1-11 帰る場所


「凛々奈ちゃん!」


「・・・・・」


「ここから出たら一緒にお花屋さんしようね!!」


「別に私は他にやりたい事もないし、やってあげてもいいわよ」


「やったぁ!約束だよ!大人になってもずっと一緒にお花屋さんしようね!」



「ハッ!」


 (ヤバっ!一瞬意識飛んでた!)


 暖かい夢を見ていた気がするけど、目の前の血の海と首が取れかかった男がいる光景が私を現実に引き戻した。


「ッ!みーちゃん!!」


さっき彼女がいた二階の通路を見るとそこに少女の姿は無かった。


「うそっ」


 私は立ち上がり、倉庫の角にあった階段へ駆け出した。


(痛っ!背中の傷は塞がりかけてる、まだ効果時間内って事は1分前後しか気を失って無かった筈)


 階段を駆け上がると下から見えない位置に少女は倒れ込んでいた。


「みーちゃん!!」


 全速力で駆けつけて少女の頭を起こし膝に乗せて無事を確認する、呼吸は問題なくしているようだ。


「良かったぁ、何かあったらどうしよかと」


「ん・・・凛々奈さん?」


 「みーちゃん!良かった!大丈夫?どっか痛い所ない?アイツらに酷いことされなかった?」


「いえ、大丈夫・・・です、凛々奈さんこそ怪我が・・・早く・・・病院に行かないと」


 まだ少し意識が朦朧としているが怪我はしていないようで少し安心する。


「私は大丈夫だから、こんな時まで人の事心配しなくていいの!」


「でも・・・背中」


「大丈夫だって! みーちゃん、帰ろっか!」


 眩しいくらいの笑顔を向けて言う、するとみいなは安心した用に目を瞑り眠ってしまった。


「無理も無いよね、まだ子供なのにこんな事に巻き込まれて」


・・・・本当にこの子が帰りたいのは両親と普通に暮らしていた平和な時間なのだろう、心の底から安心出来る場所が これからのこの子には必要だ。


「その為に、私は・・・」


少し目を伏せ考える。


「いやいや!先ずは私の家に帰ってゆっくり休ませてあげないと!」


 気持ちを切り替えて私は少女の体を抱き上げ通路を渡り階段を降りる。


「あ!私窓から忍び込んだんだった!」


 みーちゃんを抱いたまま窓から飛び降りる訳にはいかないなと出口は何処かとさがしてみたが後ろを見ると。


「おっ!さっきの私ナイス!こっから出られそうね!」


 そこには先程の戦闘で凛々奈の撃った"白の衝撃"

で空いた穴が空いている。


「あっそういえば!!」


 凛々奈は先程打ち倒した男の元へ駆け寄り白衣の中を調べる。


「大事な相棒を忘れる所だったわ」


 奪われていた愛銃 パレットバレットを取り戻した。これで此処にもう要はない。


 少し身を屈めて穴を潜り倉庫の外へと出る事が出来た。そしてふと夜空を見上げると綺麗な満月が輝いていた。


「月が綺麗だよ、みーちゃん」


 腕の中で眠る少女を見ると安心したように安らかに眠っていた、頭を支えていた右手を少し動かして少女の髪を撫でる。


「もう大丈夫だからね」


 優しく声を掛けてから凛々奈は歩きだす。そして少し歩いてから急に立ち止まりバッとみいなを見つめ直す。


「さっきみーちゃん凛々奈さんって言って無かった!!????」


「うーん 可愛いやつよのう、なんなら凛々奈お姉ちゃんにして貰おっかな!!」


 少女は一人上機嫌に歩いていった。




 倉庫の中、血溜まりに倒れる男の口が動き出す。


「見つけた、 何れ・・・たどり着く」


「6組の"調整者"と"超越の種"《ExSeed》・・・」


「誰がこの世界を手に入れるのかなぁ」


「俺は・・・お前に張ってるんだぜ、アーク・・・」


 そして今度こそ完全に動かなくなった。


 ピ ピ ピ ピ ピーーーーーー


男の掛けていたメガネから機械音と音声が鳴る。


「装着者の死亡が確認されました、記録されていた映像と音声を指定されていたアドレスへ転送開始します、送信先 アークラインハルト」


 ピーーーーー


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