あたしがバカじゃない証明はできなくても、あたし達が幽霊じゃない実証はできる
菓子ゆうか
第1話 あたしは、名案を思い付く
ようよう、あたしのテンションはマックスだぞ。大声で「神降臨!」と叫びたいところだけど。なに、あたしもバカじゃない。みんなから言われもなくバカの称号を総なめしてしまっているらしいが、自分で自分をバカと認めたら、本当にバカになってしまう。
昔のお偉いさんは、『無知の知』なんてあたしのために存在する名言を残してくれたけどさ、無知を自覚することが賢くなるために必要なのかな?
クラスで一番頭の良い子も、何かと謙虚だし。九十点以上のテストプリントを貰ったら、あたしなら箒の端に付けて、振り回すのに。
それは、あたしが次の期末テストで九十点を取った暁に披露しましょうかね。
日に日に這い寄ってくる期末テストのリミットに、あたしは心も体もグロッキーだった。だがしかし、勉強に勤しんだことで高揚感に舞い上がり、勉強の休憩がてら散歩に出向いたわけである。
今考えると、散歩に行くと決めた瞬間、テンションが上がった気がするが、まさかまさか、勉強からの逃亡でドーパミンが分泌されたなんて、ないよね。期末テストが終われば、待ちに待った夏休み到来! やっほい!
気のせいじゃなかった。勉強より休みだ。ストライキなんだ。
腕をブンブン振り、足を投げるように歩く。
家を出た時は午前三時ぐらいだったし、現在時刻はその十五分後かな。
夜風というか、深夜風を、あたしはシャツをパタパタして全身に浴びる。本当に全身全霊で受け止めるには、シャツもズボンも、あとあとブラもパンツも脱がないと実現しないが――何度も言うけど、あたしはバカではないのだ!
いくら深夜徘徊中でも、人が一人もいなくても、公衆の面前で裸一貫にはならない。
あたしは進める足を止めた。
上下左右をじーっと確認。うん、誰もいないや。公衆の面前じゃないなら、全裸になれるな。って、これじゃーあたしが露出魔に思われるよ⁉ 逮捕になっちゃったら、三日後の期末テストが受けられない!
……いや待てよ。
こめかみを指でコツコツしながら、考えてみる。
あたしはバカじゃないけど、テストの点数はすこぶる悪い。補習という言葉を誰よりも体験している自信があるぐらいに。先生方にため息をつかせるのは大の得意だ。
三日後に迫ったテストも、枚挙にいとまがないぐらい赤点のパレードだろう。その主役はもちろん、このあたしなんだけどな。
ならなら、それなら。テスト自体を受けなければ、赤点を貰うことがないんじゃないかな? うん、あたしって天才か!
中学では一切風邪を引くことなく、皆勤賞の優等生なあたしには、今まで思いも付かなかった。
善は急げ。違うな、悪は急げだ。
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