第12話 これが想い
私はその瞳を認めたくなかった。それは私が初めて彼を見た時と酷似しているのだと私はなんの躊躇いもなく感じた。
一年前の入学式。
「中学とは切り替えていかないとね」
祈織は意気揚々と学校に向かい、そして最初の挨拶をミスり、いじられ、それも悪化し虐められた。あの子達はそうは思ってないのだろう。いじめをしている人は虐めているなど思ってないのだから。
「あ、ごめんねw」
「い、いいよ」
上履きでくだらなくサッカーのように遊ばれたり自分の席に落書きされたり、こんなのでと思うのかもしれないけどそんなの初めてで苦しい辛い、こんなのどうしてされなきゃいけないの。自分の心が弱いよかも知れないでも。
祈織は自分の席を囲む周りの生徒がドンドン曇っていく、人の形も保てずただ真っ黒の傀儡に変わる。段々と涙が溜まるだが、何故か周りから言葉が聞こえなくなった。それに疑問を持ち周りを見るが周りの目線につられそちらを見るが、やたらと大きな音でペンを走らせる隣の席の男がいた
「…」
「…」
「えっと、藤浪くん?だっけ、どうしたの?」
「ん?あぁ、別になんでもないが、周りがやかましいからな少し俺も音出していいものだと思ってな。」
「なんか棘があるね?なんで?」
祈織を囲む男子、女子が眉間にしわを寄せ怒る中、まだ勉強を続ける海斗、完全に無視されたことにキレて一人の女子は海斗の机のノートを机に滑らせゆかに落とした。
「はぁ、頭悪い奴はこれだから嫌だ。お前がこいつへの嫌がらせを悪化させてる理由は一つだ。単に自分より可愛いと思われてるのが許せないとかだろ。アンタのIN…なんとかの裏垢を俺に付きまとう知り合いが見せてきた。別に俺は興味無いが何度も隣で不快な会話、不快な行動されるんだこれくらい、いいよな」
そう言って知り合いから貰ったという、ストーリーで吐いた暴言の数々をそいつに見せつけた。
「そんなの誰が信じるのよ」
「知るか」
「はぁ?」
「俺は別に興味ねぇよ、ただ俺の邪魔するなら嫌がらせでもなんでもしてやるよ、お前と同じでな」
完全に黙らせる海斗は静かになったと分かると、ふぅと安堵してまた勉強を続けた、そしていたたまれなくなった祈織の周りはみんな気まずくなって自分の席に戻った。
「ありがと」
「…」
ペンが進む進む、海斗を見ているのを気にもとめずそもそも気づいてるかどうかすらわからない。聞かれてなくて気まずくなってトイレに逃げようとした時海斗がペンを止めこちらを向いた。
「お前の名前いのりだったよな…自分のことも祈ってるだけじゃ意味ないと思うぞ時には自分から動かないと…始まらないぞ」
「…うん、そうかもね」
ここから始まったのかもしれない海斗をずっと追いかけ始めたのは。
「おい、平気か?祈織?」
「あぁ、うん、大丈夫ちょっと驚いちゃって」
ぼーっと考え事していたうちにお化け屋敷の中にもう入っていたらしい司は先に行ったのだろうあれで怖がりだからダッシュで進んだのだろう。
「あ?あぁこの小道具にか」
「あんまそういうの言わない方がいいわ、ちょ」
お化け屋敷。それは偶然が起こりうる場所。
吊り橋効果、旅先マジックだったりそれの全てがそろう場所。
祈織が躓き海斗が支える。そんな在り来りな少女が恋に落ちるシュチュエーション。大丈夫などの甘い言葉をかけられ……
「ご、ごめん」
「はぁ、ドジだなお前」
いつものため息と口の悪さ。だが、いつもの腐った目とは違い、楽しんでいるという感じの優しい瞳。いつも笑わない顔からは、今まで見た中で初めての笑顔。祈織の中で分かってしまった。落ちたと。動悸が激しい。さっきのモヤモヤは晴れそれと同じかそれ以上に苦しく熱い。
「ご、ごめん」
「おう、気おつけろよ」
そこから祈織は黙ってしまい、海斗も口下手なので何も喋らず反応せず終わった。お化け屋敷のスタッフからあんなくらい中勉強してるヤツいたと少し話題になった。
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