第7話 突然のメール

 配信画面から野球中継の画面に切り替えながらふと、自分のスマホを見てみるとメールの通知が届いていた。


『from ゆっちゃん』


「あっ、ゆっちゃんさんからじゃん!なんの要件だろう?」


 ゆっちゃん、とは私がVtuberとして活動するに当たって懇意にしていただいた絵師さんだ。

 具体的にはアバターを書いてもらった人。所謂ママという人に当たる方だ。


 そんな恩人とも言えるようなゆっちゃんさんだが、私が配信を始めて以降、お互いに連絡を取ることががなくなっていき、次第に疎遠になっていた。


 そんなゆっちゃんさんからの連絡だ。

 流石に野球観戦よりも優先してみなければならないと思った私はそのメールを開封する。


 するとそこには


『これでどうですか?』

 という少ない本文とともに一枚の画像ファイルが添付されていた。


「これでどうですか……?急にどうしたんだろう?」


 元々口下手な方だったから、よく連絡を取っていたときもこんな感じの文面が送られてきていたことが多かったのだが、久しぶりなメールなだけに気になった。


 とりあえずその画像ファイルを見てみよう、という気軽な感じで開いてみる。

「……ッ⁉」


 そして絶句した。


 そこにあるのは私の――月狐あかねのアバターの絵。


 もちろんそのアバターを元々書いたゆっちゃんさんが書いた絵だから似顔絵、というよりもそのままの月狐あかねだ。


 ただしいつも私が使っている月狐あかねのアバターと違っている点が一つ。


 服の前側には『Soft Bank HAWKS』と書かれた。

 そして服の後ろ側には『AKANE』という背ネームと『99』という背番号が入った服――つまりそう、ユニフォームを来た月狐あかねがいたのだ。


 「すごい……!」

 私はそう言葉を漏らすことしかできないくらい、感動で固まった。

 現実世界でソフトバンクのユニフォームを買って着たことはもちろんある。

 そのときも興奮して口元がニヤつくのを抑えることができなかったが今回はそれを超える興奮だった。


 しかし、見惚れること一分、我に返った私はゆっちゃんさんにメールを返した。

「これむちゃくちゃすごいですね!むちゃくちゃ今感動しています!本当にありがとうございますっ!」


 自分の心に浮かんできた言葉をそのまま打ち込んで送信する。


 すると直ぐに返信が帰ってきた。


「今の配信を聞いてたらソフトバンクホークスの応援配信をするみたいな流れだったので軽く描いてみました。背番号は西田さんの好きな野村選手の番号を採用したのですが気に入っていただけましたかね?」


 私も直ぐに返信した。

「すごい気に入ったよ!これってもう配信で使えたりするの?」

「これはまだ軽く描いた絵の段階だからもうちょっとかかりますけど2,3日時間をくれたら配信で使えるようにできると思います」

「ほんと⁉楽しみにしてる!」


 こうして『福岡ソフトバンクホークスファンバージョン月狐あかね』が誕生した

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