どさくさに紛れて触ってくる百合

シャクガン

10月1日

幼馴染の亜紀はどさくさに紛れて私の色んなところに触ってこようとする



それはいつ頃だったか中学?もしかしたら小学校からかわからないけれど、ここ最近では毎朝の通学電車の中がその現場に成り果てている。

悪く言えば痴漢行為と言えばいいのか?いや…相手は幼馴染の女の子で私も女なんですが…


今日も何やらソワソワと落ち着きがない。


亜紀は私より身長が高く肩口で切り揃えられた黒髪と縁の細い眼鏡をかけている。私とは正反対な真面目そうな見た目をしている。実際真面目な奴なんだけど…見た目ギャルであまり勉強が得意じゃない私を見捨てずに勉強の面倒を見てくれて進学校に一緒に進学した。もしかしたら、ただ私と一緒の高校に行きたかっただけなのかもしれない。いや、一緒に勉強をすると言う口実で私といたかっただけか!?それは自惚れすぎか…


「亜紀?どうしたの?」

「!?な、何?何もしてないよ!?』


両手を上げてバタバタと手を振っている亜紀につい笑ってしまった。これから何かしようとしてるって事かな?可愛いやつだ。


「だってなんかソワソワしてない?」

「し、してないしてない!!いつも通りだよ?今日も元気!ちさきと一緒に登校できて嬉しいなって!」


胸の前で指先を絡ませながらちょっと恥ずかしい事を朝の通学電車の中ちょっと混み出した車内で言ってくる幼馴染は今日も通常営業のようだ。


「そっか、私も亜紀と毎朝一緒に登校できて嬉しいよ」


ニカッと笑顔で言ってみる。


「!?」


何やら変顔を見れた。あー折角の可愛い顔が口を引き結んで絶妙な可愛げのない顔に変わってしまった。

そんな顔もできるんだな新たな発見だ。


プシュー


扉近くに2人で立っていると次の駅に到着したみたいで私の背中側の扉が開いた。

ここの駅は乗り込んでくる乗客が多くここから私たちの学校がある最寄駅まで結構ギュウギュウ状態になってしまう。まぁ一駅ほどの辛抱なので時間を変えたりしようとは思わないんですが、朝早く起きるの辛いし。


続々と乗り込んでくる乗客達に流されないように手すりに捕まっていると、亜紀が私を守るように体を近づけてきた。


「ありがとうね。亜紀」


身長が私より高い亜紀に上目遣いになりながら言うと、


「ま、毎朝この混雑はうんざりするよね」


ちょっと頬を朱色に染めながら目線を逸らされた。


その混雑のどさくさに紛れて触ってくる娘がいるんだけどね。亜紀っていう私の幼馴染なんですけど…

そう毎朝この駅から学校の最寄駅までの一駅しかないこの時間、私は幼馴染に触られるのだ。


ギュウギュウになってきた車内で私は幼馴染の女の子に守られるように手すりに捕まっている。亜紀は他の乗客に押されるように私に近づいてきた。


ギュッ


腰あたりに手を回された。

わかってはいたがいきなりだったのでビクッと体を反応させてしまった。不覚……


電車はそのまま次の駅へ走り出した。


亜紀の方を見上げると顔を赤らめながら窓の方を見ている。

そんな視線に気づいたのか目だけがこっちを向いた。


「今日はいつもより混んでるよね」

「そうかな?」


いつもの平日、いつもの電車、いつもの車両、そんないつもの混雑じゃ多少人が増えたところで大差ないんじゃないかと思うのだが、いつもこうして守られるように電車に乗ってるからわからないだけかもしれない。

腰に回された手はどうやらそのまま離さないつもりのようだ。


亜紀と向かい合わせで密着状態のこの状況で少し目線を下げると亜紀の胸が目の前にあった。


ふむ…亜紀の胸は意外と大きい…ブレザー越しだから柔らかさまではわからないが、ブレザーを押し上げてる目の前の胸はとても柔らかそうだと思う。


そう言えば以前何カップか聞いた事があったが私よりあった。別に悔しくはない

小学校高学年の頃身長も胸も急成長していた亜紀を思い出す。別に悔しくはない!

私が亜紀の胸のサイズを聞いたということは逆に亜紀にも何カップか聞かれたので答えた後、「胸は大きさじゃないからね!」とよく聞く文言を言っていた。2カップくらい差があったが…別に悔しくはない!!!(三回目)


そんな昔の事を思い出していると腰に回された手が徐々に下に下がってきたような気がする。ん?これは気のせいじゃない。下がってきてるな!?


亜紀の胸を見ていた目線を上げてみると先程より顔を赤くして窓を見ている亜紀が見えた。


「亜紀大丈夫?」


10月も半ばでだいぶ涼しくはなってきたが、この満員電車の車内じゃまだまだ暑い。


「え!?大丈夫だよ!?」


バッとこっちを見て目を大きくして声を上擦らせながら答えてくれた。いや、そんなに必死にならなくても…と笑ってしまった。


「顔すごく赤いよ?暑い?」

「う、うん!今日暑いよね」


慌てて腰に回してない方の手で顔を隠した。

腰に回した方の手は離さないんだね。こんなに密着してるから暑いんじゃないかと思うけれど、きっと別の意味で赤くなっているであろう顔を手でパタパタと仰ぎ出した。


「もうすぐ球技大会だね」


特に意味もなく話題を振ってみる。


「私球技苦手だからあまりやる気出ないよ」


確かに亜紀は球技というより運動があまり好きな方ではない。でも、せっかくの球技大会だし一緒のチームが良いなと思ってる。去年は別のクラスだったから一緒にはできなかったけど…


「今年は同じクラスだし一緒のチームになろうよ」

「え!絶対なる!!」


急に真顔になって言うから、笑ってしまった。笑った私にブツブツと文句を言っていたが放っておこう。


窓に目を向けると秋の爽やかな青空が流れていた。腰に回されていた手は徐々に下がってきていてお尻の上辺りまで来ていた。



流石に下がりすぎでは!?!?



どこまでいくの!?お尻?スカート越しとはいえお尻までいっちゃう!?

いや別に嫌なわけじゃないけど、流石に電車の中ですよ!?ちょっとずつ下がってくる手に今度は私の方が焦り出す。


「亜紀―――」



プシューー


電車の扉が開いた。

人混みで流れるように外に出て、いつの間にか腰に回されていた手は離れていた。


外の空気を吸って息を吐くと、隣にいた亜紀は私を覗き込むようにして「行こっか」と微笑んだ。

その顔は先ほどまでの赤く染まった顔ではなく、秋の涼しい風のような学校でよく見るクールな彼女の姿だった。

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