龍皇子要という女の子
『はい。龍皇子です』
「悠木です」
『悠木さん。どうなさったんですか?』
凪沙を家まで送り届けてから帰宅後。
龍皇子さんに電話をかけた。
「今日は色々とありがとうございました」
『いえ、こちらこそ悠木さんのおかげで凪沙様の危機を救うことができたので……ありがとうございます。それと山川結さんと田中さんにも……』
「結にはさっき連絡しました。まぁ……あれでしたけど……」
―――凪沙ちゃん見つかったの!?!?よがっだぁ〜〜(泣)私がバイト先まで送っていけばこんなことにならなかったのに〜。凪沙ちゃん怪我とかしてない!?何もされてないよね!?……えっホテル!?!?ホテル連れてかれたの!?大丈夫だった!?この後連絡しても大丈夫かな!?色々あって疲れてるかもしれないよね!?でも、声聞くまで心配で寝れないよぉ〜。ちょっとだけ!ちょっとだけならいいよね!?……えっ!?ダメ!?!?そんな!!月曜日寝不足で学校行けなくなっちゃうry…………ポチッ
凪沙の事となるとうるさくなる結の電話は途中で切った。凪沙が無事って言う報告と龍皇子さんに連絡してくれてありがとうと伝えられたから良しとする。
『山川結さんも相当凪沙様がお好きみたいですからね。仕方ないですわ』
「それと……あの2人ってどうなりましたか?」
『それはもうキツくお灸を据えてあげました。もう二度と凪沙様に近づこうなどと思わない程度には……生かしておいただけ有り難く思っていただきたいですね』
これは具体的に聞くのは恐ろしい……これ以上の追求はやめておこう
「龍皇子さんは凪沙のファンじゃないって言ってたのに相当凪沙の事が好きですよね?」
『…………』
「龍皇子さん?」
『………わ、わたくしは……凪沙様を、お慕いしておりますので……ファンではありません』
「お、お慕いって……」
『この気持ちはお伝えすることはありません。私はいずれ親が決めた方と結婚をする予定ですので、お伝えしても仕方ない事、凪沙様を困らせるようなことは不要です』
「………」
『ふふ。お気になさらず。私は心から凪沙様の幸せを願っているんですよ?………悠木さんのことも応援しております』
「え?」
『あなたなら凪沙様を任せても大丈夫だと思ってます』
「な、なんで知って――」
『あれだけ必死に凪沙様を追いかけておいて今更ですよ?それ以前からのこともありますし』
「そ、そんなに私ってわかりやすいですか?」
『そうですね。透明なガラスくらい透けて見えますね』
「それ丸見えじゃないですか!!」
龍皇子さんは楽しげに笑った。
『凪沙様は気づいてないでしょうけど』
「気づかれてたら終わりだ………」
『そうですか?』
「?」
『凪沙様は優しい人ですからね』
「それは知ってますけど……あの……龍皇子さんと凪沙の馴れ初め聞いてもいいですか?」
『気になります?』
「凪沙から少しは聞きましたけど……なんで凪沙の事をそんなに慕っているのか気になりますね」
『そうですねぇ。凪沙様との出会いから話しましょうか』
少し長くなりますよ?と前置きを置いて龍皇子さんは小学校の時の話を始めた。
小学校低学年の頃、私は友達と呼べる子がいませんでした。
龍皇子家はここの地域を治める名家で名前が知れ渡っているため、そこの娘である私に近づいて嫌われるような事があれば何をされるかわからない。
世帯ごと消えてなくなる。追放される。路頭に迷う。有る事無い事色んな噂がされて、子供達は親の言いつけで私に近づかないように言われていたんでしょうね。
そんなのはただの噂でしかないのに、ちょっと先祖代々目つきが悪いので怖がられることの方が多かっただけなのに。
それでも遊ぼうって誘ってくる女の子がいたんです。引っ越してきたばかりの転校生。目つきが悪い私にも優しく笑いかけてくれて、手を取って遊びに誘ってくれました。
転校してきたばかりだから龍皇子家のことも知らなかったんでしょうね。今だからわかりますが、知っていても凪沙様は話しかけてくれたでしょう。いつも1人でいる私のところに、友達になろうって言いにきてくれると思います。
誰にでも優しい人。凪沙様が話しかけて遊びに誘ってくれるようになって、徐々に色んな人との交流も増えました。
色んな人と交流が増えても1番はずっと凪沙様でした。優しい笑顔で笑いかけてくれるのが嬉しかったんです。泥だらけで遊ぶのが楽しかった。
でも、大きくなるにつれて気づいたんです。凪沙様の事が好きなんだって、男の子の友達も女の子の友達もできたけど、1番は凪沙様で揺るがない気持ちを知りました。
知ったと同時に絶望もしました。
私は龍皇子家の人間。いずれは親が決めた人と結婚をする。それはずっと言われてきた事でした。
気づく前までは受け入れて納得もしていました。気づかなければよかったと後悔もしました。中学生の頃少し凪沙様と距離を置きました。思いが薄れて欲しいと願って。それでも、凪沙様への気持ちは薄れる事なくずっと心に残り続けたんです。
中学の頃の凪沙様は初めて彼氏を作りました。すごく嫉妬したのを覚えています。すぐ別れたと聞いてホッとしたのも束の間。女遊びの酷い相手だったと知って怒りが湧きました。
高校に入って少ししてから、また彼氏を作ったと聞いて不安になりました。どんな相手か調べていくうちに体目的の男だとわかりすぐ別れるよう遠巻きに手を尽くしました。
大人びていく彼女は色んな相手から声をかけられるようになっていき、また危ない相手と付き合ってしまうんではないかと恐れました。私が凪沙様の恋人になれないけれど、凪沙様を幸せに導くことはできる。
それで立ち上げたのがファンクラブという組織です。立ち上げはしましたが、会長という立場になるつもりはありませんでした。しかし、他の人からまとめる人が必要だと言われてしまい私がまとめ役としているだけです。
凪沙様の幸せを願う人たちを集めて作りました。
それがどういう訳か凪沙様好きの人の集まりになって、今ではファンクラブ会員の人が告白をしにいってしまう状況になってしまいましたが……
静かに龍皇子さんの話を聞いていてわかった。
「好き過ぎじゃん」
『多分あなたが凪沙様を好きという気持ち以上に私の方が凪沙様を好きですよ?』
「ホント凪沙って天然タラシだなぁ……」
『否定はしません。そこも凪沙様の魅力ですので』
『それでは次は悠木さんの話をお伺いしましょうか』
「ええぇ!!私!?あー、もう寝る時間ダー。早く寝ないとー」
『ちょっと!悠木さん!?!?』
「………また今度ね?」
『全く……』
「はは。話してくれてありがとう龍皇子さん。私がんばるね?」
『えぇ。応援してます』
「おやすみ」
『おやすみなさい』
龍皇子要という女の子は今も昔もこれからも凪沙の事を慕っている女の子。
凪沙の幸せを願っている女の子。
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