いものは勿体ないんだから仕方ない。
一方、ひとしきり笑った彩音は、
――発表します! コンビニと居酒屋のバイトは今週金曜日で終わりです。やったぁ~――
と発表(?)してきた。ちなみに「今週金曜」とは明日(23日)の事だ。なんでも、本来の給料日は25日だけど、今月は25日が日曜日なので繰り上がって金曜日に振り込まれるとのこと。一方、もう一つのバイト先の「カフェ」の方は25日締めの月末払いだそうだ。だから、
――キリが良いから、今週の日曜で一旦バイトは終了にしま~す。パチパチパチ――
とのこと。俺は思わず真顔で「ご苦労様でした」と言ったものだ。
――これで、来週からは迅さんと一緒に1日3回、穢界に行けます! 学校が始まるまでの1週間で稼ぐぞいっ!――
とにかく、気合が入っているのは結構な事だと思う。
ちなみに、彩音は学校が始まった後も夕方の時間帯にバイトをするつもりらしい。以前に言っていた「世の中を知らない云々」に関する話だろう。まぁ、社会勉強目的のバイトなら学校の支障にならない程度ならば別に良いと思う(保護者ではないので良いも悪いもないけど)。
彩音はまだ次のバイト先は決めていないらしいが、候補は幾つかあるとの事だ。
(それにしても、元気なヤツだよな~)
俺は、彩音を送った帰り道に、スクーターを運転しながらそんな事を考える。
(そういえば、穢れポイントが
たしか彩音を連れて夜の「八等穢界」に初めて行った日の帰り道だったか? 彩音はスマホの画面をみながら
――やっぱり、迅さんと居ると穢れポイントがあっという間になくなる。すげ~――
と言っていたので、詳しく訊くと、
――アタシ1人だと1時間に1ポイント減るけど、迅さんと一緒だと多分10分に1ポイントくらい減ってる――
とのこと。俺からすると「普通」の話だが、そういえば「
(もしかして、俺が特別なのか?)
今更ながらにそう思うが、どうして「そう」なのかは分からない。心当たりを強いて挙げるとすれば、「加護」をくれたエミの――
――ギュキュウゥゥゥゥ、グルグルグゥゥゥゥ
この時、俺は突然、猛烈な腹痛に襲われた。
*******************
突然の腹痛。脂汗が噴き出る。
思い当たるのは今朝食べた賞味期限を4日過ぎたコロッケパンだ。俺は必死でトイレがありそうな場所を探し、目に飛び込んだスーパーマーケットに駆けこんだ。まぁ、アパートへの帰り道の途中にあるスーパーマーケットなんて「スーパーバリューショップ・与野店」しかないのだけど。
「はぁはぁはぁ……ギリギリ……セーフだった」
ザァ~と音を立てて流れる水流を見ながら、辛うじて人間の尊厳を守り抜いた俺は、ここでようやく一息吐く。そして、改めて
(また来てしまった)
と思う。
今日はこの後、昨日と同じ深夜の時間帯に彩音と一緒に来る予定だった。なので昼間に寄るのは全く予定外の話だ。
しかし、ここで買った物を食べて腹を下して、ここのトイレに駆け込むとは、
(妙に因縁を感じるような)
偶然と言えば偶然なのだが、そう考えると「そう思えて来る」。
(まぁ、考え過ぎかな……)
俺はそんな下手な勘繰りを自分で否定しつつ、スマホを取り出して最近「癖」になりつつある「穢界チェック」を行う。確か、昨夜の時点で5つあって、その内2つを浄化したから残りは3つのハズ……
「え?」
思わず声が出た。
というのも、この時俺が立ち上げた「
(どういうこと?)
少し驚きつつも画面を拡大すると、
(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ……6つ、7つ?)
昨夜の浄化前よりも増えていた。
その内訳は九等穢界が3つ、八等穢界が3つ、七等穢界が1つだ。このうち、辛うじて場所を記憶していたのは、敷地の裏側(恐らくバックヤードの入口)にある「七等穢界」だけだが、たぶん、昨夜残していた他の穢界はそのまま残って、新しく4つ追加になったのだろう。しかし、
(こんな事って……あるのか?)
ちなみに、俺の(たった1か月ぽっちの)経験によると、大宮駅前では結構似たような場所に穢界が出来る傾向があった。しかし、1度浄化すると、その近くに新しくできるには3~4日掛かっていた記憶がある。お陰で、一時期大宮駅周辺から「九等穢界」が消えてしまい、名も知らないアプリユーザーに迷惑をかけてしまった。
つまり、たったひと晩でこれだけ密集して、しかも数が元よりも増えるというのは、凄く不自然だ。
「う~ん……」
俺はちょっと考え込む。そして、
「ちょっと数を減らして様子を見るかな」
という結論に至った。
もともと、午前と午後に1つずつ、計2つの八等穢界を浄化するのが最近の「
「よし、そうと決まれば――」
俺はトイレの個室から出ると、そのまま3つ並んだ個室の一番奥へ移動。この奥の個室の中に昨日は無かった「八等穢界」が出来ている。先ず、この近場から浄化して行こうと思う。
*******************
その一方で「楽な面」というのもあって、それは、
「破魔符っ!」
――バンッ、バンッ!
「鬼火符」
――ブォッ!
と、このように、大体の「怪異」は俺の「呪符術」で1発KOになる点。つまり、手加減無用で法術をぶっ放すことが出来るという点だ。この辺が彩音と2人で来ている時との大きな違いだ。
ちなみに、呪符術の習熟度★2で使えるようになった「鬼火符」は投げつけた呪符が炎の尾を曳いて飛び、怪異に当たると小さな爆発を起こす。そして、爆発した箇所から周囲に小さく延焼するという法術になる。使用コストは「無地の呪符」1枚と法力7消費だ。
まぁ、当たって爆発した時点でだいたいの怪異はKO状態。そこから延焼効果があるのでちょっとオーバーキルな感じが否めない法術だ(まぁ使うけど)。
一方、中々習熟度を上げるのが難しい「単結界」だが、ここにきてようやく、
「……あ、上がってる」
ことに気が付いた。単結界習熟度★2で使えるようになるのは――
「
柊 ――葉っぱにトゲトゲがある魔除けの効果があるとされる常緑樹―― の
それにしても、
「なんだか、植木職人になったような」
気がする(使うけど)。
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