第2話 ミミをモフりたい


〈放課後〉


何故か、いつになっても実由が来ない。

もう召喚しちゃおうか、と言う話になりかけてきた、約束の時間の30分後。

ついに公園の入口に人影が見えた。


「あっ!来たよ!」


「琉月ーっ!初音ーっ!遅れてごめん!」


実由は手に直径十五センチぐらいの荷物を持っている。

琉月は、ピンときた。「あれはきっと誕生日プレゼントだ!」


精霊を召喚する前に、プレゼント披露会だ。実由の初音へのプレゼントは実由の魔法を使った水の水晶玉。実由の魔法は水氷魔法だ。


「これは、困ったとき触れたら一度だけ水氷魔法が使えるってやつ。作るのに時間かかっちゃって…」


水の水晶玉は水で出来ている丸い立体の玉で、宙に浮いている。

青い光を放っていてとても美しい。


「わあ、すごい!!ありがとう、実由!」



次は琉月からのプレゼントだ。

琉月からのプレゼントは…魔法陣だ。


「これはね、サラマンダーの召喚魔法陣。授業中にこっそり作ったんだ!これに魔力を流すと、召喚できるよ。魔力を流すときに名前を呼べば、特定の個体を召喚できるよ〜!」


「ありがと!早速魔力を流して…わ!出た!」


魔法陣からサラマンダーが出てきた。


「名前つけないと二度と召喚出来ないかもよ?」

「え、そうなの!?なら早く名前つけなきゃ…えっとじゃあ、フレイア!」

「わぁっ!私の名前はフレイア!」


サラマンダーのフレイアが、小さく炎を吐いて喜んだ。


「うわ、フレイアちゃん喋った!」


精霊が喋ることを知らない実由は驚いた。


「実由なんで驚いてるの?当たり前だよ」

「え?当たり前なの?」

「私は喋れるじゃん?で、実は私も精霊の一種らしいから…」

「そうなんだね!」


実由が納得した所で、フレイアの召喚を解除した初音が琉月に話しかけた。


「さ、琉月!ノーム召喚してよぉ!」

「あ、ごめん!んじゃいっくよー!!『召喚!出でよノーム!』」


琉月が呪文を唱え終わると、八十センチぐらいの小人が出てきた。


「わぁっ!ノームさん。お名前ありますか?」


「ない。」


少し無愛想なノームだ。だがそんなのはお構い無しに琉月は名前をつけ始めた。


「じゃあつけますね。あなたの名前は…日本人みたいにして…大森直一おおもりなおひと!」


「お、とても気に入ったぞ。」


直一には案外可愛いとこもあるようだ。


「じゃあ~、直一なので…なおくん♪って呼んでいいですか?」


「うぐ…その♪マークはなんだ?」


「え、歌が上手だから。(適当」




「あら、恥ずかしいわ…」


「え!性別変わった!?」

最後の言葉を発したのは初音。実由もポカーンとしている。琉月は気づいた。


「あ!ノームもう一柱召喚されてる!(精霊は神と同じく、1柱、2柱…と数える。)」


直一の後ろから1柱のノームが出てきた。


「え、私のことじゃなかったの?」


琉月はなおくん♪のことを言ってたんだよ~と説明する。


「そうだったの。ちゃんと聞いてなくてごめんなさいね。あと、私はそもそも名前が付いているの。猫飼菜々子ねこかいななこよ。ななちゃんってよんでね。」


「ななちゃん。苗字(なのか?)どおり、猫飼ってる?」


「よくわかったわね。ほら、この子よ。」


体長12、13㎝の子猫のような猫が。


「種類は?」


「小猫よ。子猫じゃないわよ?」


「小猫?ふーん。名前は?」


「ミミよ。この子はね、私たち精霊のように、誰からも 召喚呼ばさ れもしないし、能力もない。けど、可愛いの!!!!!!!!!!!!」


「ほんと猫ってかわいいですよね!」


「私は犬派…」


実由は猫派、琉月は犬派だ。

ミミは、白く小さく、かわいくて尊い。

初音はミミを凝視した。すると、ミミがふりむいて、白い中の唯二の黒い点(ミミの目)と初音の目が合った。


初音の適正魔法、魅了が使われた。

ミミは、何の能力もなく、弱い存在なので、初音が魅了できたのだ。

初音は「ミミをモフりたい」と思っていたので、ミミは初音の膝の上に乗り、ひっくり返った。

お腹丸出しだ。


「きゃわいいいいいいぃぃいぃいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」


初音が爆発した。ずうっとなでまわしている。

なでまわしながら、ななちゃんと猫かわいいよね~と言い合っている。

ななちゃんからもらった、小猫のおやつをのんびりあげる。


のぽ~っとみてたら時間に気付き少し琉月は焦った。

いつの間にか、もう召喚してから4時間たっているのだ。

あと一時間で、2柱と1匹も帰ってしまう。一週間ももう召喚できない。

ミミが可愛いのは分かったが、土の下位精霊の能力は見れていない。

せっかく召喚したから、魔法の芸を見せて欲しいな…と琉月が思っていたら、なおくん♪もそれに気づき、提案してくれた。その提案とは…?


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