10月13日(昼)
幼馴染の亜紀は学校でもどさくさに紛れて触ってくる
ちなみに今日の通学電車の中いつもの扉の前で私を守るように立っていた亜紀は、私の足の間に足を滑り込ませて太ももが触れ合うような体勢をとっていた。お互い学校の制服でスカートを履いているので太ももで生足同士の触れ合いはちょっとドキドキした。
そんな一駅分の触れ合いの時間を過ごした日のお昼休み、いつものように私の席の後ろに座る凪沙に振り返り話しかける。
「お昼食べよー」
「いいよぉ」
ニコニコ笑顔で返事してくれる。
凪沙とは高校に入学した去年知り合った。登校初日に亜紀と別クラスになって特に知り合いもいなかった教室で「私、天城凪沙って言うんだ。よろしくね?」と手を差し出しながらニコニコと挨拶をしてきたのだ。
ギャルな私に話しかけてくるなんて変わり者だななんて最初は思った。凪沙は茶色みがかった髪をまっすぐ背中あたりまで流していて爪もちゃんとお手入れがされているとわかるくらいツヤツヤして、薄く化粧しているのであろう唇まで潤った女子力の塊のような女の子だった。
その後話してみてわかったのが、頑張り屋ですごく話しやすい子で、メイクも「練習したんだぁ」と話してたし高校も頑張って勉強して今の高校に入れたんだ!って拳を握りながら話していた。
そんな女子力の塊(凪沙)とは今年も同じクラスになれて、私の数少ない友人として仲良くさせてもらっていた。
凪沙がいそいそとお弁当袋をカバンから取り出した。お弁当は毎朝凪沙が自分で作ってるらしい……
「冷凍食品使ってたり前の日の残りだったりを詰めてるだけだよぉ」と言っていたが、毎朝自分でお弁当を作ってるその行為が凄いんだよ!って心底思った。いや、言った。思いっきり叫んでたわ。クラス中から注目を集めるくらいには……
私はというと来る途中で買ってきたメロンパンとミルクティー…凪沙の机の端っこに置かせてもらう。
1人で自分の女子力の低さに虚しくなっていると凪沙がお弁当の蓋を開けながら私の後ろの方を見た。
「亜紀ちゃんだ!どうしたの?」
「亜紀?」
私も振り返ってみると、亜紀がお弁当を持ちながら立っていた。
「あれ?どうしたの亜紀?いつもの友達と食べるんじゃなかったの?」
亜紀は図書委員をしていてその友達と食べているので、いつもお昼は別々だった。
「今日は職員室に用事があるって…」
言葉少なめに平坦な声で言う亜紀は学校では基本的にクールな感じだ。電車の時みたいに、コロコロと表情を変えて顔を赤らめたり慌てたりはしない。電車の時の亜紀も可愛いから学校でも見せてくれたらいいのに…とちょっと思うけれど、私にだけ見せる表情なんだったら優越感が湧く…優越感?何故?……いや今考えるような事じゃないな。と我に返った。
「じゃぁ、亜紀も一緒に食べよ」
「食べよ食べよ!」
凪沙が誰も座っていない隣の席から椅子を借りて私のすぐそばに並べた。
こういう事をサラッとやってくれるところも女子力なんだと思ったが――これは女子力なのか?凪沙の良い人の部分があらわれただけか……
亜紀は少し微笑んで「ありがとう」と言って凪沙が用意してくれた椅子に座って私のメロンパンの置いてある反対側の端にお弁当を置いた。凪沙もグッと親指を立てて亜紀に笑いかけていた。なんだその親指は!?
各々用意したお昼ご飯を食べ始めると凪沙がお弁当のブロッコリーを箸で突きながら話し始めた。
「そういえばこの後のLHRは球技大会のチーム決めなんだって、何やるか決めた?」
「あー、女子はバレーボールとソフトボールで男子がバスケとサッカーだったっけ?」
球技大会はグラウンドと体育館で分かれて行われるので体育館ではバレーボールとバスケ、グラウンドではソフトボールとサッカーが同時に行われる。チームはどれも1チームでどちらか一つに参加しなければならなかった。
あたしは亜紀と同じチームになるくらいしか決めてなくてどちらの種目に出るかまでは考えていなかった。
メロンパンを一口齧りながらどっちにしようか悩んでいると、凪沙がブロッコリーにケチャップを付けてまた箸で突いている――ブロッコリーが惨劇の現場みたいになってきていた。
「私は外より体育館が良いからバレーボールにしようかな?2人は?」
「じゃぁ、あたしもバレーボールにしようかなぁ。亜紀もそれで良い?」
「ちさきがそれで良いなら」
惨劇のブロッコリーを箸で掴んでズイッとあたしの口元まで寄せてきた。ケチャップまみれのブロッコリーをあたしにくれるらしい。まぁ良いけど……口を開けて受け入れる。ケチャップまみれのブロッコリーは意外と美味しかった。
凪沙があたしを見てニコッと微笑んだ。美味しいって思って口元緩んだのバレたか!?ミルクティーを飲んで誤魔化しておく。
「ちさきちゃんと亜紀ちゃんと私とあと3人でひとチームかな?被ったりしないと良いんだけど…」
そうだねと相槌をうちつつミルクティーを飲んでいると太ももに何かが触れた。
「――!?」
ビクッと反応してしまって、ミルクティーを吹き出しそうだった……セーフ……
横目で隣を見ると亜紀が先ほどより近づいているような気がした。目線を下げて太ももを見るとあたしの足と亜紀の足が触れ合っていた。
今日は太ももなのかな!?太ももデーなのかな!?あたしのとは違う感触の太ももはとても肌触りが良いような気がするけど、あたしはもう朝に太もも耐性ができたからね!太もものちょっとの触れ合いじゃびくともしませんよ!
あ、さっきミルクティー吹き出しそうだったわ……
そんなあたしの視線に気づいてないのか、亜紀は自分のお弁当の卵焼きを箸で摘んでいた。
あたしも気にせずメロンパンを食べようと口を開けた瞬間――
「んっんん!!」
口の中に卵焼きを突っ込まれた――急な襲撃にビックリしつつも美味しい卵焼きに口元が緩んだ。そんなあたしを見ていた亜紀は口をちょっと尖らせながら「毎日菓子パンばっかりじゃ栄養偏るから」と言いながら今度はプチトマトを摘んであたしの口元に持ってきた。
プチトマトもありがたく頂いたが
「急な卵焼きの襲撃はビックリするから!」と一応注意しておいた。
凪沙は「2人ってホント仲良いよねぇ」と言いながらちっちゃいおにぎりを箸でさらに小さくして食べていた。
お昼ご飯も食べ終えて片付けをしていると先にお弁当箱を片付け終わった凪沙が「トイレ行ってくるね」と教室から出て行った。あれからずっと亜紀とは太ももは触れ合ったままだったし、たまにお弁当のおかずが差し出されてくるし、いつもとはちょっと違ったお昼だったなと思った。
亜紀もお弁当箱を袋にしまい終わってこっちに振り返っきた。ちょっと口元を尖らせている。
「いつも「あーん」とかしてるの?」
「えっ!?」
どうやら亜紀は凪沙にあーんされていたあたしに拗ねているらしい。
「いつもあーんなんてしてないよ」
口を尖らせてる亜紀が可愛くてクスッと笑ったら、亜紀の目が細められた。
「ちさき―――」
「え?」
亜紀が急にあたしの太ももの上に手を置いた――ビクッと体が反応する。
今日は太ももなんですね!?と焦りながらもそんな事を思っていると亜紀が顔を寄せてきて耳元に息がかかる――
「卵焼き美味しかった?」
そんなことを耳元で囁かないで!!ゾクっと体中が震えてしまって
「〜〜!美味しかったよ!!!!」と立ち上がり叫んでしまった。
目をちょっと見開きながら私を見上げる亜紀と、クラス中から注目を浴びてトイレから戻ってきていた凪沙に笑われた。
太ももの感触と耳元の吐息と恥ずかしさから顔を赤くして静かにあたしは椅子に座った。
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