1-12 神代唯牙
みーちゃんを抱えたままセンセが向かっていた倉庫地帯の入り口まで歩いて来た所で、頭上から声をかけられた。
「遅かったな、まあ鎧殻を相手にしたんだ 生きて帰って来ただけ褒めてやらんとな」
センセは山の上に座って煙草を吸っていた、チンピラと極道っぽい人で出来た山の上。
「昔のヤンキー漫画じゃないんだよ?センセ」
若干引きながら返す。
「長年一緒にいる私だから言うが、間違いなくお前がこっち担当してたら同じように座ってる」
よっ!とチンピラマウンテンから飛び降りて私の前に降りてくる。
(うーん、絶対しないとは言い切れないかなー?)
「無事か?」
「うん、今は疲れたのか眠ってるだけだよ 怪我はしてないと思うけど帰ったら念の為1回リノさんに見てもらわないとね」
「その子もだが、お前もだよ」
ぐっと顔を近づけて優しい表情で私を見る、
私が言うのも何だがセンセは美人でこんな事をされると身内とはいえ照れてしまう。
「わっ私は大丈夫だよ! それよりセンセ!あのモヤシも結構強かったんだけど!!」
赤面しながら照れ隠しに話を逸らす。
「そうか、奴も何か武装を?」
「ううん、なんかビヨーンって手が伸びたり首がグニャぁって曲がったりしてキモかった! 何か私達にした研究のなんとかだってさ」
「!? そう、か」
珍しくセンセが少し驚いた顔をしていた、そんなにキモいの想像したのかな?
「すまなかったな、それならお前に任せるには荷が重すぎた これは私が行くべきだった」
「そんな事ないよ なんとかぶっ殺してきたし、それに知ってるでしょ!私が殺るって決めたらたとえ死ぬ事になっても私が戦うって決めてる事」
「ああ、だが何時も言っているが最初から死ぬつもりで戦う事、それは許さん 私を頼れ」
「分かってるよー えへへ センセ何だかんだ私の事好きよねー」
「好きでもない奴を何年も育てて一緒に暮らす訳ないだろう」
あー この人はこういう事を平気で言う、女子校とかにいたら多分この人で戦争が起きる王子様系の美形だし。
「それよりお前鎧殻は? 破壊しないと勝てなかったか??」
「あーーー!忘れてた!」
ああいった武装は売り飛ばして活動資金にしたり私達の装備の素材にしたりする為に回収するのが私達の仕事の常識だった。
「みーちゃんの事で必死だったよ、持ってくるからみーちゃん見てて!変な事しちゃ駄目よ!」
センセにみーちゃんを抱っこさせて私はまたあの倉庫へ向かって走る、いつの間にか背中の傷は塞がって痛みも少なくなっていた。
「もー!あんなデカイの女の子一人に持たせるものじゃないけどね!!」
◆
♪〜〜
凛々奈にセンセと呼ばれていた女性のスマートフォンが鳴る、非通知
抱き上げている少女を片手で支えるように抱き直し通話のボタンを押す
「こんばんは "殲滅の爆雷帝"
「誰だお前は、名乗れ、名乗らなければ切る」
「今は名乗る事ができないんだ、すまないね」
「そうか 元気でな」
そのまま唯牙は通話を切ろうとする。
「わー!要件だけ聞いて頼むから!君にとって大切な事だから!」
「チっ 聞くだけ聞く」
再びスマートフォンを耳に当てる。
「本当に君は身内以外に冷たいよね」
「次要件以外の事を喋れば切る」
「OKOK、これは君にとっても君といる失敗作の"咲かない蕾"ちゃんにとっても大事な事だからさ」
「殺すぞ・・・」
「うわー!ごめん!怒らせる気は無かったんだけど!確かに嫌な呼び方だよね!」
本気で切ろうと思ったがコイツは色々知り過ぎている、・・・聞いておいた方が良いような気がする。
「あのねー!実はこの前君たちが保護した女の子何だけど」
「あの子は──────」
◆
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