熱血野球ファンのアイドル系Vtuber、身バレして詰む。
ゴローさん
第1話 身バレ①
『今夜もご覧いただきありがとうございました。次の配信の枠は明日の同じ時間4時から5時50分に取ってありますのでまた遊びに来てくださいね!お疲れさまでした!それではー……コンコンッ』
コメント
:乙〜
:コンコンッ
:お疲れ様でしたー
:コンコンッ
:今日もかわええ
:まじでこれ見るの癒しになるよな
:また明日!
「ふうっ。配信終了っと。ん〜っ!」
ボタンを押し配信が終了したことを確認してから、軽く伸びをする。
私の名前は
グループや事務所には所属していない、所謂個人勢Vtuberとして活動していて、最近ありがたいことに登録者数が伸びてきている。
名前に狐が入っていることから分かる通り、私のアバターは頭に狐の耳が生えていて、首から下はJKのような制服を身にまとっていて、とても可愛らしくなっている。
これを書いてくれたイラストレーターの方(ママ)とは、前に働いていた職場の外回りのときに仲良くなった方で、今も仲良くしていただいている。
本当に感謝しかない。
「んっ、もう5時58分だ!やばい‼」
配信終了した直後のパソコンで時刻を確認した私は焦って、パソコンの画面を切り替える。
すると、パソコンには屋外にあるグラウンドが映し出された。
その観客席にはユニフォームを着ている人がたくさんいて、画面越しでもその盛り上がりが伝わってくるようだった。
「なんとか間に合ったー!っしゃ、応援するぞー!」
私はVtuber とはまた違う一面を持っている。
それは、福岡ソフトバンクホークスというプロ野球の熱狂的なファンの一人であるということだ。
画面が始球式の様子を写している間に、私は自分のスマホで今日のスタメンを確認していた。
「ほうほうほう……え、まじで⁉今日野村選手スタメンじゃん!7番サードでスタメンなんだ
!楽しみすぎる!」
twitter改めXを開き、公式アカウントのスタメン発表のツイートを確認すると自分の推しの選手がスタメンに入っていることに気がつく。
その事に気がついた私は興奮のあまり何も考えずにそのツイートの引用リツイートをのボタンを押し、『野村選手今日スタメンじゃん‼あつすぎるって‼楽しみすぎるやろぉぉぉ』と打ち込んでツイートした。
――このとき、なんのアカウントで引用リツイートしているか確かめていたら未来は変わっていたのかもしれない
そうこうしているうちに試合が始まった。
一番の中村選手がバッターボックスに入った。
「しゃあっ!先頭出るよ!」
画面越しに応援歌が聞こえてきたから、それに合わせて口ずさむ。
「新たな扉を今かーら開けー!愛する男さ中村晃!」
大きな声で叫ぶように歌う。
これがVtuberとしての私と、ホークスファンとしての私を混同できない理由だ。
Vtuberとしての私は清楚キャラで売っている。
最近チャンネル登録してくれた人たちをはじめとして私のことを見てくれているファンの方人たちはおっさん臭い野球ファンとしての私を見たらきっと幻滅してしまうだろう。
だからこの姿をみんなにバレるわけには行かないのだ。
――カン
心地いい音がスピーカーから流れる。
打球はぐんぐん伸びてスタンドの最前列に飛び込んだ。
ホームランだ。
「しゃあああああああ!まじで中村選手かっこよすぎるやろ!うぉぉぉぉ!大好きぃ!」
家で発狂しながら再びXを開き、
『しゃああああ!もう晃さん大好きぃぃぃ』
とツイートする。
「あ、充電ない……充電してくるか。」
右上の充電のゲージが赤くなっていることに気が付き、充電器のある寝室に向かう。
「フンフフーン♪」
先制ホームランを見て上機嫌な私は充電器に携帯を挿すと、鼻歌を歌いながら配信部屋に戻る。
その頃、Xの通知が頻繁になっていることなど知る由もなく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます