第9話 地上への夢到達は遠そうです
トントントン……トントントン……パラパラパラパラ……
この階層に来てはや三ヶ月が経とうとしているが、僕は毎日のルーティンワークと化した仕事を繰り返している。
干し肉作りだ。
なにせこの階層、上質のお肉の原材料が豊富過ぎて。毎日毎日ブラッドリーボア(マスター・雑魚問わず)襲いかかってくる。僕ももう慣れたもんで砂埃が彼方に見えた瞬間エアウォークで上空に待機、次々とその眉間にナイフをぶっさしていく。
そして血抜きをして解体し……処理に困る。イマココ。
焼いて食べるにも限度がある。ライガは食料は不要だし、ガッジーラが生で食べても余りある。僕?僕は消費計算にいれないでほしい。
なにせ、大きさがトラックだよ。食べきれるわけがないが放置すると余計敵を引き寄せる原因ともなるし、腐ると悪臭に苛まれる。よって加工するしかないわけだ。
「次の階層にいかないの?階段、見つけたよね?」
そう。次の階への階段は見つけてある……が
「許可できぬ。主はまだまだか弱い。最低でもここの階層の魔物を全て倒すまでは許可を出しかねる。魔法もまだ弱い。他の階では魔法でしか倒せる魔物も……」
「ああ、わかったわかった!修行ね、修行!」
……という訳だ。この階には物理攻撃の効く敵が集結しているらしく、レベル上げに丁度いいとのコト。僕は毎日ガッジーラから魔法指南を受けている。もう師匠って呼んでもいいかと訊ねたら丁重にお断りされたけどね。
この階層で出会う魔物も増えた。作ったログハウスをマジックボックスにいれて拠点を転々と移動し、適当な場所でログハウス召喚。
どんだけ入るのよ、このマジックボックス……って∞(無限大)って書いてましたね。チートが過ぎます、ゼッタイこれ異常なやつ。
毎日どこかしらから襲ってくる魔物。今のところ僕の倒した魔物は
ブラッドリーボア、マスター個体および通常個体。これはトラックイノシシ。塩で食べても煮ても美味い。ああ調味料が欲しい。切実にカレー粉欲しい。醤油と味噌も欲しい。それよりなによりお米食べたい。ショウガどこかに生えてないかな?
猫科の魔物が出ると聞いて使役魔法ぶちかまそうと手ぐすね引いて待ってたら
巨大な、トラック2台縦に並べたような猫が襲ってきた。
ヘアレスグレーターキャット。
……そう。毛が無い猫だった。モフれない!
むき出しのだぶだぶの皮はとても固く、刃物を通しにくい。ただ
首の裏に柔らかそうな毛の塊のような場所があって毛色も違うのでそこでモフモフできるかもしれないが残念ながらそここそが唯一の刃物を通す急所で、相手の力を削ぐには其処を集中的に狙うしかない。当然唯一のモフモフがズダボロになる。
『使役したい魔獣は弱らせてから【配下に下れ】と念じると成功率アップなのです~♡』
などとアナライザーのライガが言うから……
なお、ヘアレスグレーターキャットの肉は凄く臭い。塩だけとかゼッタイムリ。一週間はきっぱなしの靴下のような臭いがする。牙やら爪やらを取ったらあとは
掘った穴にボッシュートだ。ごめんな、血肉にしてやれなくて、と合掌する。
ワニ頭の巨大な獣人?が襲ってきた。ワニの頭に手が二対。足が一対で長いワニ尾。全長2.5メートルくらいでやや小ぶり。
ドラゴニュートの進化前かな?同士討ちは不味いよね?とガッジーラに聞いたが
「獣人ではござらぬ。知能の劣る脳筋の魔獣ゆえ遠慮無く倒してくだされ。皮は良い革になりますぞ アリゲートスピナーという魔獣ですな」
はい、そうなんですね……。って滅茶苦茶襲ってくる足早いんですけど!ワニ頭は見せかけか?!油断を誘う罠か?!
この階の中で一番俊敏かもしれない。腕四本あって滅茶苦茶武器で武装してるし、なんなら鎧まで着てるんですが?魔獣どこで武具調達してんの?!!
『産まれながらに身につけてるのですよ~』
僕の考え筒抜けのライガさん、少し自重して!気が抜けるから!
僕の空間魔法はマジックボックスだけでは無いぞ!【短転移!】僕は短距離転移を利用し、相手の背後に移動しては鎧の無い膝裏の腱を牙ナイフで切断し、動けなくなった所を狙って首をおと……せない。めっちゃ硬い!なので……
念じると掌にぷかりと水の珠が作られる。それをだんだん大きくしていって……
「水疱!」
動けないワニ男の頭をすっぽりとイン。暫くしたら窒息して昇天されるのを待つ。
全然格好良くない戦い方だが、ガッジーラは褒めてくれた。
おかげ様で水魔法のレベルはもうLv5だ。どれだけ沢山のワニ男狩ったかもうわからない程沢山でてくる。皮を剥ぎ取るのはグロくて最初は胃液吐いたがもう慣れた。
人間、慣れって怖い。
っていうかまだ種族不明なままなのはどうしてか。エルフっぽいので勝手にエルフだと思ってるけど。あ、でも僕肉好きだし、どうなんだろう?この世界のエルフは肉食かな?
まぁ細々とした小さい魔物は僕らから逃げていくので去るモノは追わない。
そして一番苦労したのが……
「ほほう、漸く出てきましたか」
ガッジーラが満面の笑顔してる。怖い。顔怖い。
「モフモフだけど……これはちょっと……」
巨大な鳥だ。めっちゃでかい。トラックイノシシ3周り分くらいあるし、ふっさふさの羽毛に覆われていてモフモフだ。実にモフモフだ。だが……
「燃えてるのはちょっと……」
この鳥、全身燃えてる。めっちゃメラメラ炎で輪郭ぼやけてるし、火花が散ってくる。熱い、熱すぎ。それに
「この階のボス張らせて頂いておりやす!イフリートフェニックスと申しやす!坊に楯突く気はこれっぱかしもありやせんので是非ともアッシもお供に……!」
「お気持ちだけ頂きます……」
まさかのサンシタっぽい口調&売り込みに驚いた。でも傍に居るだけで汗が噴き出す位熱いし、夏とか地獄じゃん。モフモフだけど触ったら……ギャアアア
「そんなコト言わずニィィィ!」
フェニックスは子供を抱きかかえた。子供はメラメラと燃えている。
『火耐性がぐんぐん上がってますよぉぉ~あ、聖魔法のサンクチュアリ、発動して体力をリカバリーすると火耐性をあげる良いチャンス!』
「あづいー!ギャアア!!」
そう言いながら僕は泪目になりながらサンクチュアリを己にかけ続けるのだった。
火耐性はLv1から5まで上がったよ……
そして追いすがる鳥から転移で逃げておさらばしたのだった。
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