続・10月24日(夜)後編
幼馴染の亜紀はどさくさに紛れて大胆になってくる
亜紀が静かに部屋の扉を開いた。
もうやり損にはならないように、きちんと手を前に添えて姿勢をよくしてお辞儀をする。
「お帰りなさいませ。亜紀お嬢様」
「………」
頭を上げて姿勢を良くする。亜紀は何も言ってこない。
ただ……顔を赤くしてメガネの奥の目が見開かれている。何か言え。恥ずかしいだろ!
「いい………」
「は?」
「すごく良かった……」
「あ、ありがとう……いや、お礼言うところじゃない!!これで、2個目だからな!!」
褒められて危うく罰ゲームというのを忘れるところだった。
「それで?3個目は?」
「あ、えっと……」
亜紀がポケットに入れていた、罰ゲームを書いたらしい紙を見た。
「じゃあ、次は……『萌え萌えキューン』と―――」
「ダァぁ!!シャァぁ!!」
「!?」
亜紀が突然奇声を上げたあたしにビックリしている。
「ま……まさか……それを言わせる気か!?!?」
「罰ゲームだからね」
「あたしは知っている…有名なけい⚪︎ん!のセリフだからな……」
「じゃあ、できるね。ハートは胸元の前だからね」
胸元がハート型に開いてる上に手でもハートを作れと言ってるのか!?けい⚪︎ん!は胸元は開いてなかったぞ!セクシーすぎて著作権侵害になるんじゃないか!?大丈夫なのか!?
「大丈夫だよ。私しか見てないから」
「頭の中覗いたのか!?!?」
「??」
どうやら違うらしい。亜紀は小首を傾げている。
「わ、わかった。罰ゲームだもんな……一回しかやらないからな!!」
うゔんっとあたしは喉の調子を整えた。全力だ。全力一回で終わらせる!!
「スゥ………萌え萌え〜キュン♡」
あたしは全力でやった。亜紀の前で一回転してから手でハートを作り胸元へ………ウィンクまでサービスした。
「ど、どうだ!!」
亜紀は真剣な表情をしている。
「恥じらいが足りない……」
「はぁ!?!?」
「アニメではもっとこう――」
「全力でやったのにダメ出しするなーー!!」
あたしの全力が家に響いた。
「そ、それで4個目はなんだ?」
「じゃあ、次は……」
罰ゲームが書かれたそれを亜紀は眺めた。もう上から順にやっていけばいいんじゃないのか?
あたしは亜紀が持つ紙を覗き見た。
「ちょ!?!?何これ!?!?」
「罰ゲームだけど?」
何平然と言っているんだ!?
罰ゲームは11個のはずなのに書かれている紙には11個どころではなかった。
小さめのメモ用紙にはぎっしりとありとあらゆることが書かれている。
「膝枕をする。膝枕をさせる。“えっちなことはいけないと思います“!?!?愛してると耳元で囁く……好きと大声でいう……抱っこする。後ろから抱きしめる。目覚ましボイス収録、毎日ちさきを起こしに行く……」
これ罰ゲームだよな!?あたしに恥ずかしいセリフやさせたい事がみっちり亜紀の願望が小さいメモ用紙にぎゅうぎゅうに詰められている……
「ん?………この“舐めて“って?………」
「………」
「どこをだよ!!!!!」
あたしは亜紀の持っていたメモ用紙を奪い取りクシャっと丸めてゴミ箱に叩きつけた。
「ダメだよちさき。あと8個罰ゲームが残ってるんだから……」
「くっ!!じゃ、じゃあ後ろから抱きしめて耳元でセリフ言うからそれで罰ゲーム終わりでいいか?」
せめてもの抵抗で罰ゲームを選んだ。
亜紀に18禁な罰ゲームを選択される前に自分から罰ゲームを受ける方がいくらかマシだと思ったからだ。
「しょうがないな……」
亜紀は渋々と言った感じで了承してくれた。
よし!あとは亜紀を後ろから抱きしめて…さっきの紙に書いてあった事を何個か言えば終わりだ。
「亜紀こっち来て」
あたしはベッドの前に座らせた亜紀を後ろから抱きしめた。
最近は亜紀とこうやってくっつくことが多いから慣れたもんだ。そして亜紀の耳元に口を近づけていく。
……あ、これ割と恥ずかしいぞ?後ろから抱きしめて正解だった。亜紀の顔を見ながらだと心臓が大乱闘を繰り広げてたかもしれない。今でさえ小さな類人猿がバシバシ叩いている感覚がある。
「亜紀」
耳元で亜紀を呼ぶと肩がピクッと跳ねた気がする。
「えっちなことはいけないと思います」
「愛してる」
「好き」
「おイタはいけませんよ」
「私だけを見なさい」
言うたびに亜紀の耳が赤く染まっていくのがわかる。
「私の事、好きなんでしょ?」
亜紀が暴れた。
ガバッとあたしから離れて囁かれてた方の耳を両手で塞いでいる。
亜紀は耳だけじゃなくて顔も真っ赤だった。あたしの罰ゲームだったのに亜紀の方が恥ずかしそうにしている。
「亜紀?あと一個罰ゲーム残ってるんだけど……」
「もうダメ!」
亜紀は耳を塞いで目は涙目だった。だからこれ、あたしの罰ゲームだったんだけど……
「じゃあ、もう終わりでいい?」
「それもダメ!!」
あたしは脱ごうとしていたメイド服の手が止まった。
「まだやるの?」
「………」
亜紀は潤んだ瞳とハの字にした眉と赤い顔で手を両膝で握って上目遣い。
なんでそんな表情をしてまで罰ゲームをしたがるのか……もういいじゃないか、10個も罰ゲームをしたんだぞ。普通なら終わりでいいだろう。
そんな顔で見つめられたらやらないなんて言えない。仕方ないので最後の罰ゲームは何か聞いてやろうじゃないか。
「最後の罰ゲームは何?」
「………」
「………」
「………」
え?ここで黙っちゃう?せっかく最後は亜紀に決定権を渡したのに…
「やらないの?」
「や、やる!!」
「うん。何を?」
「………」
「………」
「………」
また!?罰ゲームを何にするか悩んでるのか?ゴミ箱からあの紙を拾ってきた方がいいのか!?いやでも、あれはやばい事がオンパレードして行列作ってたからできたら拾いたくはない………
しばらくの沈黙。亜紀はソワソワとし始めてようやく口を開いた。
「――――たい……」
「ん?」
やっと喋ったと思ったらよく聞き取れなかった。
「さ、触りたぃ……」
「えっ?」
聞き取れても聞き返してしまうくらい衝撃だった。
「触りたい」
「ど、どこを??」
亜紀が指差すところ。
それは今着ているメイド服の1番セクシーな部分。1番肌が露出して見えてしまっている胸元。
それと申し訳程度にある谷間。他はいたって普通のメイド服なのにここだけぱっくりとハート型に肌が露出されギリギリ下着は見えないけど、着る人によってはガッツリと谷間がバインと出てしまう唯一のエロい部分だ。
あたしは硬直した。
いやいやいや!!こんな所を触りたいなんて、幼馴染アンド友達としての度がすぎてるんじゃないかな!?あたしの胸を触るくらいならもっとバインバインな人に着せてボインボインな胸を堪能した方が楽しかったりしない!?!?
「え、えっとーーー」
「罰ゲーム。でしょ?」
亜紀のメガネがきらりと光った。
さっきまでの潤んだ瞳は何処へ!?
今はほんのり赤い顔で微笑んでいる。
亜紀は容赦なくあたしに迫ってくる。
あたしは後ずさるがあっけなく壁まで追い込まれて迫ってくる手の行方を目で追っていた。
「最後の罰ゲームね」
亜紀は触る直前に一言呟いて、あたしの申し訳程度にある谷間に指をそっと差し込んだ。
あたしの心臓は頑固な類人猿が大乱闘を繰り広げて、見えないが自分の顔が真っ赤だと確信した。
目の前の亜紀もまた真っ赤な顔をして谷間にさした指をムニムニと動かしている。
少しずつ奥に移動してくる指が徐々にゲージを貯めていき、感触から頂点が近い事を容易に想像ができた。
「あ、亜紀!!」
流石にこれ以上はやばいと思って亜紀に静止をかける。
このままいけば場外乱闘を開始しそうな心臓付近をあたしは手で押さえた。
「これで罰ゲーム終わりだから!!」
「………」
亜紀はムスッとした表情をした。
そんな表情をしてもダメなものはダメなのだ。これ以上進めば幼馴染の枠をぶち破って一線を超えてしまう気がする。いや、亜紀と一線を越えるとか想像はできないけど!!
明日朝早いから亜紀の家に泊まることになったのにこんな遅くまで何をやってるんだ。
あたしはさっさと亜紀の部屋着に着替えて布団に潜り込んだ。
しばらくは大乱闘の余韻が残ってすぐに寝付けなさそうだけど、布団にくるまれば落ち着けると思ったのだ。
亜紀があたしの布団に入り込んで一緒に寝だした。――おいっ
寝付くまでかなりの時間を要した……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます