娯楽の呪いと青春ラブコメ

@kouaka721rook

第1話始まりと間違い。

勝手な見解だ。

国にとって、若くして子供をこさえる人と、高額収入の年配者。同じくらいの利用価値なのではないだろうか?老害を支える為の未来の奴隷

。死して、国に還元される金。

どちらも素晴らしい幸福を得て国にもお金をもたらす。どちらもWin-Winじゃないか!

だから俺は高収入で家族もいる素晴らしい家庭を作る為今も勉強中だ!



ゴールデンウィーク。

少年、藤浪海斗は今日も図書館に来ていた。5月だというのにやたら暑く、クーラーも入っていれば、無限に読書もできる!素晴らしい!これがタダなんて本当にいいのか!

そんな考えの元、海斗は机に向かっていた。今はノートと参考書を広げ勉強していた。

(あぁ!解ける解けるぞ!ここは公式通りにやって、 気持ちー)

少年はだんだん変になっていった。元々変なやつではあるが、暑さのせいでテンションがおかしくなっている。ここ数日、家から自転車で40分するここに通っていた。理由は二つ、一つ目は知り合いが誰もいないこと、二つ目は


「君、周りから引かれてますよ?」


「あ?勉強するのが楽しいんだから仕方ないだろ」


「変態ー。」


二つ目の理由は、こいつこの女に勉強を教えるためである。ニヤニヤしながらからかってくる少女は今日もバカだった。





それは数日前、ゴールデンウィークが始まった次の日、図書館で勉強に来た時だった。


(?泣いてるのか)


図書館閉館間際、泣いている声が聞こえた。夕焼けの日差しが部屋に差し込んで、少女の涙が輝きを放つ。どうやら、海斗同様、勉強に来ているようだった。少女の目線の先には、ノートと参考書があった。一心不乱に問題を解こうとする少女に自分を重ねてしまい、帰ろうと思っていた海斗は少女の隣に座った。驚いたような顔を見せたが、少女はそのまま、勉強を続けた。


「そこ、計算間違ってるぞ」


「!?」


急に話しかけたことに驚き、少女は海斗を睨みつけ、涙を手で拭った。その睨みは羞恥か、怒りか、そんなこと知りもせず海斗は少女のノートを勝手に奪い、ノートに解説と間違えた場所をバーッと書いた。


「な、なんのつもりですか?」


「あ?いやー、泣いてまで分からなかったのかと、このボロボロのノートその努力は正しいが時には人に頼ってもいいんじゃないか?」


少女の顔が真っ赤になる。目をグルングルンさせて最終的に目を伏せてしまった。


「だって、仕方ないじゃないですか。頼れる人なんて私にいない。お父さんは忙しいしお母さんは……他に頼れる人なんて!いないの!だから教科書と睨めっこしてわからなくて、それでも解説見ればって、他の人にもできてるから自分もって」


少女から溢れんばかりの感情の波が海斗へ押し寄せてきた。それは他人だったから言える自分の想いだったのだろう。泣きわめく少女に何を言っても無駄だと黙って少女の想いを聞いていた。



「私は誰を頼ったらいいと言うの!!」

少女、遠川沙耶はしまったと思った、見ず知らずの人に八つ当たりしてしまった。あちらに完全に非がないとは言えないが、そうだとしても

彼には理不尽だったかも知れない。


「だったら、俺がこの一週間、勉強見てやるよ」


「!!」

なぜ!と叫びたいほどの困惑、だって彼には理由がない!私の勉強を教える利点がない!


「理由が欲しそうな顔してるな…強いて言うなら…バカだから?」


「は?」


初対面の相手にバカだと?普通言うか?そんなこと。だんだん困惑が、怒りに変わっていく、

羞恥で赤らめていた顔はまた別の意味と代わり赤く染る。沙耶キレる。


「貴方!初対面の人にそんなこと普通言う!?

確かに私はあまり頭のいい方ではありませんし、それについて努力もしています!ですが、そんな酷いことよくもまぁ、言えましたね」


「あ、いや、すまん、だがもう少し聞いてくれ」


「何がすまんですか、じゃあ君は、知らない人にお前バカだなって割とガチで言われたら傷つくでしょ」


「あ、いや、おれ最近そう言った事言われないな、テストも高得点結構とってるし、順位も3位までには入るように努力している」


「そういったことを聞いてるのではありません!ありえないでしょって聞いているんです」


言葉と言葉の殴り合い、いや、海斗からすれば悪気ゼロの時点で殴りあってるつもりもないのだろうが、沙耶にとってそんなのらりくらりの行動にさらに怒りが増す。さらに声量を上げて、文句を言おうとしたその時だった。痺れを切らしたかのように片付けの段階に入っていた司書さんがこちらに向かってきた。もう少なくなったとは言え人はいる。そして沙耶の容姿は整っている。出るところはある程度出ていて、

しまっているところはキッチリとしまっている。顔もだいぶかわいい系だし、美人だし。完璧だ!髪も肩にかかる程度の長さ、中高生の男子なんてコロッと堕ちてしまう見た目だった。

それもありより目立っていた。



「図書館では お・し・ず・か・に!!!!」


『す、すいませんでしたー!』


そそくさと片付けをして出ていく二人に次やったらもう出禁だー!と叫ぶ声が今日の図書館で一番やかましかった。

そんな2人は図書館から出て、少しの段差の部分に腰をかけてため息をついて休んでいた。

17時台にもかかわらず、まだ太陽は照っているが、昼間のように暑い訳ではなく、比較的風も出て快適な気温だった。



「貴方のせいでおこられてしまったではないですか」


「いや、俺か?俺かー、それは謝る。だが、その、さっきの話に戻すが、勉強は一人で分からずモンモンとするよりも、教えてもらった方が直ぐに頭に入ると思うぞ」


それは先程言った、言葉の後付け、そんなことが彼の目の動きから分かった。だがその目が助けてやりたいという本気の思いなのだというのも分かった。


どうしてそんなことするのか。

どうしてそこまで食い下がるのか。

そんな疑問が断ろうと思っていた沙耶の思考を邪魔していた。そして少し考えた後、軽く深呼吸をして彼に目を向けた。


「名前、教えてください。私は遠川沙耶です」


「俺は藤浪海斗。」


「では、藤浪さん?よろしくお願いします」


「そんな顔されながら言われても」


沙耶はもうこれ以上話してたら堪忍袋の緒が切れて殴ってしまうかもしれないとピキピキいってそうな眉間とは矛盾した笑顔を見せて海斗に手を出した。それは親しみを込めた笑顔ではないと分かっていた海斗もこれ以上はやめておいた方がいいとその手を取り握手した。




こんなろくでもない出会いが彼、彼女の始まりだった。

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